遺産分割協議において問題になりやすい点について教えてください。
目次
Q.これから遺産分割協議をするのですが,協議がスムーズに進むように,事前に問題になりやすい点や見落としがちな点などを教えて下さい。
A.遺産分割協議において問題になりやすい点について,説明します。
1.遺産の範囲
基本的には,被相続人名義の財産が遺産となります。
しかし,形式的に名義を被相続人のものとしていたが,実際には別の方の財産であるから遺産ではないとか,逆に,形式的には名義は被相続人とは異なる名義になっているが,実質的には被相続人の遺産である,といった主張が出てくることがあります。
具体的には,被相続人がある特定の相続人名義で預金を積み立てていた,などという場合に上記のような主張が行われることがあります。
このような場合は,実際の事実関係を基に判断するほかありませんが,当事者として最も事情をよく知っておられたはずの被相続人が亡くなった後に問題が生じるため,残された相続人間で争いとなってしまうことがあります。
2.相続財産の評価
財産評価の基本的な考え方は,遺産分割時の時価を用いるということになります。
自動車,上場株式等,取引市場が形成されていて類似品の購入価格がある程度客観的に定まるものであればまだよいのですが,非上場株式など,取引市場が形成されていない財産(また現実に、非上場株式は売却してお金に換えるのも困難です。)については,その評価を巡って問題になることも少なくありません。
また,不動産の「時価」というのも難しい問題があります。
土地について,「一物四価」とか「一物五価」ということがいわれますが,取引価格である「実勢価格」(時価)に加え、「公示価格」,「相続税路線価」,「固定資産税評価額」に「基準地標準価格(基準地価)」の4つの「公的評価」があります。
「公示価格」と「基準地価」は時価に近いですが,全ての土地についての評価がされている訳ではありませんので,費用をかけずに円満に協議ができる場合には,「相続税路線価」や「固定資産税評価額」を基準にして協議を進めることも多いです。もっとも,「相続税路線価」は公示価格の概ね80%程度,「固定資産税評価額」は概ね70%を目安として評価されています。
したがって,遺産である土地の評価が高額な場合には,時価との乖離が大きいことになりますので,「相続税路線価」や「固定資産税評価額」を基準にして協議することに納得されない相続人がおられることもあります。
また,バブル期のように急激に不動産価格が上昇している時期や逆にバブル崩壊などにより地価が急激に低下している時期などは,時価と公的評価額との乖離が更に大きくなることもあり,公的な評価を基準に協議をするのが公平とはいえないこともあり得ます。
このように土地の評価については,難しい問題があり,相続人間で評価方法や評価額について納得できない場合には,裁判所の調停の利用や不動産鑑定士に鑑定評価を依頼するなどの方法を講じることになります。
3.債務の問題
債務の取扱いについては,多くの遺産を相続する者が債務も承継するという内容で遺産分割協議が成立することが多く,この約束は,相続人間では有効です。
しかし,債務を承継した相続人が約束どおりに債務を弁済しない場合に債権者から履行を請求されたときには,遺産分割協議において債務を承継しなかった相続人も,債権者との関係では法定相続分の割合で債務を弁済する義務がありますので,注意が必要です。
4.相続人に未成年がいる場合
相続人の中に未成年者がいる場合,遺産分割協議は,その法定代理人(多くの場合は親権者です。)が行いますが,その法定代理人も相続人となるときには,未成年の相続人との間で利益相反関係が生じますので,他に法定代理人がいなけれれば,家庭裁判所に特別代理人を選任してもらう必要があります。
具体例としては,夫が死亡して被相続人となり,妻とその子が相続人になるというケースが考えられます。
最後に,これは法的な問題ではありませんが,相続人間では感情的になってしまってなかなか話が前に進まない,話すら聞いてくれない,というケースもあります。
遺産分割協議をどのように進めていっていいか分からない,当事者(相続人)だけでは話が進まない,といった場合は,弁護士を代理人として他の相続人との協議を進めることもできます。
また,遺産分割協議といっても何を協議すれば良いのか,何が問題になるのか分からないなど,遺産分割協議についてお悩みの場合は,お早めに弁護士に相談されることをお勧めします。
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