相続したら年末調整・確定申告は必要なの?
目次
Q 相続で財産を取得したら、年末調整や確定申告などの税金関係の処理は必要になるのでしょうか?
A 相続したことで、年末調整・確定申告が必要になるわけではありません。以下で、その理由について解説します。
年末調整・確定申告とは
年末調整とは
会社員などの給与所得者の場合、会社は、毎月の給与から所得税額を天引きして給与を支払います。天引きした分の所得税を国に納付する制度が源泉徴収制度です。
源泉徴収される税額は、概算なので、本来収める税額と必ずしも一致しません。そのため、1年間の給与が確定した年末に、所得税額を計算し直して精算を行います。これを年末調整といいます。
年末調整を行った結果、源泉徴収額が本来納めるべき税額よりも少なかった場合には差額が徴収され、多かった場合には還付されることになります。
確定申告とは
納税者本人が所得税額を計算し、申告・納付する手続きを確定申告といいます。確定申告の際に、本来の納税額よりも多く納付したことが判明した場合には、法定申告期間から5年以内に限り、還付を受ける請求を行うことができます。また、本来の納税額よりも少なく納付したことが判明した場合には、修正申告を行います。
年末調整と確定申告の違い
年末調整と確定申告は、いずれも所得税に関わる手続きです。両者の違いは、年末調整は「所得税の過不足を精算するために会社が行う手続き」であるのに対して、確定申告は「所得税の税額を確定させるために納税者本人が行う手続き」であることです。
相続税について
相続した時に発生する可能性のある税金としては、相続税があります。相続税は、相続財産の価格が、基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)以上の時に発生します。
相続税の納付は、申告書の提出期限内(相続の開始があったことを知った日(被相続人が死亡したことを知った日)の翌日から10か月以内)に金銭一括納付の方法で行うことが原則です。
相続税と所得税は、別の税金であることから、その納付の手続きは異なっています。親から相続した場合、引き継いだ財産について相続税が課税されることはありますが、それは相続人にとっての「所得」ではありませんので、年末調整・確定申告を行う必要はありません。
相続税の支払いが所得税に影響する場合
相続した不動産等を売却して、相続人への「所得」が発生すると譲渡所得として所得税が課税されます。
譲渡所得とは
所得税を計算するためには、その年の1月から12月までの所得金額の合計を知る必要があります。そして、所得は10種類に分類され、その中の1つに、譲渡所得があります。
譲渡所得とは、土地・建物・株式などを譲渡することで生じた所得をいいます。土地・建物の譲渡所得については、長期譲渡所得(所有期間が5年を超える物を譲渡した場合)と短期譲渡所得(所有期間が5年以下の物を譲渡した場合)があり、それぞれ税率が異なります。
土地・建物の譲渡所得の計算方法は、「譲渡所得=総収入額-(取得額+譲渡費用)-特別控除」となります。
そして、譲渡所得については、確定申告を行う必要があります。
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続または遺贈により取得した土地・建物・株式などの財産を、相続日から3年10か月以内(相続税の申告期限から3年以内)に譲渡した場合には、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができ、譲渡所得を減らすことができます。
準確定申告について
前記のとおり、相続しても、自分自身の年末調整・確定申告は必要ありませんが、被相続人の準確定申告が必要なことがあります。
準確定申告とは、確定申告をすべき者が死亡した場合に、その相続人が、相続の開始があったことを知った日(被相続人が死亡したことを知った日)の翌日から4か月以内に、死亡した人の所得についての確定申告を行うことをいいます。
まとめ
以上のとおり、相続したこと自体で、年末調整・確定申告が必要になるわけではありません。ただし、相続した後に、相続財産を誰かに譲渡した場合には、譲渡所得が発生し、確定申告が必要になることもあります。また、自分ではなく被相続人の確定申告として、準確定申告が必要になることもあります。
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