姉夫婦に囲い込まれていた父親について、裁判所に粘り強く働きかけ、後見人を選任することができた事例

相談内容

相談者の母が死亡したため、遺産分割協議が必要であり、法定相続人は父親と子である依頼者と姉の合計3名でした。しかし、父親は認知症が進行していました。

 

父親は施設に入所しており、姉がキーパーソン(連絡窓口の役割や、父親にかかわる判断や決定を担う家族の代表者)になっていました。相談者は、姉により父親と面会することを妨害され、父親に面会することができませんでした。また、姉夫婦は、施設に入所中の父親の財産を管理していましたが、相談者が姉夫婦に父親の財産の管理状況について質問をしても、のらりくらり対応するのみで、明らかにしませんでした。そうした経緯から、相談者は、姉夫婦が父親の財産を使い込んでいるのではないかと不信感を抱き、なんとかできないかということで、弊事務所にご相談に来られました。

本件の争点】

本件では、相談者の母親の相続についての遺産分割協議も必要でしたが、父親の判断能力に問題がありましたので、遺産分割を進めるためには、父親について成年後見人を選任する必要がありました。

 

このように、本件では、姉夫婦による父親の財産管理の実態を把握するとともに、中立的な後見人による財産管理をすること、(姉夫婦による使い込み等があれば、財産の取り戻しや今後の使い込みを防止すること)また、母親の相続について遺産分割協議を進めることという目的を達成するために、父親について成年後見人開始の申立のご依頼をいただきました。

 

弁護士の活動内容

後見開始申立てのための資料収集

受任後、直ちに後見開始申立てのための資料を収集しました。後見開始申立てのためには、本人(成年被後見人になる予定の方)の戸籍謄本や住民票、専門医作成の診断書等、様々な資料が必要になります。また、申立書と合わせて、本人の財産目録や、申立に至った事情を説明する書面を作成する必要があります。このような資料の収集・作成は慣れていないと、どのように収集したらよいのか、何を書いたら良いのか分からず手間取ってしまいます。

 

また、後見開始申立てのためには、通常、後見申立用の医師の診断書を裁判所に提出することが必要です。しかし、本件では、姉夫婦が父親を囲い込んでいたため、医師に父親の診断書を作成してもらうことが困難であるという事情がありました。通常、施設は兄弟姉妹間で意見が対立している場合には、キーパーソン(家族の代表者)の意向に反する対応をしてくれませんので、囲い込まれてしまうと、事実上診断書の取得ができません。

 

そこで、本件では、医師の診断書に代わるものとして、父親の介護認定記録を取得して、父親の現在の状態を裁判所に伝えることとしました。介護認定記録には、既に父親が要介護5の状態であり、更にアルツハイマー病に罹患しており、日常生活においても問題があることなどが記載されていました。ただ、介護認定記録にこのような記載があっても、裁判所は、原則どおり「後見用の診断書を提出してください。」との回答でした。これに対して、弁護士が裁判所に対して、本件では姉夫婦による妨害が予想され、診断書を取得できないことから、父親の鑑定を進めて欲しいと伝えました。裁判所も、ようやく事情を理解してくれて鑑定を進めることに事実上の了解をしてくれましたが、鑑定してくれる医師の手配なども、申立代理人である弁護士で段取りするよう指示がありました。

 

成年後見制度における鑑定とは、ご本人(本件では父親)にどのような精神の障害があり、またその障害によって、判断能力がどの程度問題があるのかを判定するための手続きです。本件では,後見用の診断書を取得できないことから、医師による鑑定が必須でした。鑑定を進めるためには、専門家である医師の協力が必要なところ、前記のとおり鑑定実施が難航しそうな本件では、裁判所の指示により、申立人側で準備をしなければなりませんでした。そのため、病院に対して、弁護士が直接コンタクトをとり、費用の概算や鑑定を受けていただけるかなどについて、折衝をしました。

 

施設側が診断書の提供を拒否

しかし、鑑定を受けていただけることになった医師からは、施設に入っている父親を病院に連れて来てもらわないといけないという条件が提示されました。そこで、父親が入居している施設に連絡をしましたが、やはり「キーパーソンである姉の許可がないと、連れていくことはできません。」の一点張りであり、医師による鑑定をすることを事実上拒否されました。そこで、裁判所とも協議をし、弁護士が姉に連絡をとり、成年後見開始の申立てをしていること、本件では成年後見人を付すべきか判断するために鑑定が必要であることから、同意をしていただきたいというお話をしました。姉は、父親の判断能力が著しく低下していることは特に争わないものの、後見人にかかる費用がもったいないことを理由に鑑定を受けさせることを拒絶しました。

 

そこで、弁護士が裁判所に対して、子である依頼者及び姉並びに本人である父親について、家庭裁判所の調査官による親族調査を進めてもらうように申し出をしました。その際、文献を示したうえで、そのように親族調査を進めることが成年後見制度の趣旨(精神上の障害により、自身のことを決定することができない人の財産を保護する)にかなうものであることを裁判所に訴えました。

 

この働きかけが功を奏したのか、裁判所も姉に対し成年後見制度の趣旨を説明し、説得してくれました。その結果、姉は最終的に父親の鑑定について応じ、これによって、鑑定手続きを前に進めることができました。その後、鑑定を行う医師がスムーズに鑑定を実施できるように、弁護士において父親が入居している施設と連絡をとり、医学的な判断をする際に参考となる「本人情報シート」の作成を依頼しました。父親が入居している施設の担当者は、姉から話を聞いており、裁判所からも既に連絡がされていたので、本人情報シートの作成にはスムーズに応じていただけました。

 

結果

その後、正式に鑑定が実施され、裁判所より後見開始決定がされました。

 

弁護士の所感(コメント)

本件は、父親に成年後見人を付すか否かについて、施設のキーパーソン(家族の代表者)である兄弟姉妹と意見が対立した事案です。

 

後見開始のためには、医師の診断が必要となりますが、キーパーソンである兄弟姉妹が反対している場合には、施設や主治医の協力が得られず、事実上本人の精神状態を証明するための診断書や鑑定書の取得ができなくなってしまい、後見人を付すことの障害となります。最近、このような囲い込み事案の相談が増えていますが、最終的に後見人が選任されるまでの手間暇や、当事者の協力が得られずに、鑑定まで漕ぎつけられない場合もあることなどから、申立てを断念される相談者が相当数おられます。

 

このような場合には、裁判所とも連携して粘り強く話し合いを進めていくことになります。本件のような、いわゆる囲い込み事案では、親族が後見制度についての誤解をされている場合や、理解不足などから、後見開始や鑑定を拒否しているケースが多いです。そのため、家庭裁判所の調査官において、親族の意向等を確認する中で、中立の立場で後見制度の趣旨や手続きについての説明を行ってもらい、鑑定への協力を求めています。

 

【ポイント】

ここで、積極的に裁判所に活動をしてもらうために、高齢者本人が後見人をつける必要がある状況であることを裁判所に認識してもらう方法として、診断書に代わる資料(介護認定記録など)で明らかにする作業が必要です。更に後見開始の申立てを行った弁護士として、成年後見制度の趣旨から、一部の囲い込みをしている親族が拒否しているために成年後見制度が利用できないなどということは、成年後見制度の理念に反することを裁判所に伝え家庭裁判所が調査を行うように働きかけることも必要になります。このような行動が、家庭裁判所の積極的な活動を引き出すことができた事案でした。

 

本件でも、中立的な家庭裁判所から働きかけがあった結果、キーパーソンである姉に、鑑定への協力をしてもらうことができました。

 

なお、もし仮にキーパーソンからの鑑定実施への協力が得られず、事実上鑑定を実施することが不可能である場合には、家庭裁判所の調査官が本人(本件では父親のこと)調査のために父親のもとを訪れ、父親に対して、後見制度の利用についての意向や、鑑定を受けることについての意見聴取をするとともに、父親の生活状況について確認をするという手続きを進める予定でした。

 

このように、囲い込みをしている、キーパーソンである親族から後見制度の利用を拒否されている場合、通常の後見開始申立てとは異なり、スムーズにはいきません。しかしながら、キーパーソンである親族による財産管理に不審な点がある場合などに、諦めずに後見開始申立てをすることで後見人が付されることもあり、本件はそれが奏功した事案でした。

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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