遺言の文字が読めないときはどうすればいいの?
Q.父親が亡くなり,「自筆証書遺言」を残していましたが,癖字がひどくて何が書いてあるのか判然としない部分があります。また,保管状態が悪かったのか,文字が薄れて読めない部分もあります。このような遺言書は有効でしょうか?
A.「自筆証書遺言」は,誰でも気楽に,簡単に作成でき,また自分だけで作成すれば費用もほとんどかからずに作成できます。
気楽に作成できるため,癖字のままで書かれたり,あるいは体力が落ちて震える手で書かれるために判読がしにくいということもあります。
日常の文書などで,文字が判読できない場合,文字を書いた人に聞き,説明してもらえればよいのですが,相続が開始するのは被相続人が亡くなった後であり,遺言書の文字の判読が問題になるのも被相続人が亡くなった後です。とすると,既に「死人に口なし」ということになり,真意を語ってくれる人はいないことになります。
このような場合,癖字などについては筆跡鑑定を実施し,摩耗している部分については科学的鑑定を実施するなどの方法で判読するということになってしまいます。
このような筆跡鑑定や科学的鑑定を実施しても判読できなかった場合には,その部分については遺言者の意思を明らかにできませんので,判読不能な部分については無効ということになってしまいます。
せっかく作成した遺言書の一部または全部が無効になってしまったり,あるいは,判読が難しい遺言書の文字の意味を巡って相続人間で争いが起こるなどという事態が生じる可能性があります。
残された家族が,争うことなく円満な相続ができるように遺言を作成したのに,その遺言を巡って争いが生じたのでは,本末転倒ではないでしょうか。
せっかく,きちんと遺言書を残して死後の「争族」を回避しようとされているのであれば,専門家に遺言書の内容について相談された上で,「公正証書遺言」を作成され,万全を期されることをお勧め致します。
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