遺言にはどのような種類がありますか?
Q.遺言にはいくつか種類があると聞きましたが,どのような種類があるのでしょうか?
A.遺言には,いくつかの種類があります。
まず,「普通方式」に分類される遺言として,「自筆証書遺言」(民法968条),「公正証書遺言」(民法969条),「秘密証書遺言」(民法970条)があります。
次に,「特別方式」に分類される遺言として,「一般危急時遺言」(民法976条),「難船危急時遺言」(民法979条),「伝染病隔離者遺言」(民法977条),「在船者遺言」(民法978条)があります。
一般的によく用いられるのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」ですので,ここでは,この二つに絞って詳しく説明します。
「自筆証書遺言」は,遺言者が,その全文,日付及び氏名を自書し,これに押印するという方法により作成します(民法968条)。「自筆証書遺言」の場合,遺言書の作成自体に費用が掛からず,内容も秘密にできるため,手軽に作成することができるというメリットはあります。しかし,その裏返しとして,遺言者の死後に遺言書が発見されないおそれがある上,偽造,変造,隠匿されるリスク(偽造,変造されたのではないかと相続人等の間で疑われるリスクを含みます。)があるというデメリットもあります。また,内容を秘密にできるため,他人に相談せずに作成した結果,方式に不備があり遺言書が無効とされてしまう,ということもあります。
なお,「自筆証書遺言」は,家庭裁判所の検認の手続(民法1004条1項)を経る必要があります。この「検認」の手続を,家庭裁判所が遺言書の有効・無効を判断してくれる手続と誤解されてある方がいらっしゃいますが,そもそも家庭裁判所の「検認」の手続は相続が開始した後の手続である上(同項),遺言書の状態を確定しその現状を明確にする手続であって,遺言書の有効・無効を判断する手続ではありません(大決大正4年1月16日民録21・8)。ご注意ください。
「公正証書遺言」は,証人が2人以上立ち会った上で,遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し,公証人がこの口授を筆記し,これを遺言者及び証人に読み聞かせ,又は閲覧させ,遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認後,各自これに署名押印し,公証人がその証書は民法に定める方式に従って作ったものである旨を付記して,これに署名押印するという方法により作成します(民法969条)。
公証人は,元裁判官や元検察官などの法律の専門家であり,このような公証人が関与して作成されますので遺言の要件を欠いていて無効になるということはほとんどなく,また遺言書の原本も公証人役場で保管するため変造のおそれがないというメリットがあります。また,遺言者死亡後に家庭裁判所での検認の手続を経る必要がない,というメリットもあります。デメリットとしては,公正証書作成のための費用が掛かることと,証人の立会いを要するため遺言の内容を秘密にできない,ということが挙げられます。
なお,平成32年7月10日に「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が施行され,法務局が自筆証書遺言を保管してくれる制度が運用される予定です。
この制度を利用すれば,法務局が自筆証書遺言を保管してくれますので,紛失や変造等のリスクがなくなります。また,遺言書保管所に保管されている遺言書については,遺言書の検認をしなくてもよくなるなどのメリットもありますが,一定の手数料を納めることになります。
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