遺言書で兄弟間のトラブルを避けるため何を注意すべきか?
目次
Q.私には,妻と二人の子供がいます。子の一人Aは,私の近所に住んでおり,私達夫婦の面倒を見てくれていますが,もう一人のBは,東京に行ったきり,疎遠になっております。私としては,面倒を見てくれたAに多くの財産をあげたいのですが,兄弟の間に相続で争いが生じないようにするにはどうしたら良いでしょうか?気をつけることなどあれば,教えて下さい。
A.一番重要かつ効果的な方法としては,遺言を残すことです。その際には以下の点に気をつける必要があります。
兄弟の間で相続トラブルが生じることがあります。
兄弟姉妹間における遺産分割・相続トラブルのご相談は、比較的多い類型になります。
疎遠だった兄弟姉妹が、親が亡くなったことを聞きつけて、相続分を主張するケースや,兄弟姉妹があなたに対して生前贈与があったと言ってくるケースなど,兄弟間で相続争いになることは珍しくありません。
特に,異母・異父兄弟姉妹の場合には,お互い疎遠であることも多く,相続トラブルが発生する可能性がさらに高くなります。
兄弟間での相続トラブルを回避する方法
冒頭でも述べましたとおり,兄弟間での相続トラブルを回避する最も効果的な方法は遺言書を作成することです。
特に,不動産を引き継いで欲しい相続人がいる場合や,特定の相続人に対して多くの財産を相続させたい場合には,遺言を書いておく必要があります。
それでは,次に,遺言書を作成する際の注意点を述べます。
(1) 財産を漏れなく,正確に記載する
遺言書は,被相続人が,その有する財産をどのように配分するのかを示すものです。
したがって,遺言書には,被相続人の財産を漏れなく正確に書く必要があります。
財産が漏れていたらどうなるの?
例えば,被相続人の死亡後,遺言書に書かれていない財産が発見された場合,その財産をどのように分けるかに関して,相続人の間で,争いが生じる可能性があります。
せっかく相続人間で紛争が生じないように遺言書を作ったのに,それでは紛争防止という遺言の役割を果たしたとはいえません。
財産が正確に書かれていないとどうなるの?
例えば,遺言書に,「私の保有する預貯金全てをAに相続させる。」と書いているだけですと,相続人は,どこにどのような預貯金が存在するのかについて調査することから始めなければならず,時間と労力がかかります。
預貯金については,銀行名,支店名,普通預金・定期預金の別などを記載し,具体的に特定して記載しましょう。
また,不動産についても「私の自宅の不動産」などと記載しても,第三者である法務局にはどの不動産のことを指しているのか判断できず,登記手続ができないことも考えられます。これでは,死後スムーズに財産の引き継ぎができないことになってしまいます。したがって,不動産についても,遺言書には,しっかりと登記簿の記載にしたがって書くようにしましょう。
(2) 相続財産を共有にしない
兄弟などで不動産を共有にして相続すると、兄は土地を利用したいと考えている一方、弟は売却したいと考えているなど、兄弟の意見が分かれた場合にトラブルになる可能性があります。
したがいまして、「自宅は長男に相続させ、次男の家が建っている土地については次男に相続させる。」というように特定の財産については特定のものに承継させるようにしておくことも重要です。
(3) 遺留分に注意する
妻や子供などの相続人には、「遺留分」という相続に際して取得することが法律上保証されている権利があります。
遺留分は法律で定められている権利ですので、遺留分の侵害額について請求されてしまうと,一定の支払いは必要になります。このような場合,遺留分の額等をもとに兄弟間で争いが生じるおそれがありますので,遺言を作成する際には,相続人の遺留分を侵害しない内容にすることが,後の紛争防止に役立ちます。
(4) 予備的遺言を考える
予備的遺言とは,例えば,相続人または受遺者(相続人以外で遺産を受け取る人)が遺言者よりも先に(または同時に)死亡する事態を想定して、遺言書の中に、相続人・受遺者が遺言者より先に(または同時に)死亡した場合に、誰が遺産を受け取るのかを指定する方法を記載した遺言などのことをいいます。
我が国の平均寿命が伸びたことから、財産を託す親よりも相続人になる子どもが先に亡くなることもしばしば起こるようになりました。
例えば、父親と子ども2人(長男・長女)の3人家族で、父親は自分の面倒をとても良く見てくれた長男に財産を残したいと考え、「全ての財産を長男○○に相続させる。」といった遺言書を作成したとします。
その後、長男が父親より先に亡くなった場合、父親の全ての財産を相続することになっていた長男の相続人である長男の子(孫)が全ての財産を受け取るということにはなりません。相続人である長男が先に死亡している場合、「長男に相続させる」としていた遺言は実現できないため,その範囲で効力を有さず,その結果,父親の財産は法定相続人である長女が2分の1、長男の子である孫が2分の1相続することになります。
このような事態を避けるために、長男に万が一のことがあった場合には、長男の子(孫)に財産を残してあげたいと考えているのならば、「……全財産は、すべて長男○○に相続させる。ただし、長男○○が遺言者より先にまたは遺言者と同時に死亡した場合には、遺言者の孫△△に全財産を相続させる。」等のように定めます。このような遺言のことを「予備的遺言」と言います。
(5) 専門家を遺言執行者に選任する
相続人の一人が遺言執行者になると,遺言の内容に不満を抱えている相続人や執行が円滑に進まないことで不満を募らせる相続人からの非難を受けることもあり,せっかく遺言を作成しても,親族間での紛争に発展する可能性もあります。
このような場合に備えて,遺言執行者は専門家を選任することが効果的です。弁護士等の専門家が遺言執行者になれば,公平な立場,専門家としての立場から手続を進めますので,相続人間の不信感が生じることを防ぐことも可能です。
残された家族がもめないために遺言書を作成するのであれば,遺言執行者についても,専門家である弁護士を指定しておくのが望ましいといえるでしょう。
(6) 付言事項を残しておく
付言事項とは、「感謝の気持ち」や「遺言を書いた経緯」など相続人に残したい言葉などを伝えるものです。
付言事項は,このように相続人の想いを記載するものなので,法的な効力があるわけではないのですが,とても重要な役割を負っています。
付言事項を残すことで,相続人が,充分な財産を受け取れないと感じたとしても,遺言者の意思を感じ取り,相続争いをすることをやめることもあります。また,相続人が,既に充分な財産をもらっていることを自覚して,遺留分の請求を思いとどまることにもつながります。
まとめ
それでは今回の内容を復習してみましょう。
(1) 兄弟の相続争いを防ぐためには,遺言を作成することが最も重要かつ効果的です。
(2) 遺言書には財産を漏れなく,正確に記載する。
(3) 相続財産を共有にしない。
(4) 遺留分に注意する。
(5) 予備的遺言を考える。
(6) 専門家を遺言執行者に選任する。
(7) 付言事項を残しておく
以上のとおり,遺言において兄弟間での相続紛争を防ぐために気をつけるべきことは多岐にわたるため,法律の専門家である弁護士に遺言執行を依頼することだけでなく,遺言の作成段階においても,相続に熟知した弁護士が関与することが重要です。
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