空き家を相続する場合の注意点?相続に強い弁護士が解説!
目次
1.空き家の相続について
空家等対策の推進に関する特別措置法2条1項では、空き家等とは、
「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。第14条第2項において同じ。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。」
と定義されています。平たくいうと、誰も居住していない状態が続いている建物とその敷地をいいます。
資産価値の乏しい空き家の処分は難しいため、放置してしまうことも多いと思います。
しかし、空き家を相続すると、相続人は、
「周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する空家等に関する施策に協力するよう努めなければならない」
という責務を負うことになり(空家等対策の推進に関する特別措置法5条)、空き家の管理を行う必要が生じます。
このような空き家の相続について、どのように対処すれば良いのか解説します。
(1) 空き家を含めた遺産を相続するかの判断について
まず、被相続人(亡くなられた方)の遺産に空き家が含まれている場合、空き家を含めた遺産を相続するか否かの判断を行う必要があります。
そもそも、相続人は、被相続人(亡くなられた方)の遺産を相続するか相続しないのかを選ぶことができます。
相続放棄を行うと、空き家を含めた遺産の全てを相続することができなくなりますが、他方で債務等を負担する必要もなくなります。相続放棄を選ぶ場合には、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内」(民法915条1項)に被相続人が最後に居住していた場所を管轄する家庭裁判所に、相続放棄の申立てを行う必要があります。
相続を選択した場合や、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内」に相続放棄をしなかった場合には、空き家を含めた遺産の全てを相続することになります。
(2) 空き家を含めた遺産を相続する場合
ア 相続登記を行う必要性
被相続人(亡くなられた方)が遺言書を作成しておらず、なおかつ相続人が複数人いる場合には、相続人全員で、遺産分割協議を行うことになります。遺産分割協議が成立した場合には、遺産分割協議書を作成して、名義変更や解約などの相続手続きを行います。例えば、空き家については、被相続人(亡くなられた方)の名義である登記をその財産を取得する相続人の名義に変更する手続き(相続登記)を行うことになります。
なお、令和6年4月から、相続人は、不動産を相続によって取得したことを知った日から(相続発生を知った日)から3年以内に、相続登記を行うことが義務化されました(不動産登記法76条の2)。正当な理由がないにもかかわらず、相続登記を行わない場合には、10万円以下の過料(かりょう)の制裁を受ける可能性があります(不動産登記法164条)。
相続登記ついて詳しくはこちら
★相続登記の義務化にあたり、やるべきことや注意点は何ですか?
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イ 空き家の管理を行う必要性
(ア) 空家等対策の推進に関する特別措置法の責任
前記の通り、空き家を相続すると、相続人は、「周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する空家等に関する施策に協力するよう努めなければならない」責務を負うことになり(空家等対策の推進に関する特別措置法5条)、空き家の管理を行う必要が生じます。
空き家の管理が行われず、「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等」(これを「特定空家等」といいます。空家等対策の推進に関する特別措置法2条2項)に指定されると、市町村から行政指導等を受けることになります。
また、「特定空家等」に指定されると、固定資産税の負担額が最大6倍になってしまいます。これは、「住宅用地の特例」という軽減措置の適用により土地の固定資産税評価額は最大で6分の1まで減額されていたものが、住宅用地特例の対象外とされるからです。
(イ)民事上の責任
空き家が劣化して、外壁の一部が崩壊して、通行人が怪我をした場合、台風等で瓦が飛んでいき、隣家の建物や車を壊した場合など、空き家の所有者(相続人)が、損害賠償責任を負うことが考えられます(民法717条1項、709条)。
なお、遺産分割が成立しておらず、空き家を誰が相続するのか決まっていない場合、その空き家は、共同相続人が法定相続分に従った割合で共有している状態になります。そのため、この場には、共同相続人の全員が所有者としての責任を負っていることになります。
(ウ)資産価値の下落
空き家を管理せずに放置した場合、空き家の劣化が加速し、その結果、空き家の価値が下落する事態が生じます。また、劣化した空き家については、売りに出したとしても、買い手がつかないことも考えられます。また、費用を負担して解体しないといけない事態も生じかねません。
2.空き家の遺産分割の方法
(1) 空き家を含む遺産の分割が未了
空き家を含む遺産の分割が未了の場合で、相続人が、相続手続きや空き家の管理を放置した場合の問題を認識して、遺産分割協議を行なおうとしても、空き家が実家であれば、実家を残すか、売却するかで、相続人間の対立が生じることもあります。
以下では、空き家の遺産分割の方法について解説します。
(2) 空き家を相続する方法
空き家の遺産分割の方法としては、①現物分割する方法、②代償分割する方法、③換価分割する方法、④共有分割する方法があります。それぞれの分割方法のメリットとデメリットは以下のとおりになります。
なお、空き家の遺産分割の方法については、絶対的な正解はなく、遺産の内容・相続人の関係性などを考量して相続ごとに判断することになります。
遺産分割ついて詳しくはこちら
★父が亡くなりましたが、自宅不動産以外に財産がありませんでした。どのように遺産分割をすればいいですか?
①~④の分割方法を説明するにあたり、以下の設例をもとに説明します。
父親が亡くなり、相続人は、子どもA・B・Cのみ。
相続財産は、実家の土地建物(1500万円)、預金1100万円、有価証券1000万円。
① 現物分割する方法について
現物分割は、遺産をそのままの形で分割する方法になります。設例でいうと、Aが実家の土地建物、Bが預金、Cが有価証券を取得する方法が考えられます。
現物分割のメリットとしては、遺産を換価する手間がかからないことがあげられます。
現物分割のデメリットとしては、遺産を構成する財産の価値が同じではないため、相続人間に不公平が生じ、トラブルが発生する可能性があることです。
② 代償分割する方法
代償分割は、現物を取得した相続人が他の相続人に対して、代償金を支払う方法になります。設例でいうと、Aが遺産をすべて取得して、代償金として、B・Cに1200万円ずつ支払うことになります。
代償分割は、代償金の支払により、相続人が受け取る金額が同等になり、相続人間の公平を図ることができることがメリットになります。
他方で、代償分割のデメリットとしては、現物を取得する相続人に、代償金を支払うだけの資力がなければ採用できない方法になります。
また、代償金を算出するためには、遺産を構成する財産を評価することが必要になります。特に、遺産に不動産が含まれる場合には、評価が問題になります。不動産の評価方法には、実勢価格、公示価格、路線価、固定資産税評価額があり、それぞれの評価額は一致しません。一般的には、固定資産税評価額が一番低く、実勢価格が一番高い傾向があります。そのため、不動産の取得を希望する相続人が、固定資産税評価額を主張し、不動産を取得しない相続人が実勢価格を主張して、争いになることがあります。
③ 換価分割する方法
換価分割は、遺産を構成する不動産を売却して、その売却代金を相続人間で分配する方法になります。設例でいうと、実家の土地建物(1500万円)を売却して、その売却代金を分割することになります。
換価分割のメリットとしては、財産を現金化して分配することから、相続人間での公平が図れることと、代償分割の場合と異なり相続人の資力が問題にならないことがあります。
換価分割のデメリットとしては、空き家を売却することから、空き家の取得を考えている相続人がいる場合には、その希望を実現することができないことがあります。
また、換価分割の場合、不動産の譲渡所得(売却益)に対して、税金がかかる点にも注意が必要です。もっとも、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が利用できれば、譲渡所得から最大で3000万円が特別控除されるため、譲渡所得税額を軽減することができます。
「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」の適用が認められる要件と必要書類については次のサイトをご参照ください。
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
譲渡所得税額=(譲渡所得-特別控除額[3000万円])×税率
譲渡所得=売却金額-物件を取得する費用+売却時の諸費用
④ 共有分割する方法
遺産を分割せずに、相続人の共有のままにしておくことも考えられます。設例でいうと、実家の土地建物(1500万円)をA、B及びCの共有にする方法になります。
共有分割のメリットとしては、誰がどの財産を引き継ぐかを決められない場合に、相続人全員の共有にしておき、将来、方向性が決まってから、財産の配分を決めることができることがあります。
共有分割のデメリットとしては、相続人全員の共有ですので、管理費用や固定資産税の負担をどうするのかが問題になります。また、相続人の一人が死亡して二次相続が発生した場合、相続人の数が増え、遺産分割協議の成立が難しくなる可能性があります。
さらに、共有であることから、不動産の売却などの処分を行う際に、相続人全員の同意が必要になり、全員の同意をとりつけるのが困難であることも、デメリットになります。
4.空き家の相続を弁護士に依頼するメリット
空き家の相続については、空き家の分割方法や、空き家の評価をめぐって、相続人間で争いになることがあります。相続人間での争い(争族)の専門家である弁護士に依頼することで、ご希望する空き家の分割方法を実現することができます。
また、弁護士に依頼することで、他の相続人との空き家の相続の交渉を、弁護士に任せることができ、精神的な負担を軽減することもできます。
5.空き家の相続は弁護士法人岡本綜合法律事務所へご相談ください
空き家の相続については、相続登記、譲渡所得税、相続税、空き家の評価額などの問題について考慮する必要があります。弊所では、相続問題に精通した税理士・司法書士・不動産鑑定士等の専門家と日頃から連携しているため、これらの問題にワンストップで対応することが可能です。
また、弊所では、弁護士歴25年以上の豊富な実績と、税理士及び家族信託専門士を保有している弁護士が在籍しておりますので、豊富な経験に裏打ちされたアドバイスを行うことができます。弊所では、相続や遺産分割が泥沼の紛争に発展する前に、早い段階でご相談にお越しいただきたいという思いから、お気軽にご相談いただけるように、相続相談の初回相談料を60分無料としております。
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