法務局で相続の相談をする場合の注意点

Q 私の父が,先日亡くなりました。母は,すでに3年前に亡くなっております。父の相続人は私と兄だと思います。

 

 しかし,父は母と結婚する前にも別の女性と結婚しており,他にも子がいるということを聞いたことがあります。

  

 父の財産として,実家の不動産があります。

  

 最近はわかりやすい本もあるし,友人も自分で相続の登記をしたと聞いたので,自分で法務局に行って相続登記をしたいと思います。注意するべきこと等ありましたら教えてください。


A 制度上,ご自身で法務局に赴いて,相続の登記手続きを行うことは可能です。しかしながら,以下のとおり,負担に感じる点もありますので,事案の複雑さ,ご自身の可処分時間,費用などを考慮して,ご自身で手続きをなさるか,あるいは専門家に依頼されるかをご検討下さい。

 

法務局とは何をするところ?

 法務局は,法務省の地方組織の一つとして,国民の財産や身分関係を保護する登記,戸籍,国籍,供託の民事行政事務,国の利害に関係のある訴訟活動を行う訟務事務,国民の基本的人権を守る人権擁護事務を行っています。

 

不動産の登記申請

 

 相続に関しては,被相続人(亡くなられた方で,権利義務を譲り渡す方のことです。)が不動産を所有していた場合に,その名義を変更するためには,法務局において登記申請をする必要があります。

 

 法務局では,登記申請について,事前予約のうえ,相談をすることができます。また,最近では,電話による相談に対応している法務局もあるようです。

 

 もっとも,法務局では,相続登記の申請方法については教えてくれますが,どのように相続を進めていけばよいのか等の法律相談や,税金上どのようにしたら良いのかといった税務相談については教えてくれません。また,登記の申請書が適切に作成されているのかという点についても申請前には回答してくれません。

 

 自筆証書遺言の保管制度

 

 また,近年の法改正により,自筆証書遺言を法務局で保管してくれる制度が始まりました。

 

 

自分で相続登記をする際の注意点

 

 適切な遺産分割になっているのかわからない

 

 遺言書がない場合には,基本的には,相続登記を申請する前提として,遺産分割協議をすることとなります。この点,専門家の助言なしに遺産分割協議をした場合,思わぬ落とし穴があることがあります。

 

 例えば,相続人が不動産を共有するような遺産分割協議をすると,世代が進むごとに不動産を共有する人物が増えて,時の経過とともに不動産の処分が困難となっていきます。

 

相続人を確定する作業に手間がかかる

 

 遺言書がない場合,不動産について相続を原因とする登記申請を行うためには,遺産分割協議の前提として、相続人を確定する必要があります。

 

 そのためには、戸籍を収集する必要がありますが,結婚を繰り返している場合等,本籍が転々としている場合では,戸籍の収集に手間がかかります。

   

 また,古い戸籍は,手書きであることもあり読みにくく,相続人の確定には専門的な知識が必要となります。予期せず隠し子が見つかるケースなどもあります。

   

 また,何代にもわたって相続登記がされていない場合,過去の相続に関しても,全ての相続人を確認する必要があり,かなりの困難を伴います。

 

  遺産分割協議が円滑に進まない

   

遺産争いのイラスト

 

 前述のとおり,遺言書がない場合,基本的には相続登記のためには,遺産分割協議をしなければなりません(法定相続分に基いて登記申請する際は,遺産分割協議は必要ではないですが,根本的な解決になりません。)

   

 遺産分割協議がまとまりにくいケースとして,相続財産の大部分が不動産であり,預貯金が少ない場合,預貯金等を管理している人の不審な言動があった際,感情的な対立が深くなる場合等あります。

   

 このような場合には,自分たちで進めていても中々うまくいかないことが多いので,弁護士に依頼をして交渉を進めたり,家庭裁判所を利用して調停・審判による方法を選択することが考えられます。

 

 

 登記申請には専門的な知識が必要となる

 

 登記申請においては,法令に加えて,先例で様々なルールが定められており,専門的な知識を要します。

   

 また,実務においては,前の登記申請において住所が誤って登記されていたりする等イレギュラーなこともあります。ケースバイケースで必要な書面も変わってきますので,登記申請には専門的な知識が必要となります。

 

 平日に時間を確保する必要がある

 

 法務局に相続登記を申請するためには、数日間、平日に時間を確保しなければなりません。

   

 相続登記の申請のためには,種々の資料を収集しなければなりませんが,これらを発行する役所は平日の日中にしか営業をしておりません。

   

 また,法務局への相談,登記申請,申請した書類の補正など行うことから,数日間平日の時間を確保しなければなりません。補正の連絡については,法務局から平日に電話連絡が入りますので,電話に出られるようにしておく必要もあります。

 

専門家に頼むことのメリット

 

 確かに,近年ではわかりやすい書籍やインターネットの普及により情報が取得しやすくなり,不動産の相続の登記申請なども身近になりました。

  

士業バッジをつけた人のイラスト(男性・眼鏡ありなし)

 

 しかし,本やインターネットに書いている内容が,皆様の状況において,必ずしも適切なのでない場合もあります。初動を誤ったために,事案が複雑化してしまうこともあります。

  

 また,自身で相続手続きを行うと,時間を取られたり,慣れないことからストレスを感じる可能性もあります。

  

 弁護士等の専門家に依頼されますと,戸籍謄本等の必要書類の収集・調査,遺産分割協議書の作成や各種専門家の紹介などできますので,ストレスフリーかつスピーディーに進めることができます。

 

 弊事務所でお引き受けできる内容

 

 弊事務所では,以下の内容についてサポートさせていただきます。

 

  (1) 遺産分割協議書の作成

  (2) 不動産の名義変更 ※別途司法書士手数料等が必要です。

  (3) 預貯金の解約・名義変更(大手銀行,地銀,信金,ゆうちょ銀行,農協など)

  (4) 保険金の請求

  (5) 有価証券の売却処分・名義変更

  (6) 換価回収した金銭の相続人への分配手続

  (7) 戸籍謄本の取得及び法定相続情報の取得

  (8) 年金手続について社労士を紹介 ※別途社労士の手数料等が必要です。

  (9) 相続税の申告について税理士を紹介 ※別途税理士の手数料等が必要です。

  (10) 相続財産目録の作成

 

               料金表

 相続財産の価額

 弁護士費用(消費税別途)
 300万円以下の場合

 30万円

 300万円を超え3000万円以下の場合

 相続財産の価額の2%+24万円

 3000万円を超え3億円以下の場合

 相続財産の価額の1%+54万円

 3億円を超える場合

 相続財産額の0.5%+204万円

 ※ 経費実費(名義変更に要する費用,税理士費用,社労士費用等)は別途必要になります。

 ※不動産の名義変更や金融機関の名義変更等にかかる実費は別途必要になります。

 

 

 

まとめ

  

 相続においては,様々な手続きが必要であり,ご自身で進める場合,多くの時間を要し,困難を伴います。

  

 弊事務所の弁護士は、弁護士歴25年以上の経験の上,相続に関して,様々な手続きをサポートしてきました。机上の法律知識だけでは得られない,多数の相談や解決実績に裏付けられた実践的なノウハウを蓄積しており,スピーディーかつ適切なサポートを行うことができます。

  

 こういった経験から,不動産の名義変更や遺言書の作成等,相続の手続き全般について,皆様に最適なサポートを提供いたしますので,お悩みの方は,是非一度,弊事務所にご相談ください。

 

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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