遺言書の開封方法とは?遺言の検認を弁護士に依頼しましょう!

Q.私(X)の父が先日亡くなりました。父の相続人は,妻(母),子が私と妹(Y)がいます。
私と母は父の生前に同居していたのですが,妹は東京に行ったきりで,交流は20年以上断絶しております。
先日私が父の遺品整理をしていると,父の管理していた仏壇から,「遺言」と書かれた封書を発見しました。この封書を開けて見たところ,「全財産をXに相続させる。ただし,Xは,私が死ぬまで面倒みること。」と書かれていました。
私は知人に,そのことを相談したところ,知人から「封をした遺言書は裁判所に持って行って開封してもらわないと効力がない。」と言われました。私が父の遺言書を開けてしまった場合,遺言書の効力はなくなり,私は父の遺産をもらえないのでしょうか?不安なので,教えて下さい。


A.結論として,あなたが父の遺言を偽造、変造、破棄または隠匿した等といった事情がないのであれば,遺言は無効とはなりません。
もっとも,遺言を検認手続することなく開封してしまった場合には、5万円以下の過料(刑罰ではありません)が課せられる可能性があります。

検認という制度について

遺言には,偽造、変造、破棄または隠匿の危険が常につきまといます。そこで,法は,遺言制度を公正に運用するために,後日の紛争に備えて,遺言書の現状を保全する制度を用意しました。その制度が家庭裁判所の検認なのです(民法1004条1項)。

 

検認手続というのは遺言書について相続開始後に速やかに,家庭裁判所で遺言の存在,内容,形状などを明確にしておく手続です。その実質は一種の検証手続・証拠保全手続であり,遺言の効力そのものを確定する手続ではありません。その具体的な内容は,下記「検認の申立てと必要書類」の「(3)実際の検認手続」において説明いたします。

検認は,

①従来型の自筆証書遺言

②秘密証書遺言

について必要とされています(民法1004条2項,法務局における遺言書の保管等に関する法律(以下,「遺言書保管法」という。)11条)。公正証書遺言・法務局において保管されている自筆証書遺言書について検認が不要となるのは,それぞれ遺言書の原本を公証役場や法務局といった信頼できる公的機関が保管することで,偽造、変造、破棄または隠匿の危険がほぼ存在しないからです。

 

以上をまとめますと,質問者様のように,被相続人の遺言書を発見した者は,遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認の申立をしなければならないことになります。

検認する前に,遺言書を開封してしまった場合について

次に,検認の前に遺言を開封してしまった場合の効果について解説します。

(1) 検認前に無断で開封しても,遺言は無効になりません

検認には決まった手続きがありますが、これらの定めを知らずにうっかり遺言書を開封してしまったとしても、遺言書自体が無効になるわけではありません。逆に、検認手続を受けたからといって、その内容が有効であるというお墨付きをもらえるわけでもありません。

 

遺言の有効性については、遺言の方式を遵守しているのか,遺言の成立過程に問題がないか等の観点から別途判断されるものです。検認手続自体は、単に遺言の客観的・外形的状態に関する事実を調査し,遺言書の現状を確定する証拠保全手続にすぎないのです。

 

(2) 遺言を開封した人は相続権を失わない

検認について定めたルールを知らずに,うっかり遺言書を開封してしまったとしても、このように開封をしてしまった人が,ただちに遺言に関して相続権を失うということはありません。検認自体は,遺言の外形的状態を保存するための,証拠保全手続きにすぎないからです。

 

もっとも,遺言を開封した相続人が,故意に遺言の内容を書き換えたり,自己に不利な遺言を破棄・隠匿したような場合には,相続人としての地位を失うことがある(民法891条5号)ので,このような行為は決してしないようにしましょう。

 

(3) 遺言書を勝手に開封してしまうと5万円以下の過料も

検認についてのルールに違反して,家庭裁判所以外において遺言書を勝手に開封した場合には,5万円以下の過料に処される可能性があります。

 

ここでいう「過料」とは,刑罰である「罰金」や「科料」とは異なり,犯罪ではありません。また,実際に過料が課されたということは,あまりないというのが実情です。とはいえ,勝手に遺言を開けてはいけないことに変わりないので,注意をしましょう。

 

検認の申立てと必要書類

(1) 検認を申立てる必要性

被相続人の自筆証書遺言を保管している人、またはこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後速やかに,遺言書を,遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に提出して、検認の申立をしなければなりません。

 

これは,既に誤って遺言書を開封してしまった場合も同様です。遺言書が開封された後であっても,遺言書の状態を保全し,改ざん等を防ぐ必要性はいまだ存在しているからです。

 

また,検認を受けなければ自筆証書遺言によって,不動産の所有権移転登記などの手続きができません。

 

(2) 検認申立ての必要書類

検認の申立てには,基本的には以下のようなものが必要となります。

 

① 検認の申立書
② 標準的な添付書類

【共通の書類】
③ 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
④ 相続人全員の戸籍謄本
⑤ 遺言者の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

 

【相続人が遺言者の(配偶者と)父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合】
⑥ 遺言者の直系尊属(相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母と祖父))で死亡している方がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

 

【相続人が不存在の場合,遺言者の配偶者のみの場合,又は遺言者の(配偶者と)兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合】
⑦ 遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
⑧ 遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
⑨ 遺言者の兄弟姉妹で死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
⑩ 代襲者としてのおいめいで死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

※ 同じ書類は1通で足ります。
※ 審理のために必要な場合は,裁判所が追加書類の提出を求めることもあります。

 

(3) 実際の検認手続

検認の申立てがあると,家庭裁判所は,検認を行う期日を決定し,相続人等に期日を通知した上で,検認を行います。検認の具体的な手続は,封印・封緘されている遺言書は開封のうえ内容を確認し,遺言が方式を遵守しているのか,その他必要と思われる事項を調査し,その結果を調書に記録します。遺言の内容のほか,使用された用紙・紙質,大きさ,日付,氏名,押印の有無や形状,筆記用具,加除,訂正の内容・方法などを確認します。

 

その上で,期日に出頭した関係人に当該遺言書を閲覧してもらい,意見があれば意見を聞きます。そして,必要事項を調書に記載し,遺言書の文面及び封筒をコピーして調書に添付するのが一般的な流れとなります。

 

検認の申立てを弁護士に依頼する意義

(1) 検認手続を円滑に進めることができる

検認申立ての必要書類である遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍と、相続人全員の戸籍をすべて取得するだけでも、かなりの手間がかかることがあります。特に、被相続人が婚姻と離婚を繰り返している場合や,相続人が遠方にいる場合等は戸籍の収集に時間も手間もかかります。

 

また,被相続人死亡前にその子が死亡しており代襲相続が発生している場合等は、相続人を把握すること自体に多大な労力を要する場合もあります。

 

相続手続きに熟知した弁護士に依頼することで、このような煩わしい作業を大幅に削減できます。また、相続税の申告期限との関係で、手続きを急ぎたい場合等には、弁護士などの専門家に依頼をすることで,迅速な手続きが可能となります 。

(2) 遺言を巡る相続人間の紛争の準備ができる

遺言書の内容によっては,怒りだし,遺言の無効を主張してくる相続人がいることもあります。その際,遺言を保管していた人や,遺言を発見した人は,そういった相続人から,遺言を改ざんしたのではないか等と疑われることもありえます。

 

このように,相続争いに発展しそうな場合に,早期に弁護士に相談することで,手続きを適正に行うことができ,紛争を未然に防ぐことにつながります。

 

(3) 相続全体に関して助言を受けることができる

検認の申立ての依頼をきっかけに,相続全般について弁護士に相談することで,相続人や相続財産の範囲の問題,遺産分割のすすめ方,相続税の問題,登記等の名義変更に関する問題など,相続に関する不安が解消されることがありますので,検認という相続手続きの初期段階で弁護士に依頼をすることは有益です。

 

まとめ

⑴ 遺言書を保管していた人,遺言書を発見した人は,遺言書を勝手に開封してはいけません。速やかに,家庭裁判所に対して検認の申立てをしましょう。
⑵ 検認前に,遺言書を開封してしまったとしても,それだけで遺言書が無効とはなりませんが,過料を課せられる可能性があります。
⑶ 検認の申立ては,必要書類を添えて,家庭裁判所に対してする必要があります。
⑷ 手続きの煩雑さを免れることができる点及び後の紛争に備えることができる点から,検認の申立て段階で弁護士に依頼することが望ましいです。

 

結びに

遺言書の検認申立手続は、ご自分で進めることも可能ですが、必要な資料の収集や,各種機関とのやり取りについて煩雑であると感じられることもあるかと思われます。また,自筆証書遺言については,その有効性について争いに発展することもあり,相続手続きの初期段階である検認申立ての時点から弁護士が関与することで,紛争を未然に防ぐことにつながります。

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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