遺産分割協議に応じない相続人がいる場合はどうしたら良いの?

Q.私には,両親がおりましたが,父は5年前に他界しており,母は今年亡くなりました。両親の子供は私と弟がおりましたが,弟は母より先に亡くなっております。弟には,息子(私にとっては甥)がいますので,母の相続人は私と甥となります。私は母の面倒を長年見てきたのですが,弟は遠方に引っ越したことで母とは疎遠となっており,甥と母はほとんど交流がありませんでした。

 そういった事情もあったので,私は,甥に対して,私が母の実家の土地建物,預貯金を相続するのに必要な書面にサインするようお願いする内容の連絡をしました。ところが,甥は,「自分にも2分の1もらう権利があるはずだ。こんな内容では納得できない。」などと言って応じません。私はどうしたらよいのでしょうか?


A.質問者様が,お母様の財産を取得するためには,甥と遺産分割協議をする必要があります。当事者同士での話合いによる遺産分割協議が困難な場合には,遺産分割の調停,審判という方法があります。

 

遺産分割協議とは?

 遺産分割協議とは,被相続人(亡くなられた方で,権利義務を譲り渡す方のことです。)が遺言を残さないまま亡くなった場合、その遺産を分けるために、相続人(権利義務を引き継ぐ方です。)の間で「誰がどの財産を引き継ぐのか」を決めるための話し合いのことをいいます。

 
 遺産分割協議を行うことで,不動産の名義変更手続きや,預貯金の解約手続き等を行うことができるようになります。
  
 被相続人(亡くなった方)が遺言書を遺さなかった場合には,相続人全員での遺産分割協議が必要となります。
  
 遺産分割協議がまとまったら、その内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成します。遺産分割協議書は、相続人全員が署名・押印する必要があります。

遺産分割協議がまとまらない場合とは?

 遺産分割協議がまとまらないケースとしては例えば下記のようなケースが考えられます。

 

相続財産の大部分が不動産であり,預貯金が少ない

 例えば実家の不動産に相続人の1人が住んでおり,その者が当該不動産を取得するようなケースですと,他の相続人は不動産をもらえない代わりに金銭の請求をすることが多いです。その場合,相続財産として豊富な預貯金があればそれを相続することで遺産分割協議がまとまることもありますし,不動産を相続する相続人が代償金を自腹で手当てして支払いができれば遺産分割協議が成立することもあります。しかしながら,不動産の価額に釣り合う預貯金がなく,なおかつ不動産を取得する相続人が代償金を準備できない場合には,不動産を取得できない相続人が不満を持ち,結果として遺産分割協議がまとまらないこともあります。

預貯金等を管理している人の不審な言動がある場合

 例えば,相続人の1人が被相続人と同居し,通帳を管理していたところ,不自然に高額な出金が何度も行われている場合などは,他の相続人が不審を抱く場合があります。

 

 遺産分割協議のために預金通帳その他の資料の提示を求めたのに対し,通帳を管理していた相続人が迅速かつ誠実に対応すれば問題ありません。もっとも,「いま整理しているのでもう少し待っていてくれ。」などとのらりくらりとしたり,「私は,そんなことは知らん!」と取り付く島もない態度を取る場合は相続人間に不信感が募り,遺産分割協議がまとまらないことがあります。

感情的な対立が深い場合や特別な関係の相続人がいる場合

 兄弟間の仲がすごく悪い場合のように相続人間の感情的な対立が深い場合や,後妻と前妻の子供が相続人である場合などのような特別な関係の相続人がいる場合も,遺産分割協議がまとまりにくいケースといえます。

 

遺産分割協議がまとまらないときはどうしたらいいの?

 相続人同士ではお話し合いができない場合には,

弁護士に相談する

家庭裁判所を利用する

 という方法が考えられます。

弁護士に相談・依頼する

 相談イメージ弁護士は、法律の専門家であり、専門知識をもって解決策を提案してくれます。この点,弁護士の中でも,相続に関する案件の経験があまりない弁護士も存在しますので,ご相談される場合は,相続案件の経験が豊富な弁護士を選ぶことが重要です。

 

 弁護士に依頼をしますと,相続人,相続財産,その他の事情を調査したうえで,法的に根拠のある主張ができますので,相続人間にも納得感が生まれ,遺産分割協議成立の可能性が高まります。

 

 また,顔を合わせたり,やり取りをしたくない相続人との交渉を弁護士に依頼することで,精神的な負担も減少します。

 

 なお,弁護士に依頼した場合にも,相続人間で話合いができない場合には,次に述べます遺産分割調停・審判の手続きに進みます。

 

 もっとも,遺産分割調停に移行しますと相続の問題解決までの時間が長くなることが多いです。したがいまして,できるだけ交渉で遺産分割を終わらせる方が負担は少なくなります。

 

遺産分割調停と審判を利用する

どうしても遺産分割協議がまとまらない
・話合いが堂々めぐりで一向に進まない
・相続人の一部が、そもそも話し合いに応じてくれない

 

 このような場合は、解決のために,遺産分割調停を家庭裁判所に申立てる方法が考えられます。

遺産分割調停について

 遺産分割調停とは,家庭裁判所の裁判官と調停委員(社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人や, 地域社会に密着して幅広く活動してきた人が裁判所の非常勤職員として選ばれます。)が相続人の間に入り,相続人それぞれの遺産分割に関する主張や希望を聴いたうえで,相続人全員による合意を試みる手続です。

 

 話し合いでの解決を目指す手続であることから,柔軟な合意の調整が可能です。また,法律の専門家である裁判官の意見を聴くこともできることから,相続人同士のみの遺産分割協議よりも,解決できる可能性が高くなる傾向にあります。

 

遺産分割調停の段階から弁護士に依頼するメリット

 調停では,法的知識を有していないと,調停委員や相手方の言っている内容が十分理解できなかったりするかもしれません。また,ご自身の言い分を裁判官・調停委員に理解してもらうための説明をしたり,資料を作成したり等大変な作業があります。したがいまして,調停の段階で弁護士に依頼するメリットは大きいでしょう。

 

 調停を有利に進めるには、調停委員を納得させるため、証拠を精査して準備し、主張を組み立てることが重要となります。その際には審判に移行した場合をも想定する必要があります。

 

 このような主張の組み立てについては、専門的な知識・経験が必要ですので、弁護士に依頼されることをお勧めいたします。

 

遺産分割の調停が不調に終わった場合

 遺産分割調停において,裁判所による相続人間の合意の調整に応じない相続人がいる場合や,そもそも相手方が調停の手続に応じない場合には,遺産分割調停は不成立となり,審判手続に移行します。
  

 審判手続は,調停手続と異なり相続人同士の話し合いの場ではなく,それぞれの相続人から提出された主張と証拠を基に裁判官が遺産分割の方法を判断します。
   

 家庭裁判所の決定(審判)には強制力があるため,結論に納得できない相続人も,原則として家庭裁判所の決定(審判)には従う必要があります。もっとも,審判の決定に不服がある相続人は,2週間以内に即時抗告することにより,高等裁判所で再度審理してもらうことは可能です。

 

遺産分割審判に移行する場合には、必ず弁護士に相談しましょう

 遺産分割審判では、法律に基づく主張とそれを裏付ける証拠の提出が,調停以上に重要となります。そのため、ご本人1人で審判に対応するのではなく、法律の専門家に依頼したほうが良いことが多いといえます。

 

 特に、審判まで進展した場合に、自分の希望を実現するための法的根拠をしっかりと理解して,主張を組み立てていくには、弁護士としっかりとやりとりすることが重要となります。

 

まとめ

 それでは今回の内容を確認しましょう。

(1) 亡くなられた方の財産を取得して名義変更等の手続きをするためには,遺産分割協議をしなければなりません。

 

(2) 遺産分割協議は様々な事情から,相続人間での話合いが困難な場合があります。

 

(3) 相続人間での遺産分割協議がまとまらない場合は,家庭裁判所の遺産分割調停・審判による方法があります。

 

(4) 家庭裁判所の審判には強制力があるため,最終的に遺産分割の争いを終了させることはできます。

 

 相続人間の争いは長年の感情的対立などもあって深刻になりやすく、争いも長期化しやすいです。したがいまして,迅速かつ円満な解決のために,早期に,相続について熟知した弁護士が関与して,手続きを進めていくことが重要です。

 

 当事務所の弁護士は、弁護士歴20年以上の経験の中、多くの専門性を要する相続・遺産分割の相談を受けてきました。机上の法律知識だけでは得られない,多数の相談や解決実績に裏付けられた実践的なノウハウを蓄積しております。

 

 こういった経験から,遺産分割はもちろん,相続全般について,皆様に最適なサポートを提供いたしますので,お悩みの方は,是非一度,当事務所にご相談ください。

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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