遺言書の作成をおすすめするのはどんな方?

Q 遺言書を作成した方がいいことはわかりましたが,特に遺言書を書いた方がいいのはどんな人ですか?

A.遺言書は,書くことで,相続に関する親族(相続人)間の紛争リスク(争族のリスク)をグッと抑えることができるため,全ての方が遺言書を書かれることをお勧めしますが,特に遺言書を書いた方が良い方をある程度類型化すると次のようになります。

【類型①】相続人間の関係に問題を抱える類型

〇 相続人間で仲が悪い,あるいは相続人間で親族同士の交流があまりない。

〇 相続人の中に,「海外」や「遠い場所」に住んでいる人がいる,あるいは行方不明の人がいる。

〇 結婚しているが子供がおらず,両親も亡くなっている。

〇 再婚しており,先妻[先夫]との間に子どもがいる。

【類型②】 遺産について問題を抱える類型

〇 財産は自宅と預貯金がわずかにある程度である。

〇 先祖名義のままの不動産を所有している。

〇 兄弟で共有している不動産がある。

〇 会社を創業し,事業を営んできたが,非上場の自社株の価値がわからない。

【類型③】相続人間に不平等が発生する類型

〇 これまで特定の相続人に,結婚資金や住宅取得資金など多額の贈与や援助をしてきた

〇 親と同居している(介護看護をしてきた)子供と,別居している子供がいる。

 

例えば,類型①にあるように,離婚・再婚の経験があり,前の配偶者との間に子どもがいる場合は,相続関係が複雑となります。現在の配偶者との間の子どもはもちろん,前の配偶者との間の子どもも相続人となるからです。複雑な相続関係によるトラブルを回避するため,遺言書作成が有効となります。

  また,相続人の数が多いという人も,遺言書を書いておいた方がいいです。相続が起こると,相続人全員の協議によって遺産分割方針を決定しますが,当然,相続人の人数が増えれば増えるほど,遺産分割協議がまとまらない可能性が高くなります。相続人間の仲が悪い,という場合にも,遺産分割協議がまとまらない可能性が高いです。しかし,遺言書を書いておけば,この遺産分割協議が不要となり,争族を回避することができます。

  更に,会社の経営者や個人事業主である,という人も,遺言書を書いておいた方がいいです。この場合,事業承継の問題が生じます。円滑な事業承継を行うために,遺言書を書いておく必要があります。

 

 

法定相続では実現できない内容の財産承継をしたい

相続人が複数名存在するが,特定の相続人に,特定又は全ての財産を相続させたい,という人は,遺言書を書いておかなければいけないでしょう。

特定の相続人に,特定又は全ての遺産を相続させる,という内容の遺言書を書くことで,ある特定の相続人のみに特定の財産を相続させることが可能となります。

ただし,この場合の遺言書は,遺留分に十分な配慮が必要になります。遺留分への配慮が不足していた場合,遺言書を書いたがために,かえって争族(相続人からの遺留分侵害額請求)を引き起こしてしまったというケースもあります。

 

相続人ではない孫や親族に,特定又は全ての財産を分けたい場合にも,特定又は全ての遺産を遺贈する,という内容の遺言書を書いておくと良いでしょう。この場合も,上記と同様の理由から,遺言書の作成の際に相続人の遺留分に十分配慮する必要があります。

 

また,相続人が誰もいない,つまり子どもや孫がおらず,両親は既に他界していて,兄弟姉妹もいない,という人も,遺言書を書いておいた方がいいです。相続人が誰もいないのに遺言書を書いておかないと,最終的には財産が国のものとなってしまいます。誰か財産を引き継いでほしい人がいれば,遺言書を書いておくとよいでしょう。

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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