エンディングノートや遺書と遺言の違いは?

Q 最近,テレビなどでもエンディングノートの話を耳にしますが,エンディングノートは遺言と同じ効果があるのでしょうか?また,そもそも「エンディングノート」や「遺書」と「遺言」とは何が違うのでしょうか?

A.近年,相続に関心を持つ人が増え,終活ブームが到来しています。これに伴い,「エンディングノート」の作成が提唱されるようになりました。

 

エンディングノートとは,病気や加齢によって自分自身の意思がうまく伝えられない状態に陥った場合や,自分自身が死亡した場合に備えて,自らの考え方などを記録しておくものになります。

 

エンディングノートは,遺言と異なり,特に決まった形式・要式などはありません。おおむね,作成者の住所・氏名,作成者のこれまでの歩み(自分史),家族・友人関係,財産の詳細及び処分方法に関する希望,葬儀や埋葬に関する希望,病気の治療方針といった事項を盛り込むことが多いようです。

しかし,これらの項目を必ず盛り込む必要はありませんし,これらの項目以外のものも盛り込むことが可能です。現実に,公共団体,葬儀社,保険会社などがそれぞれに独自の項目を含んだエンディングノートの冊子を公表していますし,また市販されているエンディングノート・セットなどもあります。

 

また,遺書とは,死後のためにその思いを記しておく文書になります。エンディングノートと同様に,やはり,特に決まった形式・要式などはありません。

 

エンディングノートや遺書と遺言の違いとして一番に挙げられるものは,法的効力の有無です。

遺言については,「自筆証書遺言」(民法968条),「公正証書遺言」(民法969条)又は「秘密証書遺言」(民法970条)といった種類があり,それぞれ法律で定められた要件を備えることで,遺言としての法的効力が発生します。

しかし,エンディングノートや遺書については,上記のとおり,自分自身が死亡した場合に備えて自分の考え方などを記録したり,死後のためにその思いを記したりするものになりますので,遺言のような法的効力が発生することは原則としてありません。

 

もちろん,エンディングノートや遺書についても,例えば「自筆証書遺言」として,法律上,求められる要件を備えたものとなっていれば,それは「自筆証書遺言」として有効な遺言となり,法的効力が発生します。

しかし,エンディングノートや遺書として作成されたものが「自筆証書遺言」としての要件も満たすかどうかというのは微妙なケースも想定されますので,かえって争族トラブルを引き起こしかねません。

 

せっかく遺言書を作成し,争族トラブルを回避しようと思うのであれば,遺言書の作成は専門家に依頼し,エンディングノートとは別個に作成して,万全を期すようにしましょう。

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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