相続でよくある「愛人や内縁の妻・隠し子」の相続トラブルについて
父親が亡くなった後、見ず知らずの女性が「隠し子」を連れて現れ、父親には「隠し子」がいたことが判明した・・・・・。自分には関係ないと思っている人がほとんどかと思いますが,家族関係が「複雑化」している現在、ごく普通の家庭でも起こる可能性がある問題なのです。
「見ず知らずの人に遺産を渡したくない」
「そもそも今後の手続きをどのように進めていいかわからない」
など、愛人や内縁の妻・隠し子というあからさまなトラブルのタネを抱えているわけですから、「争続」へと発展することは珍しくありません。
問題になるのは、遺産分割です。「愛人」や「隠し子」に、相続する権利が認められるのでしょうか?また,そもそも遺産分割をどのように進めていけばよいのでしょうか。
そこで、本記事では、「相続人の愛人・隠し子による相続トラブル」について、弁護士歴25年の経験のもと,相続相談実績年間300件以上の弊事務所の弁護士が解説いたします。
実際に当事務所に寄せられた相談事例
事例1
父が死亡する数年前に,父に愛人との間の子が存在することが判明した。愛人との子も相続人であるとのことであるが,どうやって連絡をとれば良いのか,遺産について,どのような話をして良いのか分からない。
事例2
自分は,婚姻関係にない父と母との間に生まれたが,父の死亡後に,突然,父の相続人という人達から,相続を放棄するよう求める連絡があった。自分には相続の権利があるのかも分からないし,今後どのように対応していいのか分からない。
隠し子らと他の相続人とでは,ほぼ面識がないことが原因で遺産分割協議が難航することや,それぞれが感情的になって,争族に発展しやすいといえます。
愛人・内縁の妻や隠し子に相続権はあるの?
原則として愛人や内縁の妻に相続権はありません。しかし生前の対策があれば、遺産をもらうことができます。
愛人・内縁の妻は法定相続人にはならない
「愛人」と「内縁の妻」を混同して使われることが多いのが現状です。しかし、両者の法律的な意味は異なります。
愛人とは、現代の日本語では、単に「愛する相手」をいうのではなく、不倫相手という意味が含まれており,配偶者以外のパートナーのことを指します。愛人関係について法的保護はほぼないだけではなく,相手の配偶者から損害賠償請求を受けることもあり得ます。
内縁とは、「婚姻届を出していない事実上の夫婦」ということになります。法的には正式な夫婦とは認められませんが,社会的には正当な夫婦と評価される関係であるため,婚姻関係と同様の保護が与えられる場面もあります。
ただし,愛人であっても,長年連れ添ってきた「内縁関係」「事実婚」であっても、いずれも相続人にはなりません。配偶者として遺産を相続できるのは、婚姻届を提出した戸籍上の配偶者に限られます。
隠し子は認知していれば相続人になります
婚姻外の男女間に生まれた子供であるいわゆる「隠し子」は、出生の事実だけでは,実の父との間で法律上の親子関係が発生しないため、当然には、その法定相続人とはならず、相続権はありません。
ただし、婚姻外の男女間に生まれた子でも,認知されれば,法律上の親子関係が生じ,法定相続人になりますので、戸籍上の配偶者との間に生まれた子と同等の割合で遺産を相続できます。
愛人の子だからといって遺産分割協議から除外することはできず、その子も含めて遺産分割の話し合いをしなければなりません。
隠し子の相続割合
以前の民法では、非嫡出子の法定相続分は、嫡出子の1/2とされていましたが、平成25年に民法が改正されて、嫡出子と非嫡出子の相続分の差はなくなりました。
例を挙げて、解説します。
被相続人A、妻B、愛人C、嫡出子D、隠し子Eとします。
法定相続人は、妻Bと子供DEです。
Bの相続分は、1/2です。
DEの相続分は、2人合わせて1/2です。
嫡出子と非嫡出子の相続分は均等ですので、DEそれぞれの相続分は1/2×1/2=1/4となります。
愛人・内縁の妻に遺産相続させるには?
愛人や内縁の妻が法定相続人とは認められなくても、被相続人にとっては、長年苦労を共にしてきたパートナーが、遺産をいっさい相続できないという事態を避け、自分の遺産を少しでも与えたいと思うことがあるでしょう。
現行法上、愛人や内縁の妻が、被相続人の遺産をもらう方法として、次の2つが考えられます
特別縁故者に該当する場合
特別縁故者の制度とは、相続人がいない場合に,被相続人と特別な関係にあった人に遺産の全部または一部を与える制度です。特別縁故者とは、被相続人と生計を一緒にしていた方や療養看護をしていた方など、被相続人との関係が親密であった間柄の人になります。
ただし、特別縁故者が財産を受け取ることができるのは、被相続人に法定相続人がいない場合のみであり,相続人がいる場合には適用されませんので注意が必要です。
特別縁故者として被相続人の財産を受け継ぐには、相続人の不在が確定してから3か月以内に相続財産分与の請求を家庭裁判所に申し立てる必要があります。内縁の配偶者について特別縁故関係が認められた例がありますが、それ以外のケースではなかなか「特別縁故者」として認定されるのは難しいのが現状です。
遺言書で相続させる
法的に有効な遺言書を作成することで、遺贈により愛人や内縁の妻に財産を残すことができます。
遺言であれば、愛人・内縁の妻に対して、財産の全部または一部を遺贈する旨の記載があれば、同人らに対し,財産を残すことができます。
出来るだけ揉め事やその後の問題が発生しないように,事前に専門家に相談することをおすすめします。弁護士であれば、法律的に間違いのない正しい文面の遺言書を作成することができます。
認知された隠し子に相続させない方法
それでは、「隠し子」に相続させたくないとき、どんな事前対策ができるでしょうか。
考えられる方法は、主に2つです。
ただし、現在の配偶者の子供も、愛人との間の認知された子供も、前記のとおり同じ法定相続分を有していますので、遺産を一切渡さないで済ませることは難しいといえるでしょう。
相続放棄してもらう
相続放棄とは、法定相続人が,被相続人の財産につき一切相続をしないという方法です。プラスの遺産よりマイナスの遺産のほうが多い場合などに、よく行われます。相続放棄をすると、初めからその人は相続人ではなかったという扱いになり、すべての遺産について相続する権利を失います。ただし,この方法は,あくまで相続開始後(被相続人死亡後)に,法定相続人自身が,家庭裁判所に申述することになりますので,被相続人の生前の対策とはいえません。また,生前に「隠し子」が,相続開始後に相続放棄をする旨約束していたとしても,このような約束は法的には意味がなく,相続開始後に「隠し子」が相続放棄の手続きをしてくれる保証はありません。
遺言書で隠し子の相続分を減らす
最後は、遺言書で相続分を指定し、隠し子の相続分を減らす方法です。もっとも、遺言書を作成することにより、法定相続分にかかわらず相続をさせることは可能です。
ただし、隠し子には遺留分がありますから、相続させないとする遺言をした場合、遺留分侵害額請求をされることもあります。
このような複雑な事項を含む遺言書の作成は容易ではありませんので、一度相続問題のプロである弁護士に相談することをお薦めいたします。
愛人や内縁の妻・隠し子がいる場合は相続トラブルに繋がりやすい
戸籍上の配偶者とは異なり、愛人や内縁の妻には法定相続分がありません。遺言や死因贈与契約があれば愛人に遺産を渡すこともできますが、法定相続人は,遺留分侵害額請求で一部を取り戻すことができる場合もあります。また、そもそも遺言の無効確認の訴えをできる場合もあります。
一方、愛人の子でも,認知された子には、戸籍上の妻との間の子と同等の相続権があります。愛人の子を遺産分割協議から除外することはできず、話し合いによって解決することが必要です。
弊事務所のサポートについて
遺産分割については,ただでさえ揉めるケースが多い中、相手が夫や父親の隠し子となると、より抵抗感を覚える方も多く、解決が困難になります。遺産分割で相続人だけの協議がなかなか進まない場合には、弁護士が間に入り、客観的な視点からスムーズに話し合いを進めていくことができます。
当事務所では、相続トラブルを解決するために,あるいは相続トラブルに発展させないために,弁護士が最適なサポートを提供致します。
初回60分無料相談
弊事務所では、相続の相談について、初回60分を無料とさせていただいております。相続人の争いを避けるかたちでの遺産分割について、あなたの不安点や疑問点を親身にヒアリングさせていただき、弁護士がその不安点や疑問点を解消できるようにご提案させていただきます。気になることや不安なことがあれば、ささいなことでもお気軽にご相談ください。
相続人調査サポート
被相続人が死亡して相続が発生してから、愛人や隠し子の存在が明るみに出る事例は少なくありません。中には、遺産分割協議を始める前に被相続人の戸籍を調査する中で判明することもあります。
遺産分割協議の開始時点で相続人となるべき者がいるにもかかわらず、その者を遺産分割協議から外していた場合には,遺産分割が無効になる可能性もあります。戸籍の仕組みを理解していないと相続人調査が不十分なこともあるでしょう。できるだけ弁護士などの専門家に依頼し、間違いのないよう相続人調査を行うことが大切です。
遺言書作成サポート
遺産分割サポート
相続人間の遺産分割について、あなたのご希望をお伺いしたうえで、ご希望を実現するお手伝いをさせていただきます。相続財産の分け方を相続人同士で協議する遺産分割について、交渉や法的手続のプロフェッショナルである弁護士がサポートいたします。
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