長年実家の農業を一人で護ってきた相続人の寄与分立証と、預金使途の解明により、自宅・主要農地を守り解決した事例
相談内容
依頼者X様(二男)は、高齢の父親(被相続人)に代わり、地元の役場に勤務しながら30年以上にわたる長期間、実家の稲作・農業全般をほぼ単独で担い、農機具購入費等の経費(累計約1,800万円)も自費から出捐してきました。しかし、父の死後、他の相続人である兄弟姉妹(Y・Zら4名)から「過去の預金引出し約1,800万円に使途不明金がある」「公務員としての本業があり農作業は父がしていたため寄与分はない」「生前贈与された農地は特別受益だ」と主張され、紛争化しました。
X様は、先祖代々の居宅や主要農地を守りつつ、自身の適正な寄与分を認めさせたうえで円満解決したいと当事務所に相談・依頼されました。
弁護士の活動内容
受任後、当事務所は調停においてX様の寄与分(約60%)を主張すべく、30年間に及ぶ営農実態や農機具等の出捐(約1,800万円)を確定申告書や領収書等の客観的証拠に基づき詳細に整理・立証しました。また、使途不明と追及された預金引出しについても医療費や葬儀費用等の領収書を示して合理的な使途を説明しました。さらに、審判や不当利得返還請求訴訟へ移行した場合の双方のリスクを試算・提示し、粘り強く交渉を行いました。
結果
家庭裁判所における調停手続において、以下の調停条項で調停が成立し、全面的な解決に至りました。
①不動産・主要財産の取得: X様は、実家の居宅・納屋を含む主要な不動産(宅地・山林・原野等多数)、預貯金、土地売却代金(約3,200万円)および現金をすべて単独で取得することとなりました。
②一部不動産の分与: 他の相続人(Y・Zら4名)は、農地・畑のうち一部の小区画のみを取得することとしました。
③代償金の支払い: X様は、主要財産および自宅・農地を取得する代償として、他の相続人4名に対し、各自800万円(合計3,200万円)の代償金を支払いました。父が生前売却していた土地の売却代金の範囲で賄えました。
これにより、X様は先祖代々の自宅や主要な農地・山林を無事に守り抜き、兄弟間の長年の紛争に終止符を打つことができました。
弁護士の所感(コメント)
本件は、長年にわたり実家の農業を一人で守ってきた相続人(二男)と、実家を離れていた他の兄弟姉妹との間で、寄与分の有無や預貯金の使途不明金を巡り激しく対立した遺産分割事件でした。
家業を継いだ相続人が自費で農機具を購入し維持管理を行ってきた場合でも、法律上の「特別の寄与」として裁判所に認めさせるハードルは決して低くありません。特に公務員としての本業があった点や、被相続人の生前に引き出された預金について不当利得返還請求訴訟を提起される法的なリスクも存在していました。
そこで当事務所では、感情論に終始するのではなく、長年の出捐や農作業の実態を客観的証拠(領収書・農機具写真・確定申告書等)によって綿密に立証しました。そのうえで、調停が不成立となって審判や民事訴訟(不当利得返還請求)へ移行した場合の双方のリスクや費用・時間を試算・分析し、裁判所や相手方に対しても説得力のある調停案を提示しました。
結果として、依頼者X様が実家の居宅や主要な農地を全て守りつつ、兄弟間での将来の法的リスクを遮断する形での全面解決(調停成立)を実現できたことは、依頼者様の今後の生活にとっても極めて意義深い成果であったと考えます。
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