老朽化した建物の解体費用なども負の財産として考慮した上で,遺産分割を成立させた事案
相談内容
父親が亡くなり,相談者と母親を異にする兄弟が相続人として,遺産分割協議を行う必要がありました。
相談者は,特に異母兄弟と揉めている訳ではないものの,交流がほとんどないことから,直接協議をしても円滑に進まないことを危惧され,弊事務所に相談に来られました。
財産を調査していくなかで,亡父所有の地方都市の土地に,旧家が存在しており,老朽化が激しく,公共団体からも対策を講じるよう指導を受けていることが判明しました。
争点
老朽化し,危険建築物と認定されている建物の解体費用等を考慮した協議ができるかが問題となりました。
もし,これを考慮してもらえないとすると,不動産を取得する相続人が多額の解体費用を負担せざるを得ないことになり,不公平になるからです。
弁護士の提案内容
幸い遺産には数千万円の預貯金もあり,また相続人の関係が疎遠というだけで争いになっている訳ではありませんでしたので,依頼者及びその他の相続人に対し
①共同で不動産を売却して売却金等を分割する方法と,
②不動産の評価額から解体費相当額を控除した金額を不動産の実質価値とすること
を前提に分割協議をすることを提案しました。
結果
不動産を早急に処分することを前提に動き出しましたが,結果的に流動性に乏しい地方都市の不動産を早期に売却することは難しく,相続人の1人が不動産を取得するという内容で協議を進めました。
最終的には,依頼者が不動産のみならず預貯金の大半を取得し,兄弟には100万円程度の代償金を支払うことで遺産分割が成立しました。
弁護士の所感(コメント)
老朽化した建物が土地上にある場合,解体費用が高額になり,解体費用が土地の評価額を上回ることもあり得ます。
また,地方都市では,不動産を容易に売却できない事例が増えてきており,土地を処分できないまま,建物を解体して,更地になった土地は固定資産税が増額になることから,多額の固定資産税を負担し続けなければならないという事態も生じ得ます。
そのため,不動産を取得する相続人の立場では,マイナスの財産として評価してもらいたいというのが本音です(いわゆる「負動産」)。
他方で,建物が建っている土地も,一応,固定資産評価額のある財産ですので,不動産を取得しない相続人の立場からは,プラスの財産として評価するのは当然という考えになります。
本件でも不動産の評価については争いがありましたが,危険な建物として行政の指導を受けている状況でもあり,ご兄弟にも「自分が不動産を取得する立場なら,この分割内容で応じられるのか」ということを熟慮して頂き,依頼者にも喜ばれる結果となりました。
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