あいさつ　生前対策・遺言書作成業務にかける思い

私はこれまで25年以上にわたって弁護士として，数多くのトラブルを解決してきました。トラブルを無事に解決した際に，不安から解放されて安心感に満ちた依頼者の様子を拝見し，また直接感謝の気持ちを伝えていただけることは，弁護士活動をしていくなかでの，何にも変えがたい喜びであり，日々の活動の原動力にもなっています。

その一方で，トラブルの中には，事前に対策を講じていれば，トラブルが発生しなかったのにとか，トラブルの芽が生じかけた時に，ちょっとしたことに気をつけていれば大きな問題になる前にトラブルの芽を摘むことができたのにと残念に思うことも多々あります。

トラブル対応に追われて，前向きな事業活動に取り組めず，業績が悪化していく会社，限られた人生の中の数年をトラブルの渦中で過ごし疲弊していく個人の方を見ていると，トラブルを事前に防げたら，この会社も前向きに事業に集中して，もっともっと発展できたのに，この人はもっと自分の人生を楽しめたはずなのに，という思いを抱かざるを得ません。

そのため，私は，この社会からトラブルをなくし，事業者，個人が前向きな活動，幸せな人生を送れる社会にしていきたいという思いを胸に，トラブルを防ぐための活動をしていこうと常に心がけてきました。その思いは，事業者の方に対しては，顧問先事業者等を対象に，契約書の作成・チェックや社内規定の整備，新規事業計画についてのリーガルチェックや，トラブルが生じかけた段階での早期のアドバイス等を通じて，トラブルを未然に防ぐお手伝いをしてきました。

一方，個人の方については，交通事故など突発的なトラブルもあり，また親族関係などは円満な時点では，他人が口を差し挟むべきことでもない事項なども多く，弁護士がトラブル予防として関与できる分野は限られているように思われます。そんな中で，事前の対策でトラブルの発生を防ぐことができるのが，「相続」なのです。

相続トラブルは，それまで仲が良かった家族の間に大きな溝を生じさせるだけではありません。ちょっとしたボタンの掛け違いが原因で，これまでの数十年にわたる家族関係の中で積み重なってきたちょっとした不満の数々が一気に噴出するため感情的争いも激化し，家族関係は断裂します。また法制度も複雑で家庭裁判所と地方裁判所を行き来するうちに，相続紛争が，5年，10年と長期化することもままあります。

トラブルを抱えた生活は，心身ともに疲弊します。貴重な人生の中で，5年，10年を相続トラブルへの対処に費やすことが幸せな人生なのでしょうか，本当は争いなどせず円満な人生を送りたいはずです。自分の死後，自分の子供達が，争いを繰り広げることを望む親がいるでしょうか，そのようなことを望む親はいないはずです。それにもかかわらず，この社会から相続紛争＝「争族」はなくなりません。何故でしょか。それは多くの方々が，相続に対し，何の備えもしていないからです。

相続トラブルは，財産を巡って争われるだけの問題ではありません。残された親族は，それぞれに亡くなった方の想いを酌んでいながら，酌み取った想い（についての解釈）が食い違うばかりにトラブルが生じるということもあります。

相続とは，自分が歩んできた生き様や，残される親族に対する自分の想いを明確にして，しっかりと引き継ぐことであり，その想いをしっかりと引き継げれば，相続トラブルなど生じることはないと考えています。

だからこそ，私は，残された家族が，いつまでも仲睦まじく幸せに暮らしていけるために，その想いを家族に引き継いでいくことをお手伝いしていきたいとの強い思いを抱いています。想いを伝える方法として，エンディングノートの作成をお手伝いしたり，財産の側面から想いを具体化するために，遺言書を作成したり，あるいは残された家族が経済的に困らない仕組として家族信託を組成することなど弁護士としての専門知識を駆使して，残された家族が個人の想いをしっかりと引き継ぎ，円満な家族関係を維持できるようサポートし，この社会から少しでも「争族」をなくしていきたいと考えています。