親(植物状態)の預金口座から介護のために現金を引き出していたが、それを使い込みと指摘されてしまった事案

相談内容

仕事も辞めて,植物状態の親の介護を昼夜問わず付きっきりで行っていた方のご相談でした。

入院費用,紙おむつ代,親の部屋の改造費用等を,親の貯金から支出していたところ,親が亡くなったあと,兄弟の一人が、親の預金から現金を引き出していることについて,横領であるとして損害賠償請求を行ってきました。

※ 色がついている方が関係者の方々です。

争点

親が植物状態であったため、「親から頼まれて」預金を引き出したとは主張できないため,引き出したお金を「親のために使った」ということを証明していく必要がありました。

弁護士の提案内容

弁護士が、介護を行ってきた数年間に及ぶ期間の領収書数百通を整理し,手元で保管していない領収書の再発行依頼をするなどの証拠収集,日用品については合理的な根拠に基づく推定金額の算出などを通じて,「親のために使った」ことを証明していきました。

結果

最終的にはその他の遺産の分割と合わせて,実質的に横領額はないと理解できる内容での和解解決ができました。

弁護士の所感(コメント)

岡本綜合法律事務所が相続対策に家族信託をすすめる理由膨大な作業になりましたが,丁寧に、地道に領収書など、証拠を集めて整理することで、介護の過酷さも理解してもらい、和解で解決できました。

献身的な介護をしていた子が,親の死後に,介護等について協力もしていない他の兄弟から損害賠償を請求されるというのは理不尽ではありますが,同種の問題は今後多く発生することと思われます。

親のための出費とはいえ,自分のお金ではなく、人の預貯金から支出をする以上は,日常的に帳簿・家計簿などをつけ,必要な領収書を整理保管するなど他の人が見ても疑いを抱かないようにしっかりと管理しておくようにしましょう。

付きっきりの介護は,心身ともに疲弊し,それだけで大変で,帳簿を付ける余力はないというのが現実ではありますが,親の死後に更なるトラブルで疲弊することがないように,しっかり管理しましょう。

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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