遺産分割協議書の作成方法
ご家族がお亡くなりになって、相続が発生すると、遺言がない場合は故人の遺産から誰がどの財産を取得するのかを相続人間で取り決める「遺産分割協議」を行う必要があります。
その「遺産分割協議」において取り決めした内容をまとめたものが遺産分割協議書です。
遺産分割協議書があれば、不動産の所有権移転登記や預金の名義変更などの相続手続を行うことができます。
逆に言うと、遺産分割協議書(またはこれに準ずる書面)がなければ、これらの相続手続が行えません。
しかし、実際に遺産分割協議書を作成するとなると、「遺産分割協議書の書き方がわからない!」という悩みをよくお伺いいたします。
そこで、この記事では、福岡を中心とする九州地区などにおいて相続業務に20年以上取り組んできた相続や遺産分割に詳しい弁護士が、遺産分割協議書の書き方を解説いたします。
遺産分割協議書のひな型もダウンロードできるようにご用意しておりますので、あわせてご覧いただければと思います。
(下記をクリックするとひな型がダウンロードできます)
遺産分割協議書に記載する項目
遺産分割協議書に記載すべき内容は大まかには下記の通りとなっております。
・被相続人は誰か、最後にどこに住んでいたか,いつなくなったのか,本籍は
・相続人は誰か、どこに住んでいるか、関係は何か
・相続人全員が遺産分割協議で合意した内容
・誰が何をどのくらい相続したか
・後から発見された遺産をどうするか
・協議による合意が成立した年月日
・相続人全員の署名(または記名)と実印による押印
遺産分割協議書の作成方法
作成の手順
遺産分割協議書の作成の手順は、下記のようになっております。
1.作成する様式を決めます。
遺産分割協議書は、遺言書と異なり、手書きでもパソコンでも作成が可能です。どちらの方法でも、ひな型を参考にしていただければ、作成する様式は問いません。
2.タイトルを「遺産分割協議書」とします。
3.亡くなられた方の本籍地と住所地を記載します。
この情報は、相続人調査の際に取り寄せている戸籍や住民票から把握できます。なお,被相続人が不動産を所有しており,不動産の登記簿謄本に記載されている住所と最後の住所が異なる場合には,登記簿上の住所も記載しておきましょう。
記載例
被相続人 山田 太郎 (令和元年5月1日死亡)
最後の住所 〇〇県〇〇市2-29-1
本籍 〇〇県〇〇市497
登記簿上の住所 〇〇県〇〇市3-24-14
4.亡くなられた方の氏名と死亡日を入れて、前書き(ひな型に書き方があります)を記載します。
記載例
被相続人 山田 太郎(令和元年5月1日死亡)の相続人である 山田 小次郎、 山田 花子は、被相続人の遺産について、次の通り分割を協議し、決定した。
5.誰がどのプラスの財産(預貯金や不動産など)を相続するのかを記載します。
「1.2.3.・・・」と項目付けして記載していきます。この項目付けには定型はありませんので、わかるようにしておけば問題ありません。また、記載する順番に決まりはありませんが、年齢順である場合が多いです。
6.次にマイナスの財産(借金やローンなどの債務)の相続方法を記載していきます。
こちらも項目付けをして記載していきます。
記載例
相続人 山田 花子は被相続人名義の次の負債を継承する
金銭消費賃貸借契約 金500,000円 債権者○○ファイナンス株式会社
7.遺産分割協議が終了した後に判明した財産(後日判明した財産)の取扱いについて記載します。
遺産分割協議書に署名と実印が押されれば、基本的に遺産分割協議は終了となりますが、その後に判明した財産について、どのように取り扱うかを取り決めし、記載する項目です。
遺産分割協議が終了した後に発見された遺産については,再度遺産分割協議を行うという内容の方が当事者間での了解を取りやすいのは間違いありません。
しかし,それでは後日遺産が見つかったときに再度遺産分割協議をするなど面倒ですし,一旦解決したはずの相続で紛争に発展しかねません。そこでしっかりと財産調査をして,相続人全員が納得をした上で,それでも万一漏れていた財産が存在した場合には,特定の相続人が取得する内容にしておくのが望ましいです(以下の記載例でいきますと,②のほうが望ましいということになります。)。
記載例
① 本協議書に記載なき遺産及び後日判明した遺産は、相続人全員が その財産について再度協議を行うこととする。
② 本協議書に記載なき遺産及び後日判明した遺産は、相続人 山田 花子が 全てこれを取得する
8.作成した年月日を記載します。
9.相続人全員の住所・氏名を記載し、署名と実印を押印して完成です。
遺産分割協議書の最後には、相続人全員の住所・氏名を記載し、自署の署名と実印を押印します。
※遺産分割協議書が複数枚になる場合、製本したものに相続人全員が実印を使って割印を押して完成となります。
気を付けるポイント
ここでは、遺産分割協議書を作成する上でのポイントをまとめました。
②相続人の中に未成年者や障がい者など、意思能力,権利能力がない人がいる場合
③不動産について記載する場合は登記簿謄本をそのまま写して記載しましょう
④預貯金、株式については口座番号まで特定できるように記載しましょう
①代償分割をする場合の記載方法
遺産分割協議の結果、不動産や非上場の株式など、分割が難しく評価額の一部を現金で代わりに支払う、代償分割を実施する場合は下記のような記載が適切となります。
記載例
1-1、相続人山田小次郎は,その取得した不動産の相続分の代償として,相続人山田花子に対して,金〇円を支払う。
②相続人の中に未成年者や障がい者など、意思能力,権利能力がない人がいる場合。
相続人の中で、その人単独では法的な能力がないとみなされる人がいる場合には、親権者や家庭裁判所が選任した後見人や特別代理人等が代わりに遺産分割協議に参加して、相続する内容を決定することになります。
その場合、遺産分割協議書の最後の署名押印欄が通常とは異なる内容で記載する必要があります。記載方法は、相続人の氏名の後ろに「法定代理人親権者 父(母)」,「法定代理人 後見人」,「特別代理人」等であることを明記し、特別代理人等が署名し実印で捺印を行います。
③不動産について記載する場合は登記簿謄本をそのまま写して記載しましょう。
遺産分割協議書の中で、不動産の分割事項を記載することがありますが、その不動産の内容は一言一句間違えないようにするためにも、登記簿謄本の内容をそのまま記載しましょう。
なぜなら、不動産の名義変更(相続登記)の際には遺産分割協議書が必要となり、不動産の登記簿謄本と遺産分割協議書に記載された不動産の記載が違っていると、最悪の場合,不動産の名義変更ができない可能性があります。
確実な記載をするためにも、登記簿謄本を取り寄せておきましょう。
具体的に記載すべき部分は、下記のとおりです。
土地 |
所在、地番、地目、地積 |
建物 |
所在、家屋番号、種類、構造、床面積 |
※1建物がマンションの場合
遺産のうち、マンションの1室のみがある場合の書き方も、通常の土地や建物と同様に、登記簿謄本に沿った記載となります。ただし、この場合は、建物全体の記載をした後に所有している専有部分と持分である敷地権の記載をしなければならないため、表記が長くなります。
記載方法の例を以下に記載しております。
記載例
1棟の建物の表示
所在 〇〇県〇〇市〇〇3-13-2
建物の名称 レジデンス音羽弐番館
構造 鉄筋コンクリート造り5階建て
床面積 1階 160.1m2
床面積 2階 160.1m2
床面積 3階 160.1m2
床面積 4階 141.4m2
専有部分の建物の表示
家屋番号 〇〇県〇〇市〇〇3-13-2-401
建物の名称 レジデンス音羽弐番館
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造り1階建て
床面積 5階部分 54.4m2
敷地権の表示
土地の符号 1
所在及び地番 〇〇県〇〇市〇〇3-13-2
地目 宅地
地積 320.51m2
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 1万分の321
※2不動産が共有持ち分の場合
被相続人が土地の権利のうち、3分の1のみを所有している場合(これを共有持分といいます)、遺産分割協議書にもその旨を記載する必要があります。
こちらの記載は上記のマンションほど、手間はかからず、不動産の情報の最後に「持分」の表記をするのみです。記載の例は下記のとおりです。
記載例
所在 〇〇県〇〇市〇〇3丁目
地番 2番11
地目 宅地
地積 55.51m2
持分 3分の1
④預貯金、株式については口座番号まで特定できるように記載しましょう。
預貯金や株式については、金融機関名はもちろん、支店名、普通・定期などの種別、口座番号を特定できるように記載しましょう(ひな型には銀行の普通預金の場合と定期預金の場合を記載しております)。
※退職金や生命保険金(死亡保険金)は、あらかじめ契約時に受取人が定められており、遺産分割協議の対象外となっているため、遺産分割協議書に記載する必要はありません。ただし,相続税の申告の関係では,「みなし相続財産」として課税対象になり得ますので,退職金や死亡保険金についても,誰が取得したのかを記載しておくこともあります(相続税の申告書に添付する際に便利です。)。
⑤必ず、自筆のサインと実印の押印をするようにしましょう。
遺産分割協議書には、後日のトラブルを避けるためにも相続人全員が自筆でサインをすることが望まれます。また押印は、必ず実印で押印しましょう。その際には印鑑証明書もセットで必要となります。提出先によっては、自筆の署名・実印の押印ではないと受理してくれない場合がありますので、必ず確認しましょう。
遺産分割や遺産分割協議書の作成でお困りの際は弁護士に相談しましょう
・遺産分割協議の際に、家族や親戚みんなが納得いくように遺産を分けたいが、関係性のよくない相続人(兄弟や親族)がいる
・遺産分割をしたいが、被相続人(亡くなった父や母)が認知していた婚外子がおり、相続の分け前を求めている
・遺産分割協議書の作成を自分で進める余裕がないので専門家にお願いしたい
・遠方に親戚がいる、自分の仕事が忙しいなど、遺産分割を自力で進めるのが難しく、遺産分割協議書の作成から印鑑の取付(調印手続)までお任せしたい
上記のようなことをお考えの方は、ぜひ一度福岡・九州の相続に強い弁護士に相談しましょう。
遺産分割協議書は相続人全員の合意がないと成立せず、遺産を分けることができません。
その場合、例えば預金の引き出しができなくなったり、不動産の名義変更ができなくなったりと、相続人の方々がお困りになることになります。
早期に遺産を全員が納得できるように分割するために、トラブルや意見の相違が発生する可能性があると考えられる場合は、一度弁護士にご相談ください。
相続人の方々が得られる適切な相続財産額や、方法をお伝えすることができます。
遺産分割協議書の作成は細かなことまで気を遣って作成することになります。
やっとの思いで遺産分割協議をまとめたものの、そのあとの遺産分割協議書の作成でさらに大変な思いをされる方を多く見かけております。
また、その遺産分割協議書の内容に不備が見つかり、再度遺産分割協議をすることになった事例や、場合によっては遺産分割協議書によって相続争いが発生してしまった事例もございます。
そこで、当事務所では、遺産分割協議の交渉サポートに限らず、遺産分割協議書案の作成、遺産分割協議書の作成代行をお受けしております。
福岡,九州で遺産分割や遺産分割協議書の作成などでお困りでしたら当事務所までお気軽にご相談ください。
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