ビデオテープ,DVD,カセットテープ,CD等の録音・録画で遺言はできますか?

Q 自分で遺言書を書いたり,公証役場に行ったりするのは面倒臭いので,ビデオテープ,DVD,カセットテープ,CD等に相続財産の分け方や死後の身の回りの品の処理に関する希望などを録音・録画しておきたいと思うのですが,これらの音声・映像に遺言としての法的効力はあるのでしょうか?

 

A 近年,相続に関心を持つ人が増え,終活ブームが到来しています。これに伴い,生前,ビデオテープ,DVD,カセットテープ,CD等に相続財産の分け方や死後の身の回りの品の処理に関する希望などを録音・録画して残しておく「遺言ビデオ」の作成サービスも見られるようになりました。

 

このような「遺言ビデオ」などによる音声・映像について,遺言としての法的効力は認められるのでしょうか。

遺言については,「自筆証書遺言」(民法968条),「公正証書遺言」(民法969条)又は「秘密証書遺言」(民法970条)といった種類があり,それぞれ法律で定められた要件を備えることで,遺言としての法的効力が発生します。法律で定められた遺言の要件としては,ほとんど用いられることのない「船舶遭難者遺言」(民法979条)を除いて,全て書類の作成が必要となります。「遺言ビデオ」については,上記のとおり,生前,ビデオテープ,DVD等に相続財産の分け方を録音・録画して残しておくものになります。したがって,遺言のような法的効力が発生することはないと考えて差し支えありません。

では,このような「遺言ビデオ」は全く意味がないか,というと,そうでもないとも考えられます。

遺言書の文言は,後日の「争族」を防ぐため,誰が読んでも一義的で,色々な意味に解釈できないようにする必要があります。そのため,専門用語が多くなり,一般の方にとっては堅苦しいものになりがちです。遺言書を作成する方にとっても,自分の思いがきちんと表現できたか何となくしっくりこない,相続人の方々にしっかりと理解してもらえるのか遺言書だけでは心配だ,ということもあると思います。

そういった場合に,法律上の要件を遵守した遺言書とともに「遺言ビデオ」を作成し,ご自身の思いや考えをしっかり残しておくことで,遺言書の作成者の方の希望や意思をより明確に相続人の方々に残すことができると考えられます。

また,特に自筆証書遺言の場合,せっかく遺言書を作成しても,「遺言書作成当時,遺言者には既に遺言を作成するだけの判断能力が無かった」として遺言無効確認請求訴訟が提起されることもあります。このようなときも,遺言書作成当時の動画などがあると,遺言者の当時の状況を把握する1つの材料となり得ます。

弊事務所でも,遺言書作成のサポートだけではなく,相続トラブルに備える観点から,作成時の様子を撮影させていただく,動画撮影サービスも提供しております。

ただし,「遺言ビデオ」だけを作成しても,上記のとおり遺言としての法的効力はないため,かえって「争族」トラブルを引き起こしかねません。ですので,「遺言ビデオ」は,あくまでも法律上の要件を遵守した遺言書を専門家に相談しながら作成した上で,付随的なツールとして用いられることをお勧め致します。

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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