公正証書遺言のメリット・デメリットはなんですか?

Q.公正証書遺言を作成するのには費用もかかって大変そうですが,公正証書で遺言を作成するメリットとデメリットについて教えてください。

 

A.遺言は,民法に定める方式に従わなければ,することができない(民法960条)とされています。一般的によく用いられるのはお尋ねの「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」です。

 

  「公正証書遺言」は,証人が2人以上立ち会った上で,遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し,公証人がこの口授を筆記し,これを遺言者及び証人に読み聞かせ,又は閲覧させ,遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認後,各自これに署名押印し,公証人がその証書は民法に定める方式に従って作ったものである旨を付記して,これに署名押印するという方法により作成します(民法969条)。

 

 

  公証人は,元裁判官や元検察官などの法律の専門家です。その公証人が関与して作成されますので遺言の形式上の要件を欠いていて無効になるということはほどんどなく,また遺言書の原本も公証人役場で保管するため変造のおそれがないということが「公正証書遺言」のメリットとして挙げられます。また,「自筆証書遺言」は,遺言者死亡後に家庭裁判所での検認の手続を経る必要がありますが,「公正証書遺言」についてはこの検認の手続を経る必要がなく,この点もメリットとして挙げられます。

 

  デメリットとしては,公正証書作成のための費用が掛かることが挙げられます。また,証人の立会いを要するため遺言の内容を秘密にできないということもデメリットとして挙げられます。

 

  以上の通り,公正証書遺言のメリットをまとめると,次のとおりですので,相続開始後(死後),より確実に遺言の内容を実現したいと考えられるのであれば,「公正証書遺言」により遺言書を作成しておいた方が良いといえるかと思います。

 (1) 形式不備により無効になることがなく確実。

 (2) 公証人が遺言能力の確認をしてくれるので,遺言無効確認訴訟を提起される可能性が極めて低い。

 (3) 遺言公正証書の原本は公証役場で保管されているので,偽造・変造や廃棄・紛失の心配がなく安心。

 (4) 「遺言検索システム」の利用で,死後に発見されない危険も回避できる。

 (5) 相続開始後に家庭裁判所での検認が不要なので,死亡後即座に遺言書の内容の実現が図れる。

 (6) 文字が書けなくても、公証人役場で口述することで遺言が可能。

   (手話や筆談により聴覚・言語機能に障害がある方でも可能)

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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