遺産分割協議書を自分で作る場合、必要な項目や注意すべきポイントを解説

ご家族がお亡くなりになって、相続が発生すると、遺言がない場合は故人の遺産から誰がどの財産を取得するのかを相続人間で取り決める「遺産分割協議」を行う必要があります。

 

その「遺産分割協議」において取り決めした内容をまとめたものが遺産分割協議書です。

 

遺産分割協議書があれば、不動産の所有権移転登記や預金の名義変更などの相続手続を行うことができます。

 

逆に言うと、遺産分割協議書(またはこれに準ずる書面)がなければ、これらの相続手続が行えません。

 

しかし、実際に遺産分割協議書を作成するとなると、「遺産分割協議書の書き方がわからない!」という悩みをよくお伺いいたします。

 

そこで、この記事では、相続や遺産分割に詳しい弁護士が、遺産分割協議書の書き方、そして注意すべきポイントを解説いたします。

 

遺産分割協議書のひな型もダウンロードできるようにご用意しておりますので、あわせてご覧いただければと思います。

 

(下記をクリックするとひな型がダウンロードできます)

 

 

遺産分割協議書の作成でお困りの方へ

遺産分割協議書に記載する項目

遺産分割協議書に記載すべき内容は大まかには下記の通りとなっております。

・被相続人は誰か、最後にどこに住んでいたか,いつなくなったのか,本籍は

・相続人は誰か、どこに住んでいるか、関係は何か

・相続人全員が遺産分割協議で合意した内容

・誰が何をどのくらい相続したか

・後から発見された遺産をどうするか

・協議による合意が成立した年月日

・相続人全員の署名(または記名)と実印による押印

 

遺産分割協議書は自分でも作れる?

Q 私の父が、先日亡くなりました。母は、すでに3年前に亡くなっています。父の相続人には私と兄がいます。しかし、父は母と結婚する前に別の女性と結婚しており、その女性(前妻)との間にも子がいるということを聞いたことがあります。

  父の財産として、預貯金や株式、実家の不動産があります。

  最近は分かりやすい本もありますし、インターネットの情報もありますので、自分で遺産分割協議書を作成したいと思います。注意するべきこと等ありましたら教えてください。


A 制度上、ご自身で遺産分割協議書を作成することは可能です。しかしながら、書籍やインターネットに掲載された書式を使用した遺産分割協議書では対応できないケースもあります。また、各ご親族によって、細かな事情が異なる点もありますので、事案の複雑さ、ご自身が作成にかけることができる時間、親族間の関係性、弁護士等の専門家に依頼する場合に必要な費用などを考慮して、ご自身で手続きをなさるか、あるいは専門家に依頼されるかをご検討下さい。

遺産分割協議書の重要性

遺産分割協議とは、亡くなった方の財産を誰がどのように取得するのかを決める相続人の話し合いです。

 

そして、遺産分割協議の結果をまとめたものが遺産分割協議書です。

 

遺産分割協議書は、遺産に不動産がある場合には、不動産の名義変更をするために必要ですし、被相続人(亡くなった方)の預貯金について解約手続きを行う際などにも必要になります。

 

また、このような手続きに必要なだけではなく、相続人の間で成立した合意の内容を証明する客観的資料となり、争いの蒸し返しを防ぐという観点からも遺産分割協議書は重要な役割を果たします。

 

遺産分割協議書の作成手順

遺産分割協議書の作成の手順は、下記のようになっております。

 

1. 作成する様式を決めます。

遺産分割協議書は、遺言書と異なり、手書きでもパソコンでも作成が可能です。どちらの方法でも、ひな型を参考にしていただければ、作成する様式は問いません。

 

2. タイトルを「遺産分割協議書」とします。

 

3. 亡くなられた方の本籍地と住所地を記載します。

この情報は、相続人調査の際に取り寄せている戸籍や住民票から把握できます。なお,被相続人が不動産を所有しており,不動産の登記簿謄本に記載されている住所と最後の住所が異なる場合には,登記簿上の住所も記載しておきましょう。

記載例

被相続人 山田 太郎 (令和元年5月1日死亡)

     最後の住所 〇〇県〇〇市2-29-1 

     本籍 〇〇県〇〇市497

     登記簿上の住所 〇〇県〇〇市3-24-14

 

4. 亡くなられた方の氏名と死亡日を入れて、前書き(ひな型に書き方があります)を記載します。

記載例

被相続人 山田 太郎(令和元年5月1日死亡)の相続人である 山田 小次郎、 山田 花子は、被相続人の遺産について、次の通り分割を協議し、決定した。

 

5. 誰がどのプラスの財産(預貯金や不動産など)を相続するのかを記載します。

「1.2.3.・・・」と項目付けして記載していきます。この項目付けには定型はありませんので、わかるようにしておけば問題ありません。また、記載する順番に決まりはありませんが、年齢順である場合が多いです。

 

6. 次にマイナスの財産(借金やローンなどの債務)の相続方法を記載していきます。

記載例

相続人 山田 花子は被相続人名義の次の負債を継承する

金銭消費賃貸借契約  金500,000円 債権者○○ファイナンス株式会社

 

7. 遺産分割協議が終了した後に判明した財産(後日判明した財産)の取扱いについて記載します。

遺産分割協議書に署名と実印が押されれば、基本的に遺産分割協議は終了となりますが、その後に判明した財産について、どのように取り扱うかを取り決めし、記載する項目です。

 

遺産分割協議が終了した後に発見された遺産については,再度遺産分割協議を行うという内容の方が当事者間での了解を取りやすいのは間違いありません。

 

しかし,それでは後日遺産が見つかったときに再度遺産分割協議をするなど面倒ですし,一旦解決したはずの相続で紛争に発展しかねません。そこでしっかりと財産調査をして,相続人全員が納得をした上で,それでも万一漏れていた財産が存在した場合には,特定の相続人が取得する内容にしておくのが望ましいです(以下の記載例でいきますと,②のほうが望ましいということになります。)。

記載例

① 本協議書に記載なき遺産及び後日判明した遺産は、相続人全員が その財産について再度協議を行うこととする。

② 本協議書に記載なき遺産及び後日判明した遺産は、相続人 山田 花子が 全てこれを取得する

 

8. 作成した年月日を記載します。

 

9. 相続人全員の住所・氏名を記載し、署名と実印を押印して完成です。

遺産分割協議書の最後には、相続人全員の住所・氏名を記載し、自署の署名と実印を押印します。

※遺産分割協議書が複数枚になる場合、製本したものに相続人全員が実印を使って割印を押して完成となります。

遺産分割協議書の作成でお困りの方へ

遺産分割協議書は自分で作ってもいいの?また、その際の注意点について

遺産分割協議書は、「法律の専門家でなければ作成してはならない」等のルールがあるわけではありませんので、ご自身で作成することは可能です。しかし、前記のとおり遺産分割協議書は極めて重要な役割を果たす書類ですので、その作成には注意すべき点があります。

 

①相続人を確定する作業が必要

 

遺言書がない場合、不動産について相続を原因とする登記申請をしたり、株式の移管手続き、預貯金の解約等を行うためには、相続人全員が署名押印した遺産分割協議書が必要になります。そして、相続人全員が署名押印していることを明らかにするためにも、遺産分割協議の前提として、相続人が誰なのかを確定する必要があります。

 

そのために、被相続人(亡くなった方)の出生時から死亡までの戸籍を収集する必要があります。このとき、何度か結婚をされている場合や、本籍が何度も変更になっている場合には、ある市役所(区役所、町村役場)で戸籍謄本を取得し、その戸籍謄本の内容から判明した前の本籍地がある役所で除籍謄本等を取得し、更にその内容から判明したその前の本籍地がある役所で除籍謄本等を取得するという作業を繰り返していくことになり、収集に手間がかかることがあります。

 

また、古い戸籍は、手書きで書かれていることもあり、その文字も必ずしも丁寧に書かれているわけではないので、判読に苦労することもあります。また、相続人の確定には専門的な知識が必要となります。予期せず隠し子が見つかるケースなどもあります。

 

また、何代にもわたって相続登記がされていない場合、過去の相続に関しても、全ての相続人を確認する必要があり、かなりの困難を伴います。

 

②相続財産の調査が必要

 

遺産分割協議においては、被相続人の遺産をどのように分配するかについて、相続人の間で話し合いをしていくことになります。そのため、遺産分割協議書を作成する前提として、あるいは話し合いをするための前提として、被相続人にどのような相続財産が存在しているのかを調査する必要があります。また、そもそも相続をするのかあるいは放棄をするのか判断するためにも、被相続人の債務(借金等)の有無も調査する必要があります。

 

遺産分割協議において、被相続人の相続財産に抜け漏れがあった場合には、その財産については再度遺産分割協議をしなければならなくなったり、場合によっては遺産分割協議自体のやり直しが必要になったりすることもあります。

 

したがいまして、相続財産の調査は、綿密に行う必要があります。相続財産調査は、不動産や預貯金、株式などの有価証券、保険など、相続財産の種別によって調査する方法が異なります。広範な調査が必要となりますので、慣れていない方が行うと膨大な時間と労力がかかります。

 

③適切な内容になっていなければいけない

 

遺言書がない場合には、被相続人の遺産をどのように分配するかについて、遺産分割協議をすることとなります。この点、専門家の助言なしに遺産分割協議をした場合、思わぬ落とし穴があることがあります。

例えば、相続人が不動産を共有するような遺産分割協議をすると、世代が進むごとに不動産を共有する人物が増えて、時の経過とともに不動産の処分が困難となっていきます。

また、遺産分割協議書は、登記申請等の手続きにおいて必要になりますが、ご自身で作成した内容に不備があった場合には、登記ができないというケースもありえます。

 

④遺産分割協議が円滑に進まない

前記のとおり、遺言書がない場合、被相続人の遺産をどのように分配するかについて、遺産分割協議をしなければなりません。

 

遺産分割協議がまとまりにくいケースとして、相続財産の大部分が不動産であり預貯金が少ない場合、預貯金等を管理している人の不審な言動がある場合、感情的な対立が深い場合や特別な関係の相続人がいる場合等があります。

 

このような場合には、自分たちで進めていても中々上手くいかないことが多いですので、弁護士に依頼をして交渉を進めたり、家庭裁判所を利用して調停・審判という手続きを利用する方法が考えられます。

遺産分割協議に応じない相続人がいる場合はどうしたら良いの?

 

専門家に頼むことのメリット

確かに、近年では分かりやすい書籍やインターネットの普及により情報が取得しやすくなり、遺産分割協議書についてもご自身で作成しやすくなりました。

 

しかし、本やインターネットに書いている内容が、皆様の状況において、必ずしも適切なものでない場合もあります。初動を誤ったために、事案が複雑化してしまうこともあります。

 

また、ご自身で相続手続きを行うと、時間を取られたり、慣れないことからストレスを感じる可能性もあります。

 

弁護士等の専門家に依頼されますと、戸籍謄本等の必要書類の収集・調査、遺産分割協議書の作成や各種専門家の紹介などができますので、ストレスも少なく、かつスピーディーに進めることができます。

 

また、遺産分割協議をするうえでは、相続人間の信頼関係も非常に重要です。相続人間の仲が良く、揉める要素がない場合には問題ありませんが、相続人間で関係が疎遠であったり、感情的な対立がある場合には、専門家ではない相続人自身が作成した書面には押印したくないという方がいるかもしれません。

 

しかし弁護士が作成することで、相続人や相続財産について漏れなく作成でき、後日の紛争が生じず、手続きについても不備の無いように作成することができます。

 

事務所でお引き受けできる内容

当事務所では、遺産分割協議の話し合いについて、皆様の代理人として活動するだけではなく、相続人間で、遺産分割協議の内容がほぼまとまった後の手続きとしても、以下の内容についてサポートさせていただきます。

(1) 遺産分割協議書の作成

(2) 不動産の名義変更 ※別途司法書士の手数料が必要です。

(3) 預貯金の解約・名義変更(大手銀行、地銀、信金、ゆうちょ銀行、農協など)

(4) 保険金の請求

(5) 有価証券の売却処分・名義変更

(6) 換価回収した金銭の相続人への分配手続

(7) 戸籍謄本の取得及び法定相続情報の取得

(8) 年金手続について社労士を紹介 ※別途社労士の手数料が必要です。

(9) 相続税の申告について税理士を紹介 ※別途税理士の手数料が必要です。

(10)相続財産目録の作成

遺産相続の手続きでお困りの方へ

 

遺産分割協議書の作成を弁護士に依頼しましょう

相続においては、様々な手続きが必要であり、ご自身で進める場合、多くの時間を要し、困難を伴います。

 

当事務所は、弁護士歴25年以上の弁護士が在籍しており、相続に関して、様々な手続きをサポートしてきました。机上の法律知識だけでは得られない、多数の相談や解決実績に裏付けられた実践的なノウハウを蓄積しており、スピーディーかつ適切なサポートを行うことができます。

 

こういった経験から、遺産分割協議書の作成や、不動産の名義変更、遺言書の作成等、相続の手続き全般について、皆様に最適なサポートを提供いたしますので、お悩みの方は、是非一度、当事務所にご相談ください。

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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