令和2年4月1日から施行される配偶者居住権について
Q 令和2年4月1日から施行される配偶者居住権について,遺言書の書き方を教えてください。
A 配偶者居住権の一般的な内容については,次のページをご覧ください。
配偶者居住権は,①相続人による遺産分割協議,②被相続人の遺言,③家庭裁判所の審判によって設定されることになります(このほか,死因贈与契約には民法554条の規定により遺贈の規定が準用されるため,④死因贈与契約によっても設定することができると解釈されています。)。
では,②の遺言について,どのような書き方をすればいいのでしょうか。
配偶者居住権を盛り込んだ遺言書の書き方
遺言書において相続財産を相続人に相続させようと考える際には,その相続人に相続財産を「相続させる」と記載することになります。
しかし,この「相続させる」という文言は,遺言者による遺産分割方法の指定と考えられています。
したがって,配偶者居住権を「相続させる」と遺言書に記載した場合,仮に,相続開始時点において配偶者が居住権ではなく現金・預金を多く相続したいと考えたとしても,配偶者居住権のみを相続放棄することができず,その他の相続財産を含めて全体を相続放棄する必要が出てきます。
配偶者居住権の制度は,残された配偶者の保護を目的とする制度ではありますが,これでは,かえって配偶者の権利を害する結果となりかねません。
そこで,令和2年4月1日から施行される民法1028条1項2号は,「配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき」と規定されることになりました。すなわち,配偶者居住権を設定するための遺言の文言としては,遺言者(遺言を書く人)は,配偶者に対象建物の配偶者居住権を「遺贈する」と書くことになります。
なお,改正後の民法1028条1項2号は令和2年4月1日から施行されるため,配偶者居住権を設定する遺言書は,同日以降に作成する必要があります。
上記の文言を遺言に盛り込んでおけば配偶者居住権の設定は可能ですが,このほかに配偶者に配偶者居住権を設定するための遺言について留意すべき点は,次のとおりです。
⑴ 存続期間
存続期間の定めがなくても配偶者居住権を設定する遺言自体は有効ですが,他の相続財産とのバランスを考え,配偶者居住権の権利としての価値の評価を抑えたいという事情があれば,存続期間を定めて価値を下げることが考えられます。
⑵ 対象建物やその敷地を相続により取得する相続人
遺言において配偶者居住権の対象建物やその敷地を相続により取得する相続人を明確にしていなくても,配偶者居住権を設定する遺言が無効になることはありません。この場合,対象建物やその敷地の所有権を誰が取得するかは,相続人間の遺産分割協議により決定されることになるでしょう。
しかし,配偶者は,配偶者居住権が設定された後,対象建物に一定期間居住することとなります。
したがって,配偶者と,対象建物やその敷地を取得する相続人との関係は良好であった方が望ましいことは,言うまでもありません。
したがって,遺言において配偶者居住権を設定する場合には,対象建物やその敷地を誰に相続させるのかについて,配偶者との関係性も考慮して明確にしておいた方が望ましいと言えるでしょう。
【具体的な遺言文例】
第○条 遺言者は,遺言者の所有する別紙遺産目録記載の建物の配偶者居住権を配偶者●●(●年●月●日生)に遺贈する。
第△条 遺言者は,遺言者の所有する別紙遺産目録記載の建物を遺言者の長男●●(●年●月●日生)に相続させる
別紙「遺産目録」への記載方法
所 在 福岡県●●市●丁目●番●
家屋番号 ●番●
種 類 居宅
構 造 木造スレート葺2階建
床 面 積 1階 ●.●㎡
2階 ●.●㎡
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