御膳料とは?遺産から出していいの?

Q 私の父が亡くなり、通夜の際に読経をしてくださった僧侶の方へ、会食の代わりに御膳料をお支払いしました。この御膳料は、ひとまず私が支払いましたが、兄弟などの他の相続人に請求できるのでしょうか?


A 御膳料などの葬儀に関する費用は、誰が負担するかについては明確な決まりがないため、相続人が話し合って決めることになります。どうしても相続人の間で話し合いがつかない場合には、喪主が負担するという結論になることが多いです。

 

御膳料(おぜんりょう)とは

 

 御膳料とは、法事を行う僧侶などが、会食などの食事に参席されなかった場合に、御膳の代わりに出すお布施のことをいいます。したがって、僧侶が会食に参席した場合には、御膳料を支払う必要はないとされています。

 

 御膳料は、料理の代わりとして渡すものですので、料理に見合った金額を渡すものとされています。自宅や斎場でのお弁当の場合には5,000円~1万円、料亭やホテルのレストランなどの場合には1万円~2万円程度と言われていますが、会食の一人あたりの金額にプラスアルファしたくらいの金額にするとよいでしょう。

 

 御膳料は、僧侶が帰る際にお渡しするのが一般的です。

 

御膳料は誰が負担するの?

 

 御膳料などの、故人の葬儀や法要に関する費用を、誰が負担するのかについてご説明します。

 御膳料は法要(遺族が故人を偲び、折々に行う追善供養のこと)にかかる費用に該当します。

 故人がお亡くなりになると、一般的には葬儀を行うことになりますが、葬儀費用や法要費用を、全て喪主が支払うとなると負担に感じるかもしれません。相続人が公平に負担すべきだと考えている方もいらっしゃるでしょう。

 しかし、お葬式やお通夜の会場代などの葬儀費用、僧侶に支払う御膳料などを、誰が負担するべきかについては法律に明確な決まりはありません。

 

相続人で合意できる場合

 

 葬儀費用や法要の費用について、相続人の間で合意できる場合には、誰が・どのように葬儀費用を負担するかを柔軟に決めることができます。相続人の頭数で、均等に負担するような内容でもよいですし、相続分に応じて負担するような内容でもよいです。他にも、跡取りである者が半分負担し、残りを兄弟で頭割りするという内容など、ご家族それぞれの背景事情に応じて決めることができます。

 葬儀費用等は、相続財産に関わる問題そのものではありませんので、誰がどのくらい負担するかについては、必ずしも相続人全員で合意しなくても、一部の相続人により合意することもできます。

 

相続人で合意できない場合

 

 葬儀費用や法要の費用について、葬儀費用等を誰が負担するのかと、その割合等について合意できない場合、近年の裁判例では、喪主が負担すべきであるという判断がされることが多いです。しかし、誰が葬儀費用等を負担するべきかについて、法律に明確な決まりはありません。

 この裁判の背景には、『葬儀の内容や費用をどのようにして行うかについては、葬儀の主催者である喪主が決定しているのであるから、その負担も喪主がするべき』という理由があるようです。

 しかしながら、喪主としても、自身は葬儀社と折衝を行うなどの事務手続を負担したり、式の参列者の方に挨拶をするなど、負担のかかる行為をしているのに、その上費用まで全額負担しなければならないとすると、不公平ではないか!と納得できない場合もあるでしょう。

 裁判例(名古屋高判平成24年3月29日)においては、「亡くなった者が予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず、かつ、亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担について合意がない場合においては、追悼儀式に要する費用については同儀式を主宰した者・・・・が負担するものと解するのが相当である」と判示しているものもあります。

 この裁判例によると、故人が、葬儀社との間で、生前に葬儀の予約の契約等をしており、『故人の遺産から葬儀費用等を支出する』との合意がされていた場合には、遺産から葬儀費用を支出することができることになると考えられます。

 

御膳料は相続税の控除対象になる

 

 葬儀の内容にもよりますが,葬儀費用は,数十万円から数百万円かかる場合もあります。故人を送るため,葬儀は必要なものであると考えられているので,葬儀費用は相続税の申告において控除対象となっています。また,御膳料や,僧侶に渡すお車代も相続税の控除対象になっています。御膳料やお車代は,領収書などの裏付け資料をいただけないことも多いかと思います。このような場合は、いつ・誰に(連絡先も含む)・どのような名目で・いくら渡したのかを詳細に記録しておきましょう。

 

葬儀費用等を支払うために,故人の預貯金から仮払いを受ける方法について

 

 故人が亡くなったことが金融機関に伝わると,預貯金口座が凍結され,引出しができなくなってしまいます。その結果,葬儀費用等を用意できないなどの不都合が生じる場合がありました。
 そのような背景から,法律が改正され,2019年(令和1年)7月から,『凍結されてしまった口座から仮払いを受けられる制度』ができました。
 この制度では,遺産分割が成立する前であっても、一定の金額であれば法定相続人が被相続人名義の預貯金を出金できるようになりました。
 仮払いを受けられる金額は,以下の①,②のいずれかの低い金額となります。


  ① 相続開始日の預金残高×3分の1×請求する相続人の法定相続分
  ② 上記の額が150万円を超える場合は150万円

 

 (例)被相続人の預貯金が、福岡銀行に600万円、西日本シティ銀行に1200万円あり、相続  

   人がAさんとBさんの2人の場合、それぞれの法定相続分は1/2となります。

    福岡銀行の場合では、相続人1人につき、預金600万円×1/3(仮払い制度)×1/2 

   (法定相続分)=100万円の仮払いが可能となります。

    西日本シティ銀行の場合では、相続人1人につき、預金1200万円×1/3(仮払い制度)

   ×1/2(法定相続分)=200万円となりますが、仮払い制度の限度額として、1人につき1

   口座ごとに150万円までの制限があるため、仮払いを受けることができる金額は150万円

   となります。

 仮払い金に関する上限額は、各金融機関ごととなります。被相続人が複数の金融機関に預貯金を有していた場合、相続人それぞれが、各金融機関から仮払い金を受け取ることができます。

 

弁護士にできること

 

相続人間の協議を代理する

 

 御膳料を含めた葬儀費用をどのように負担するかは,相続において揉めやすい点の一つです。また,そのような点に争いが生じている場合には,遺産分割方法についてもスムーズに話し合いができない場合があります。
 弁護士にご依頼されると,相続人・相続財産や,背景事情まで調査をし,法令に基づいて主張を整理したうえで協議を進めますので,相続人の間にも納得感が生まれ,協議成立の可能性が高まります。
 また,遺産分割等についてのやりとりを負担に感じる相続人との交渉も,弁護士に依頼することで精神的な負担が軽減されますし,お仕事や家事等,他のことに集中していただけます。

 

遺産分割調停と審判を利用する

 

 どうしても話がまとまらない場合や,そもそも相続人と連絡すら取れないという場合など,協議が成立しない場合には,遺産分割調停や,審判を申し立てることもできます。
 遺産分割調停とは,家庭裁判所の裁判官と調停委員が相続人の間に入り,相続人それぞれから,遺産分割に関する主張や希望を聴いたうえで,相続人全員による合意を試みる手続です。
 中立公平な第三者である調停委員・法律の専門家である裁判官が間に立ってくれるため,話し合いがまとまる可能性が上がります。
 調停を行っても,相続人の間で合意ができない場合には,遺産分割の審判に移行します。遺産分割の審判では,家庭裁判所の裁判官が,諸事情を総合的に考慮し,誰がどの財産を取得するのかを決定します。遺産分割の審判では,法律に基づく主張とそれを裏付ける証拠の提出が重要となります。そのため、ご本人のみで審判に対応するのではなく、弁護士に依頼したほうが満足のいく結果になることが多いといえます。

 

まとめ

 

 御膳料自体は大きな金額にはならないかもしれませんが,御膳料を含めた葬儀費用の負担,遺産分割については,相続人間において争いが生じ,深刻な相続争いに発展する可能性があります。

 相続に関する紛争は,長年の感情的対立などから深刻になる場合もあり,争点が多岐にわたることから紛争が長期になりやすいです。小さな点から感情的なもつれが生じないように注意し,迅速かつ円満な解決のためにも,相続について熟知した経験のある弁護士のサポートのもと,早期に手続きを進めていくことで結果的に費用,時間などを節約することができます。

 

 当事務所には、弁護士歴25年以上の経験がある弁護士が在籍しており,税理士・司法書士などの専門家とも連携して、相続手続全般について、適切なサポートを提供いたしますので,お悩みの方は,是非一度,当事務所にご相談ください。

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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