遺言,死後事務委任契約によって,「おひとりさま」が将来に対する安心を得られるサポートができた事案
相談内容
Aさんは、結婚しておらず、子供もおらず,ご両親(父母)も既に他界しておられました。兄が1人おられるとのことでしたが,過去に衝突することがあり、その後関係は疎遠になっているとのことでした。
そのため,Aさんは,自分が亡くなった後の自宅内の不要品の処分や公的な諸手続、公共料金等の契約の解約等の事務手続について、誰にも迷惑がかからないように準備しておきたいとお考えでした。また、疎遠な兄に財産を相続されるよりも、慈善団体に財産を寄付して、社会のために役立ててほしいというお考えのもと、弊事務所に来所されました。
弁護士の活動内容
慈善団体への寄付については、遺言を作成することで対応可能であること、ご自身が亡くなった後の,葬儀・火葬に関する手続きや,健康保険、国民年金の手続き,遺品整理などの死後の諸々の事務については、弊事務所と死後事務委任契約を締結することによって、弊事務所で対応させていただけることをご提案し、遺言作成及び死後事務委任契約の締結について御依頼をいただきました。
その後、遺言者の財産が、依頼者の希望通り適切に,慈善団体に承継されるように,遺言の内容を打合せの上作成いたしました。遺贈による寄付を受け付けているほとんどの団体は、寄付は現金に限定され、不動産のままでは受け取って頂けないことから、遺言執行者において不動産を処分した上で寄付をする内容で遺言書を作成し、遺言執行者として弊事務所の弁護士を指定していただくことで、希望を実現できるようにしました。
また、Aさんは、ご自身が契約されている生命保険についても,その慈善団体を受取人とする遺言を作成することを希望されましたので、そのような内容で作成させていただきました。そもそも、生命保険の受取人を慈善団体とすることはまだまだ一般的ではないようであり,保険会社やそれを受け取る慈善団体とも何度も協議を重ねた上で、保険会社からも内容に問題はない旨の確認をしていただいて、手続きを進めていきました。
遺言は,自筆証書遺言を作成し,法務局に保管してもらう制度を利用いたしました。法務局が保管する制度ですと,Aさん自身が遺言書の全文を自書しなければならないという点で少し面倒かもしれませんし、ご自身が必ず法務局に行かなければいけませんが、公証役場で公正証書遺言を作成する場合より,相当程度費用が安くできます。
なお、遺言作成者と同居のご親族がおられる場合などは、遺言作成者本人が死亡された後に、同居のご親族が遺言執行者に対し、連絡をしていただくことで、遺言執行の実行が可能ですが、「おひとりさま」の場合、ご本人が死亡した後に、遺言書の存在を知っている身近な人がおられず、遺言執行者に連絡が行かないということも考えられます。この点、自筆証書遺言の法務局保管制度では、遺言執行者など遺言作成者が指定した方へ通知をしてくれる制度(指定者通知)があります。そのため、遺言執行者への死亡の通知が届き、確実に遺言執行に着手してもらうことが可能になるというメリットもあります。
また,死後事務委任契約についても,委任をする事務の内容を依頼者と打合せの上,公証役場において,死後事務委任契約を締結しました。
結果
Aさんは,遺言の作成により,ご自身の財産が希望する慈善団体に引き継がれ,世の中を良くすることに貢献できることを、とても喜んでおられました。
また,死後事務委任契約を締結することで,自身が亡くなったときに、誰にも迷惑をかけることなく、事務手続を終えることができることについて,とても安心できたとのお言葉をいただきました。
弁護士の所感(コメント)
近年では,結婚についての価値観も変動し,配偶者がおらず一人暮らしであり,子供がいないという「おひとりさま」のご相談が増えております。また、配偶者と死別して「おひとりさま」として生活されている方も増えています。
弊事務所では、このような方々との間で,死後事務委任契約を締結することで,葬儀・仮葬の実施や動産類の処分などについて対応させていただき、ご自身が死亡された後のご不安を解消するお手伝いをさせていただいております。
また,最近は,Aさんのように,疎遠な親族よりもむしろ慈善団体に財産を寄付したいという方もいらっしゃいます。慈善団体は不動産や保険など換金や面倒な手続きが必要な財産については寄付を受けつけないことが一般的であり,遺言で慈善団体に財産を譲り渡したい場合には,遺言の執行を弁護士に依頼しておくことでスムーズな手続きが可能になります。
そこで,遺言の作成から遺言の執行まで,相続の経験が豊富な弁護士に依頼をすることで、スムーズにご希望を実現できることになると思います。
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