相続不動産の査定とは?~評価額の算出方法について~
相続不動産の査定とは、相続財産を構成する不動産の評価額を算出することをいいます。
以下で、相続不動産の査定が必要となる場面と評価額の算出方法について解説します。
相続不動産の査定が必要となる場合
不動産は一般的に価値が高く、相続財産の全体の評価額のうちの大部分を不動産の評価額が占めることもあります。そのため,不動産の評価額が定まらないと遺産の総額を確定することができないばかりか,概算額の把握もできません。遺産の総額を確定することができなければ、遺産分割を行うことができません。また,遺産の概算額が分からないと,そもそもどの財産を取得するのかという遺産分割の方向性を決定することもできません。
問題となるのは、遺産分割において、換価分割(不動産を売却して売却代金を相続人で分ける方法)ではなく、現物分割(不動産を物理的に分割する方法)、代償分割(一部の相続人のみが不動産を取得し、その見返りとして、他の相続人に対して代償金を支払う分割方法)といった方法がとられる場合です。現物分割、代償分割については、相続開始時点での不動産の価格を評価し、その評価額を前提として行うことから、不動産の評価額が問題になります。
評価額の算出方法
遺産分割における不動産の評価については、理論上は、遺産分割時の時価(実勢価格)によることとされていますが、一般の人には、不動産の時価(実勢価格)を知ることが容易ではありません。
そこで、評価額を算出する方法としては、大きく分類すると、公的な指標を用いる方法、不動産会社に査定してもらう方法、不動産鑑定士に鑑定してもらう方法があります。
以下で、それぞれの方法について解説します。
(1) 公的な指標を用いる方法
土地の評価額については路線価や固定資産評価額,建物の評価額については固定資産評価額を基準にすることが考えられます。
もっとも、路線価や固定資産評価額は,実勢価格(時価)に比べると概ね低くなっています。そのため、これらを用いる場合には、路線価は時価の80%程度、固定資産評価額は時価の70%程度の金額になっているということを前提にして、路線価÷0.8、固定資産評価額÷0.7などと割り戻して、時価を算出することが多いです。
(2) 不動産会社の査定を用いる方法
不動産会社による査定は、路線価や公示価格などの地価をベースに、不動産の状況を加えて価額の算定を行います。
無料で査定をしてくれる不動産業者も多く、数日以内に結果がわかります。ただし、不動産会社による査定は、売りに出せばどのくらいの金額で売れるのかという意図のもとで行われますので、不動産会社によって査定額が大幅に変わることがあります。また、不動産会社によって得意分野や得意エリアが異なることから、不動産会社に査定を依頼する場合には、複数の不動産会社に査定を依頼する必要があります。
(3) 不動産鑑定士の鑑定を用いる方法
不動産鑑定士は、取引事例比較法、収益還元法、原価法などの方法を用いて不動産の価額を算出します。不動産鑑定の専門家である不動産鑑定士の鑑定の結果ですので,当事者間で不動産の評価額を巡ってとことん争いになった場合には,最終的に不動産鑑定士の鑑定額を採用して遺産の評価を決定することが多いです。もっとも,鑑定を依頼する不動産鑑定士の報酬として数十万円の費用が発生しますので,費用対効果を考慮して,鑑定を実施するか否かを検討する必要があります。
ア 取引事例比較法
対象の物件と同等の条件の物件を比べ、取引事例を考慮して評価する方法です。また取引の時期や市場全体の動向も比較検討を行います。
取引事例を考慮することから、近隣地域において、類似の取引事例が存在する場合に利用しやすい評価方法です。
イ 収益還元法
賃貸用不動産や事業用不動産を所有することにより将来得ると期待される収益をもとに、その賃貸用不動産や事業用不動産の試算価格を求める手法です。
収益物件の評価を行う場合は、収益還元法による評価が適しているといえるでしょう。
ウ 原価法
再調達原価から減価償却費を控除して不動産の価格を算出する評価方法です。
再調達原価とは、同じ不動産をもう一度購入・建築・造成等すると仮定した場合に、かかる費用の総額のことをいいます
原価法は費用に着目した方法であることから、建物の評価を行うのに適しているといえます。
留意点
遺産分割につき、相続人間において,相続不動産の評価方法や評価額に争いがある場合には、できるだけ正確に不動産の価値を把握する必要がある場合もあります。このような場合には、公的な指標を用いる方法や不動産会社の査定を用いる方法でなく、不動産鑑定士に鑑定評価を依頼する方法を検討する必要があるということになります。
しかしながら,不動産鑑定士による鑑定を実施する場合には,その報酬として数十万円以上の費用負担が発生しますので,多額の鑑定費用を負担してまで不動産の評価額を争うメリットがあるのか慎重に検討する必要があります。そのため,現実の遺産分割協議においては,公的な指標を用いたり,不動産会社の査定を基準にして,相続人間で一定の評価額で合意して進めることが多いです。
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