納骨の費用は遺産から出していいの?

Q 私の夫が亡くなりました。私には、2人の息子がいます。お墓については、夫が生前に用意していました。亡くなった夫の納骨費用は、誰が負担することになるのでしょうか。また、納骨費用を、亡くなった夫の遺産から支払うことはできるのでしょうか。


A 相続人全員が、被相続人(亡くなった人)の納骨費用を、遺産の中から負担することについて同意した場合には、納骨費用を遺産から支払うことが可能です。以下で、詳しく解説していきます。

 

「納骨」について

 

 御膳料とは、法事を行う僧侶などが、会食などの食事に参席されなかった場合に、御膳の代わりに出すお布施のことをいいます。したがって、僧侶が会食に参席した場合には、御膳料を支払う必要はないとされています。

 

そもそも納骨とは

 

 納骨とは、火葬された遺骨を、お墓や納骨堂に納めることをいいます。

 方法としては、骨壷ごと納めるほか、遺骨を骨壷から取り出して、布に包んで納める方法もあります。近年では、故人の考えを反映して、樹木葬や海洋散骨が行われることがあります。

 

納骨の時期

 

 納骨の時期については、法律で規定されているわけではありません。納骨のは、宗教や地域の慣習によるところが大きいと言えます。

 例えば、仏式では、お墓の用意ができている場合には、四十九日法要の際に納骨を行うことが一般的となっています。もし、お墓の用意が出来ていないなどの理由で、四十九日法要の際に納骨を行わない場合には、一周忌の際に納骨するのが一般的です。

 

納骨の費用

 

 納骨の費用は、数万円から数十万円と幅があります。納骨の費用に幅が生じる理由は、遺骨をお墓に納めるか、それともお墓以外の納骨堂などに納めるか、あるいは納骨法要を行うかなどによって、費用が大きく異なるからです。

 

  ~お墓に納める場合~  

 

 お墓に納骨する場合には以下の費用が必要となります。なお、以下の費用は、すでにお墓の用意がある場合になります。お墓を新たに用意する場合には、以下の費用に加えて、お墓の建立費用が必要となります。

 

すでにお墓の用意がある場合の費用 金額
お墓の開け閉めなどの作業費 5,000円~3万円
彫刻料 3万円~5万円
卒塔婆料 1枚あたり 3,000円~5,000円
僧侶に支払うお布施 3万円~5万円
お車代 5,000円~1万円

 

納骨法要の後に会食を行ったり、四十九日法要や一周忌法要の際に納骨を行う際には、以下の費用も必要となります。

 

その他の費用 金額
法要の会館の使用料 3万円~5万円
会食費用 1人あたり3,000円~1万円
引き出物(お返し) 1人あたり2,000円~5,000円
お布施(納骨のお布施とは別に必要) 3万円~5万円
御膳料 5,000円~1万円

 

あわせて読みたい『お膳料について』

 

  ~お墓以外に納骨する場合~  

 

 納骨堂・永代供養墓の方法による場合や、樹木葬・海洋散骨については、かかる費用に幅がありますが、一般的に、数十万円の費用が必要と言われています。

 

納骨にかかる費用の負担

 

 納骨の費用の負担について、法律で規定されているわけではありません。

 納骨の費用の負担については、

  ① 葬儀を行なった喪主が負担すべき

  ② 相続人で分担すべき

  ③ 故人の財産から負担すべき

との考えがあります。

 実務上は、葬儀を行なった喪主が負担すべきとの考えが一般的となっています。

 いずれにしても、誰が納骨の費用を負担するかについて、遺族の間で合意しておくことが大切です。

 

遺産から支払う場合の方法

 

 金融機関は、預金者が亡くなったことを知ると,預貯金口座を凍結します。そのため、故人の預貯金口座から、現金の引き出しができなくなります。しかし、その結果、葬儀費用等を用意できないなどの不都合が生じる場合があったため、2019年(令和1年)7月に、預金の仮払い制度ができました。

 預金の仮払い制度では、遺産分割が成立する前であっても、一定の金額であれば、法定相続人が被相続人名義の預貯金を出金できるようになりました。仮払いを受けられる一定の金額は、『相続開始日の預金残高×3分の1×請求する相続人の法定相続分』により計算します。ただし、1つの金融機関から払戻しができるのは150万円までになりますので、注意が必要です。

 あわせて読みたい『葬儀費用等を支払うために、故人の預貯金から仮払いを受ける方法について』

 

遺産から支出した場合

 

相続放棄との関係

 相続人が、被相続人(亡くなった人)の遺産を処分した場合には、被相続人(亡くなった人)の権利義務を相続人が「単純承認」したものとみなされて、相続放棄ができなくなります。(民法921条1号)これを、法定単純承認といいます。

そこで、被相続人(亡くなった人)の預金から葬儀費用を支払った場合には、法定単純承認にあたり、相続放棄が出来なくなるのかが問題となります。

 

 この点については、葬儀代の支出に関してですが、次の裁判例があります。

 

  大阪高決平成14年7月3日 遺産から葬儀費用を支出した事案

【判例】

 『預貯金等の被相続人の財産が残された場合で、相続債務があることがわからないまま、遺族がこれを利用して仏壇や墓石を購入することは自然な行為であり、また、本件において購入した仏壇及び墓石が社会的にみて不相当に高額のものとも断定できない上、それらの購入費用の不足分を遺族が自己負担していることなどからすると遺産の処分に当たるとは断定できない』

 

 裁判例によると、一般的に許容される範囲内での葬儀費用であれば、遺産から支払っても、相続放棄することができると考えられます。また、納骨費用を遺産から支払う場合であっても、相続放棄を行うことができるとも考えられます。

とはいえ、被相続人の預貯金を使うことは、原則として遺産を処分することに当たると考えるべきであり、この裁判例があるからといって、確実に問題ないとは言えないことには注意が必要です。

 

相続税の関係

 

 納骨にかかる費用は、葬儀費用の一環として、遺産総額から控除することができます。

国税庁ホームページ>>

 

 納骨費用が遺産総額から控除されることにより、相続税の節税につながります。

 ただし、葬儀費用として遺産総額から控除できるのは、納骨に直接かかった費用のみになります。一般的には石材店に支払う費用と考えられます。

 もっとも、墓石の彫刻代は、納骨に直接かかった費用とは考えられないため、葬儀費用と認められず、控除することができません。石材店から送付された請求書に、納骨費用と墓石の彫刻代が区別されていない場合がありますので、その内訳について確認する必要があります。

 また、納骨を行った日に法要を行ったとしても、法要でかかったお布施の費用は、納骨に直接かかった費用でないため、葬儀費用に含めることができませんので、注意が必要です。

 

まとめ

 

 被相続人(亡くなった人)の納骨費用を、遺産の中から支払うことについては、相続人の間で話し合いを行い、相続人全員の理解を得ておくことが必要となります。相続人の間で、納骨費用の話し合いを行ったものの、上手くいかず、感情のもつれが生じた場合には、遺産分割協議にも影響が生じる可能性があります。このようなことが起こる前に、相続について熟知した専門家に相談することをおすすめします。

 

当事務所には、弁護士歴26年以上の経験がある弁護士が在籍しております。税理士・司法書士などの専門家とも連携して、相続手続全般について、適切なサポートを提供いたしますので,お悩みの方は是非一度,当事務所にご相談ください。

 

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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