相続した共有不動産の持分の売却はできますか?~売却する際の注意点について~
目次
Q 先日、父が亡くなりました。母は数年前に亡くなっていますので、父の相続人は、長男の私と次男の
弟の2人です。
亡くなった父の財産には、不動産があります。その不動産は、父と叔父(父の弟)が2分の1の割合
で共有するものでした。私は、自分名義の不動産を所有しているため、父と叔父が共有していた不動産
に興味はなく、叔父と関わりを持ちたくありません。そのため、相続した共有不動産の持分の売却を検
討していますが、売却することはできるのでしょうか。
もし売却できる場合には、注意するべきことがあれば教えてください。
A 相続した共有不動産の持分を売却することはできます。
しかし、共有不動産の持分を売却する場合には、注意すべき点がいくつかあります。
以下で解説します。
共有不動産の持分の相続
共有不動産の持分とは
「共有」とは、数人が持分を有して、1つの物を共同で所有する場合をいいます。そして、「共有不動産」とは、数人が持分を有して、1つの不動産を共同で所有する状態のことをいいます。
本件のQ&Aでは、Aさんの父と叔父が、2分の1の持分で不動産を共同で所有していることになります。
各共有者は、自己の「持分」について、他の共有者の同意を得ることなく、自由に処分することができます。ここでいう「処分」の代表例は、譲渡になります。譲渡には売買も含まれます。
共有不動産の持分の相続
相続人は、相続開始時点から、被相続人(亡くなった方)の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)。相続人が複数存在する場合には、共同相続人は、各自の相続分に応じて被相続人の財産を共有することになります(民法898条1項)。
本件のQ&Aのように、共有者の1人であったAさんの父が死亡した場合は、父の持分に対して、相続人であるAさんと弟が、それぞれ2分の1ずつ権利を有することになります。
各共有者は、自己の「持分」について、他の共有者に同意を得ることなく、自由に処分することができます。
そのため、Aさんは、父の持分に対して2分の1(不動産全体に対して4分の1)の割合の権利を有することになり、父の持分に対して2分の1の割合分については、自由に売却することができます。
共有持分を売却する方法
共有物を売却する場合、先に述べたとおり、自身の持分のみであれば、他の共有者の同意なく売却することができます。
しかし、共有者の1人が、共有物全部を売却したり、共有物を物理的に変更するためには、共有者全員の同意が必要になります(民法251条1項)。
また、共有物の管理行為(例:共有物を賃貸に出すなど)をするためには、共有者の持分の価格に従い、その過半数の同意が必要になります(民法252条)。
このように、共有物については、共有「物」の自由な処分や利用に制約があるため、この制約が「持分」の売却の障害になることが考えられます。
共有持分を売却する方法としては
- 自分の持分のみ売却する
- 共有者全員で売却する
- 分筆して売却する(※土地の場合)
が考えられます。
自分の持分のみを売却する
自分の持分のみの売却は、自由に行うことができます。
しかし、共有物の自由な処分や利用には制約がありますので、売却価格が低くなる傾向がありますし、そもそも買い手がつかない可能性もあります。
そのため、『他の共有者に売却する方法』や『共有持分専門の買取業者に相談する方法』がおすすめです。
共有持分専門の業者であれば、知識が豊富で、その後の対処方法も熟知していますので、一般の不動産業者に売却するよりは、売却価格が上がることが期待できるかもしれません。
共有者全員で売却する
他の共有者が、各共有持分の売却に同意すれば、共有物全体を売却することができます。この場合は、通常の不動産の売買と同じように売却することができます。
共有不動産の売却後に、売却代金を、持分に応じて配分することになります。この場合、全員が、割合に応じた現金を得ることができるだけでなく、共有者全員で一緒に取引を行うことで、予期せぬトラブルを回避できる可能性があります。
分筆して売却する(※土地の場合)
共有持分が土地である場合には、「分筆」して売却する方法もあります。分筆とは、1つの土地を登記簿上で2つ以上の土地に分けることをいいます。
この方法を利用した場合、分筆された土地に対して、それぞれ新しい地番が付けられますので、独立した土地として登記されます。
ただし、分筆するためには、共有者間で、そもそも分筆するのか・どこを境界として分筆するのかの話し合いが必要です。話し合いが進まない場合には、共有物分割請求訴訟などの手段を講じなければならず、簡単なことではありませんので、ご注意ください。
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持分を売却した際の税金
共有名義の不動産を売却して「利益」が出た場合、共有者それぞれが期限内に確定申告を行い、所得税を納める必要があります。これを譲渡所得税といいます。
具体的な計算方法は次のとおりです。
取得費に関連する書類や領収書がなく、実際の取得費が不明な場合は、取得費は譲渡収入金額の5%とみなされてしまい、譲渡所得税が高額になる可能性がありますので、ご注意ください。
次に、不動産の所有期間に応じて、課税譲渡所得金額に一定の税率をかけて計算します。
まとめ
共有不動産全体を、他の共有者の同意なく、単独で売却することはできませんが、共有不動産の「持分」のみを売却することは可能です。
しかし、共有者の1人が共有不動産を売却したり、共有不動産を物理的に変更するためには、共有者全員の同意が必要になるなど様々な制約があるため、持分の売却価格は低くなる傾向があります。
自身の持分の売却価格を上げるためにも、他の共有者に売却することや、共有不動産を全員で売却することを検討することをおすすめします。
また、共有名義の不動産を売却して「利益」が出るような場合には、譲渡所得税についても考える必要があります。
そのため、相続した共有不動産の持分を売却する際には、まずは弁護士などの専門家に相談して、適切なアドバイスを受けましょう。
当事務所は、弁護士歴26年以上の弁護士が在籍しており、多くの専門性を要する不動産の共有に関するご相談を受けてきました。机上の法律知識だけでは得られない、多数の相談や解決実績に裏付けられた実践的なノウハウを蓄積しております。
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