遺産分割でやってはいけないこと・注意点は?絶対NGな6つの行動を弁護士が解説

身近な人が亡くなり、悲しみに暮れる間もなく直面するのが『遺産相続』の問題です。中でも財産の分け方を決める『遺産分割』は、これまで仲の良かった親族間でさえ深刻なトラブルに発展しやすく、『相続』が『争族』になってしまうケースが後を絶ちません。

「早く終わらせたい」「身内だから口約束で大丈夫だろう」といった安易な考えは、後々取り返しのつかない事態を招く恐れがあります。

本記事では、相続問題に強い弁護士が「遺産分割で絶対にやってはいけないNG行動」や、正しい遺産分割の手順・注意点についてわかりやすく解説します。

 

1.【絶対NG】遺産分割でやってはいけない6つのこと

【結論】遺産分割で絶対にやってはいけないのは、「感情的な話し合い」「無断での財産引き出し」「口約束での合意」「一部の相続人の排除」「素人判断」「期限の放置」の6つです。

遺産分割において、少しの油断や知識不足が訴訟などの大きなトラブルを引き起こします。以下の6つの行動は絶対に避けましょう。

 

感情的になって話し合いを進めてしまう

「長男だから多くもらうのが当然」「親の介護をしなかったくせに」など、過去の不満や感情論をぶつけ合うのはNGです。

遺産分割はあくまで『財産をどう分けるか』という話し合いです。感情的になり協議がまとまらない場合は、家庭裁判所での調停や審判に発展し、数年単位の長い時間と多大な精神的ストレスを抱えることになってしまいます。

冷静な対話が難しいと感じたら、弁護士に依頼することも考えられます。

 

他の相続人に無断で財産を処分・引き出す

被相続人の預貯金を勝手に引き出したり、遺品を勝手に売却・処分したりする行為は絶対にやってはいけません。

たとえ『葬儀費用に充てるため』『親の未払い入院費を払うため』といった正当な理由であったとしても、他の相続人から見れば『財産を隠蔽している』『勝手に使い込んでいる』と疑念を持たれる原因になります。最悪の場合、不当利得返還請求や損害賠償請求といった訴訟トラブルに発展する可能性があります。

財産の引き出し等の必要がある場合は、必ず事前に他の相続人全員に目的と金額を説明し、領収書などの証拠を保管しておきましょう。

 

書面を残さず口約束だけで決めてしまう

「今回は長男が全部もらう」と口頭で合意しても、不動産の名義変更や口座解約には全員の実印が押された『遺産分割協議書』と印鑑証明書が必要です。また、後になって『そんなことは言っていない』『やっぱり不公平だ』と気が変わる相続人が現れるリスクもあります。決定事項は必ず書面に残すのが鉄則です。

 

特定の相続人を排除して協議を進める

『前妻の子とは疎遠だから連絡したくない』『認知症の母には分からないから外して進めよう』など、一部の相続人を意図的に排除して行った遺産分割協議は、法的に無効となります。

遺産分割協議は『相続人全員』で行わなければならないという厳格なルールがあります。疎遠であっても必ず連絡を取り、協議に参加してもらう必要があります。もし認知症などで判断能力がない相続人がいる場合は、成年後見人を選任する手続きが必要です。

 

専門家に相談せずに素人判断で進めてしまう

インターネット上の情報などを頼りに、素人判断だけで手続きを進めるのも危険です。

例えば、『生前に多額の援助を受けていた相続人がいる(特別受益)』『親の事業を無給で手伝い財産維持に貢献した(寄与分)』といった事情がある場合、法的に正しい計算や主張を行うには専門的な知識が不可欠です。

また、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などを知らずに進めてしまうと、本来払わなくてよかったはずの多額の相続税を納めることになり、経済的な大損をしてしまうケースも少なくありません。

 

期限を意識せずに手続きを放置してしまう

『忙しいから』『話し合いが面倒だから』と遺産分割を放置してしまうのは非常に危険です。遺産分割協議自体に期限はありませんが、関連手続きには厳格な期限があります。

 

・相続放棄の期限:相続開始を知った時から『3ヶ月以内』
・相続税の申告・納付:相続開始を知った日の翌日から『10ヶ月以内』
・相続登記の義務化:不動産を取得したことを知った日(相続開始)から『3年以内』(2024年4月施行)

 

特に相続税の申告期限に間に合わないと、ペナルティとして延滞税などが課される上、税負担を軽減できる特例が使えなくなる虞があります。放置しても問題は解決せず、むしろ状況は悪化すると考えておきましょう。

2.そもそも遺産分割とはなぜ揉めるのか?

【結論】遺産分割とは、亡くなった方の財産を「誰が・どの財産を・どれくらい受け取るか」を相続人全員で話し合って決める手続きです。実家などの分けにくい財産がある場合に揉めやすくなります。

亡くなった方(被相続人)が遺した預貯金や不動産は、一時的に「相続人全員の共有状態」となります。共有ということは、被相続人が所有していた財産に対して相続人全員に権利がある状態ですから、相続人の1人が単独で預金の引き出しや不動産の売却など自由に財産を処分することができません。そこで、誰が・どの財産を・どれくらい取得するのかを具体的に決める必要があり、このプロセスのことを遺産分割と呼びます。

現金のように簡単に分けられる財産だけでなく、実家(不動産)や非上場株式など、物理的に分けるのが難しい財産が含まれている場合、誰が取得するかで意見が対立しやすくなります。

 

3.遺産分割の正しい手順(遺言書の有無で変わる)

【結論】遺産分割は「相続人の確定遺言書の確認財産の調査遺産分割協議名義変更」の順で進めます。有効な遺言書がある場合は、原則として遺言の内容が最優先されます。

遺産分割は、一般的に以下のような流れで進められます。順序を飛ばして進めると後から無効になる可能性があるため、着実にステップを踏むことが重要です。

 

ステップ1相続人の調査・確定

被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本をすべて取得し、法定相続人を確定させます。前妻との間の子や認知した子など、予期せぬ相続人が判明することもあります。

 

ステップ2:「遺言書」の確認

ステップ1と同時に「遺言書」の有無を確認します。

自分で作成した遺言書(自筆証書遺言)を自宅等で保管している場合は、被相続人が大切な書類を保管している場所等を探して見つけ出す必要があります。

自筆証書遺言を法務局で保管している場合は、相続人に対して遺言者が通知先として指定していたときや関係相続人等が法務局で遺言書を閲覧したときに相続人へ通知が届くようになっています。

公証役場で遺言書を作成した場合(公正証書遺言)は、通知制度等がありませんので、公証役場で遺言書の有無を確認することができます。

遺言書がある場合は、法務局や公証役場での保管を除き、家庭裁判所での『検認』手続きが必要です(勝手に開封してはいけません)。遺言書が有効であれば、その内容に基づいて相続手続きを行います。

>>遺言がる場合については「遺言書が見つかったらどうすればいい?

>>遺書の開封方法とは?遺言の検認を弁護士に依頼しましょう!

 

ステップ3:相続財産の調査と「財産目録」の作成

遺言書がない場合は、相続人全員で遺産をどう分けるかを決める『遺産分割協議』をする必要があります。その前提として、預貯金、不動産、有価証券などのプラスの財産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産もすべて調査して洗い出します。調査の結果については、財産の全容をまとめた『財産目録』を作成することになります。

>>相続人・相続財産・遺言調査

 

>>被相続人の財産がまったく分かりません。財産調査をお願いすることは可能でしょうか?

 

ステップ4:遺産分割協議の実施と書類作成

確定した相続人全員で財産の分け方を話し合います。全員の合意が得られたら『遺産分割協議書』を作成し、実印での押印と印鑑登録証明書を添付します。

話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所での「遺産分割調停」「遺産分割審判」へと移行し、最終的に裁判官が分割方法を判断します。

>>遺産分割調停を行いたいです。流れを教えてください。

>>遺産分割調停と審判について

 

ステップ5:名義変更などの相続手続き

完成した遺産分割協議書(または調停調書・審判書)を用いて、不動産の相続登記や金融機関での預貯金の解約・名義変更手続きを行います。

 

4.遺産分割に関する「よくある質問」

Q1:遺産分割協議に期限はありますか?

A:協議自体に明確な期限はありませんが、関連手続きの期限に注意が必要です。

相続税申告(10ヶ月以内)や相続登記(3年以内)などの期限を過ぎると、特例が使えなくなったりペナルティが課されたりするため、放置は非常に危険です。

 

Q2:認知症の親族がいる場合、話し合いから外してもいいですか?

A:絶対に外してはいけません。

相続人を1人でも除外した協議は法的に無効です。 意思能力のない方がいる場合は、家庭裁判所で「成年後見人」を選任し、後見人に協議へ参加してもらう必要があります。

 

Q3:葬儀費用のために親の口座から勝手にお金を引き出してもいいですか?

A:トラブルの原因になるため、事前の説明と領収書の保管が必須です。

正当な理由であっても、他の相続人から使い込みを疑われるリスクがあります。必ず引き出す前に相続人全員に目的と金額を説明し、合意を得ておきましょう。

 

5.遺産分割を弁護士に依頼する4つのメリット

遺産分割においてトラブルの芽を摘み、スムーズに手続きを進めるためには、早い段階で弁護士に依頼することをおすすめします。

 

他の相続人と直接連絡を取る必要がなくなる:弁護士が窓口になるため、親族同士で顔を合わせて言い争う精神的負担がゼロになります。

複雑な手続きを丸投げできる:戸籍収集、財産調査、不動産評価など、時間と手間のかかる作業をすべて任せられます。

法的・税務的に最適な解決策が得られる:寄与分や特別受益の正確な計算、二次相続まで見据えた「最も損をしない分割方法」のアドバイスが受けられます。

無効にならない確実な書面作成:法的に不備のない遺産分割協議書を作成し、後日のトラブルを完全に防止します。

 

6.遺産分割のご相談は「岡本綜合法律事務所」へ

遺産分割は、一生に何度も経験するものではありません。「もしかして揉めるかも」「どう進めていいか分からない」と感じたら、手遅れになる前にぜひ一度ご相談ください。

当事務所には、弁護士歴30年以上の経験豊富な弁護士が在籍しております。机上の法律知識だけでは得られない、多数の相談・解決実績に裏付けられた実践的なノウハウで、ご相談者様に最適なサポートを提供いたします。

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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