デジタル資産(遺産)の相続方法とは?相続問題に強い弁護士が解説!

1.デジタル資産(遺産)とは?

 スマートフォンやパソコンの普及により、インターネット上や電子機器内にある財産や情報(デジタル遺品)が増えています。

 デジタル遺品の中でも、特に金銭的価値のあるものを「デジタル資産(遺産)」といい、法律上も他の遺産と同様に相続できます。

 民間企業による調査では、過去5年以内に相続を経験した方のうち4人に3人がデジタル資産を相続しており、特に故人が40代以下の場合は100%がデジタル資産を相続しているという調査結果も公表されています。もはや誰にとっても無関係とはいえない問題です。

 

2.デジタル資産(遺産)の主な種類と具体例

 (1) デジタル資産(遺産)については、法律上の定義はありませんが、概ね次のような種類があります。

・ネット銀行・ネット証券の口座

 ネット銀行:楽天銀行、住信SBIネット銀行、PayPay銀行、auじぶん銀行など

 ネット証券:SBI証券、楽天証券、マネックス証券など

・暗号資産(仮想通貨)

 ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)など

・電子マネー・ポイント・マイレージ

 電子マネー:PayPay、楽天PaySuicananacoWAON、楽天Edyなど

 ポイント:Vポイント(Tポイント)、楽天ポイント、Pontaポイント、dポイントなど

 マイレージ:JALマイレージ、ANAマイレージなど

・デジタルの著作物、NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)

 (2) その他のデジタル遺品・契約等として、次のようなものがあります。

SNSやクラウドのデータ

 LINEFacebookX(旧Twitter)、InstagramGoogleアカウント(GmailGoogleフォト、Googleドライブ)など

・アフィリエイトブログ配信アカウント

 YouTubeチャンネル、noteなど

・各種サブスクリプション

 動画配信:U-NEXTAmazon Prime VideoNetflixなど

 音楽配信:SpotifyApple Musicなど

 

3.デジタル資産の相続手続きの流れ

 デジタル資産の相続も、基本的には他の遺産と同様です。

 (1) 遺言書の確認

   まず故人が遺言書を残していないか確認します。デジタル資産に関する記載があれば、その内容に従います。

 (2) 相続人と財産の確認

   戸籍で相続人を確定し、パソコンやスマホ、メール履歴などから利用中のサービスを調べます。この段階でデジタル資産を含め、全ての財産を把握することが重要です。

 (3) 遺産分割協議

   相続人全員で話し合い、誰がどの資産を引き継ぐかを決めます。合意内容は「遺産分割協議書」にまとめます。デジタル資産も評価額に応じて他の財産と合わせて分割対象となります。

 (4) 名義変更や解約

   ネット銀行などは、金融機関へ死亡の届出と必要書類を提出して手続きを行います。暗号資産や電子マネーも、運営会社の規約に従って相続人が申請します。

   各サービスによって手続き方法が異なるため、不明な場合は各サービスのサポート窓口や専門家に確認しましょう。

 (5) 相続税の申告

   相続財産が基礎控除額を超える場合は、相続開始(死亡)を知った日の翌日から10か月以内に税務署へ申告を行います。デジタル資産も他の財産と合算して課税対象となりますので、見逃しがないよう注意が必要です。

 

4.デジタル資産の相続で起こりやすいトラブルと注意点

デジタル資産の相続には、従来の財産にはない特殊な注意点があります。

・存在がわかりにくい

  通帳や書類など、契約書面が紙ではなくメール等で交付されているケースがあり、遺族が簡単に見つけられないことが多いです。もし相続税の申告対象などの場合であったにもかかわらず、申告漏れがあればその分加算税の対象となります。

・パスワードが分からないと開けない

  スマホやパソコンがパスワードでロックされていると、中身を確認できません。そのため、何のデジタル資産が残っているかの確認ができなくなってしまいます。

  IDやパスワードをスマホで管理している人も多く、スマホが開けないと結局デジタル資産(遺産)にアクセスできない事態になってしまいます。

・手続きが長引くことがある

  ネット銀行や電子マネーは店舗窓口がなく、郵送でのやり取りが中心で、相続完了までに36か月かかるケースが多いです。また、海外事業者が運営する暗号資産のウォレットサービスで保管されている暗号資産については、相続手続が確立されていないものもあります。

  遺産分割協議後に新たにデジタル遺産の存在が発覚すれば、遺産分割協議をやり直さないといけない場合もあり、このような場合には手間がかかります。

・相続できる資産か確認する必要がある

  利用規約に相続時の取り扱いについて明記していない場合には、各会社に問い合わせる必要があります。デジタルサービスの中には個人だけが利用できる契約とされ、相続不可のものもあります。

・デジタル負債の存在

  サブスクリプション(月額課金)などは、解約しないと引き落としが続きます。契約者が死亡しても事業者はその事実を知る手段がありませんので、放置すると銀行口座やクレジットカードから引き落としが延々と続いてしまいます。また、アフィリエイトサイトなどの場合は、広告掲載の契約をしていることもあり、債務不履行などを理由に損害賠償を求められるおそれもあります。

・アカウント乗っ取りのリスク

  放置されたアカウントは、第三者に乗っ取られるリスクもあります。特にSNSやメールアカウントは、個人情報の流出や詐欺に悪用される可能性があるため、早めの対応が必要です。

 

5.デジタル資産の相続を弁護士に依頼するメリット

デジタル資産の相続は、一般の方には調査や手続きが難しい場合があります。

  弁護士に依頼することで、次のような利点があります。

・財産の見落としを防ぐことができる

  弁護士は相続実務の専門家として、故人の財産を調査するノウハウを持っています。個人では見つけにくいネット銀行口座やオンライン契約、電子マネーなども、弁護士に依頼することで迅速かつより正確に把握できます。

  専門的な調査により、より見落としの少ない相続を実現します。

・複雑な手続きを代行できる

  暗号資産の移転手続きや、海外のサービスでの相続手続きなど、デジタル資産ごとに異なる複雑な手続きにも対応できます。弁護士であれば各サービスの規約や法律を踏まえたうえで適切な手続きを検討・代行してくれます。

・相続トラブルを未然に防ぐことができる

  デジタル資産はその存在が見えにくいぶん、後から「実は故人が仮想通貨を持っていた」などと判明して相続人間でもめる可能性があります。弁護士に相談すれば、適切な遺産分割の方法や手続きをアドバイスしてもらえます。

 

6.生前にできるデジタル資産の対策

  あらかじめデジタル資産について対策したいという方には、死後事務委任契約という方法があります。

  死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後の各種手続きを、生前に信頼できる第三者(弁護士など)に任せておく契約です。デジタル資産に関しても、以下のような対応を委任できます。

SNSアカウントの削除申請

・サブスクリプションサービスの解約

・クラウド上のデータの整理・引き渡し

事前の備えによって、大切なデジタル資産を確実に遺族へ引き継ぎ、不要な負担やトラブルを残さないことができます。

 なお、ネット銀行やネット証券の解約・名義変更手続きなどの遺産に関する事項については、遺言書を作成して、信頼できる第三者(弁護士など)を遺言執行者として指定しておくことで、対応することができます。

 いずれにしても、相続開始後に残された家族が調査等に時間を取られたり、財産の漏れが生じないように、デジタル遺産等を整理し、資産の内容やアクセス法条などの情報を一覧にしてまとめておくことが重要です。

 

7.まとめ デジタル資産の相続は弁護士への相談で安心を

  デジタル資産は、見えにくいけれど確実に存在する現代の遺産です

  「何を持っているのか」「どう引き継ぐのか」を整理しておくことで、家族に大きな安心を残せます。

  万が一、手続きや調査で困ったときは、弁護士に相談してください。

  法律と実務の両面からサポートを受けることで、デジタル資産の相続も安心して進めることができます。

 

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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