足腰が悪い場合や口・目・耳に不自由がある場合の公正証書遺言について

Q.「公正証書遺言」を作成したいのですが、足腰が悪く公証役場まで行くことが出来ません。このような場合でも「公正証書遺言」を作成できますか?また,口・目・耳など身体に障害がある者が「公正証書遺言」を作成するときはどうしたらいいのですか?

A.このような場合でも、「公正証書遺言」を作成することは可能です。

公正証書遺言の作成方法

「公正証書遺言」は,証人が2人以上立ち会った上で,遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し,公証人がこの口授を筆記し,これを遺言者及び証人に読み聞かせ,又は閲覧させ,遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認後,各自これに署名押印し,公証人がその証書は民法に定める方式に従って作ったものである旨を付記して,これに署名押印するという方法により作成します(民法969条)。

「公正証書遺言」は,このように,公証人が関与して作成されるものになりますので,原則として,公証人がいる公証役場に出向いて作成することになります。

公証役場に行けない場合

しかし,遺言者が病気等で公証役場に出向くことができない場合には,公証人が出張して遺言公正証書を作成してくれます。

この場合は,手数料が通常よりも割高となり(遺言加算を除いた目的価額による手数料額の1.5倍の基本手数料に,遺言加算手数料が加えられることになります。),また,旅費(実費)や日当(1日2万円,4時間まで1万円)が必要となります。

口・目・耳に不自由がある場合

次に,口・目・耳に不自由がある場合についてはどうでしょうか。

まず,目が不自由な場合,「公正証書遺言」の作成に際しては遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し,公証人がこの口授を筆記し,これを遺言者及び証人に読み聞かせるという方法により作成されますので,目が見えなくても,この点は特に問題ありません。

問題は,署名押印ですが,遺言者が,目が見えないために署名できない場合は,公証人が代署し,その横に遺言者が押印するという手法により作成されています。

また,口・耳が不自由な場合,遺言者は,公証人及び証人の前で,遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述するか,又は自書することにより,遺言書の口授に代えられます。また,耳が不自由な場合の読み聞かせは,筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えられることにより行われることとなります(民法969条の2)。

このように,足腰が悪くても,口・目・耳に不自由があっても,「公正証書遺言」を作成することは可能ですので,作成をお考えの方はご相談ください。

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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