【2026年最新】自筆証書遺言の 7 つの要件と書き方|不備で無効にしないための注意点 を弁護士が解説

自筆証書遺言とは,読んで字のごとく,全文を自筆で(自分自身で)書いた遺言のことです(民法968条1項)。

 

自筆で長文を書くのは面倒であるという方や,病気・事故などによって視力を失いまたは手が震えるなどのために,自分で字を書くのが難しいという方もおられますが,自筆証書遺言の場合,代筆は許されませんので,必ず自分自身の字で書く必要があります。もし,自分の子供など自分以外の人が代理で記入した場合,その遺言自体が無効となります。

 

遺言の効果が発生するのは,遺言作成者本人の死後ですので,そもそもこの遺言書は遺言作成者とされている人本人が作成したものなのか,また遺言に書かれた内容が遺言作成者本人の真意なのか等について確認することができません。

 

また,遺言書には遺産のことも書かれていますので,遺言者が偽造・変造される可能性もあります。そこで,民法では自筆証書遺言の作成に次のような厳格な要件を定めています。

 

1.自筆証書遺言とは?基本ルールと代筆不可のリスク

○自筆証書遺言の概要(民法968条)

自筆証書遺言とは、遺言者本人が全文・日付・氏名を手書きし、押印して作成する遺言です(民法968条1項)。遺言の効力は本人の死後に生じるため、本人が書いたのか、真意なのかを確かめることができません。また、財産の分け方が書かれているため、偽造や変造の危険もあります。そのため民法は厳格な要件を定めており、一つでも欠けると無効になるおそれがあります。

 

○代理・代筆は一切不可(家族の代筆も無効)


自筆証書遺言は、本人の筆跡であることによって「本人が自分の意思で書いたこと」を確認する仕組みです。そのため、たとえ内容が本人の意思どおりであっても、本人以外が書いた遺言は無効となります。
したがって、家族が代筆してあげた場合には、その自筆証書遺言は無効ということになります。本文は本人が書き、日付や氏名だけを家族が書き添えた場合でも、その部分は自書の要件を満たさないため、せっかく書いた遺言書が無効となってしまいます。
自分で字を書くのが難しい方は、公証人が作成する公正証書遺言を検討しましょう。公正証書遺言であれば、遺言者が署名できない場合でも作成が可能で、入院中や施設入所中の場合は公証人に出張してもらうこともできます。


【関連記事】遺言書を作成する場合,公正証書遺言にする必要はありますか?

 

2.【チェックリスト】自筆証書遺言の 7つの要件と無効を防ぐ注意点

1.全文を自書すること(手書き)

遺言書の本文は、すべて遺言者本人が手書きする必要があります。

そのため、次のような方法で作成した遺言は無効になります。

 

・パソコン、ワープロで作成し印刷したもの
・家族や第三者に代筆してもらったもの
・録音・録画で残したもの(書面として残していないもの)

 

一方、日本語ではなく外国語で書いたものでも、本人の自書であれば有効です。

用紙や筆記具にも法律上の決まりはありませんが、鉛筆や消せるボールペンで書くと、消えてしまったり書き換えられたりするおそれがあります。消えないボールペンや万年筆を使い、長期保存に耐える丈夫な用紙に書くようにしましょう。

 

財産目録の法改正について

遺言書に財産の一覧(財産目録)を添付する場合、不動産や預貯金が多い方にとって、すべてを手書きするのは大きな負担です。そこで法改正により、2019年(平成31年)113日以降に作成する遺言については、財産目録に限り手書きでなくてもよいことになりました(民法9682項)。

具体的には、次のような方法が認められています。

 

・パソコンで作成した財産目録を添付する
・預貯金通帳のコピーを添付する
・不動産の登記事項証明書を添付する

 

ただし、手書きによらない財産目録は、本文とは別の用紙で作成し、目録のすべてのページ(両面に記載がある場合は両面)に署名・押印しなければなりません。署名・押印が漏れたページは無効になるおそれがあるため注意が必要です。

なお、2019112日以前に作成された遺言では、財産目録も手書きでなければ無効となります。古い遺言書が手元にある方はご注意ください。

 

2.正確な日付を自書すること

日付は、複数の遺言の先後や作成時の遺言能力を判断するために必要です。

 

年は元号でも西暦でも構いませんが、「〇年〇月吉日」と書いた遺言は日付が特定できず無効とされています(最高裁昭和54年5月31日判決)。
「〇年〇月」のように日の記載がないものも無効です。

 

日付印も避け、本文と同じ用紙に書き上げた日の日付を書きましょう。

 

3.氏名を自書すること

遺言者が誰であるか、本人が作成したものであることを明らかにするため、氏名の自書が必要です。

 

ペンネームや通称であっても、遺言者本人と特定できれば有効とされる余地はありますが、相続人間で争いになる原因となりますので、戸籍上の氏名をフルネームで書くようにしましょう。

 

同姓同名の方との混同を避けるため、住所や生年月日を併記しておくとより安心です。

 

4.印鑑を押印すること

自筆証書遺言には押印が必要です。
押印がない遺言は、他の要件をすべて満たしていても無効になります。

 

印鑑は実印でも認印でも構いませんが、本人が作成したことをより明確にするため、実印の使用をおすすめします。
印鑑の代わりに指印(拇印)を押した遺言について、有効と認めた判例もあります(最高裁平成元年216日判決)。しかし、遺言者が亡くなった後に、その指印が本当に本人のものかを確かめることは難しく、相続人の間で争いのもとになりがちです。

また、印鑑の代わりに花押を書いた遺言については、押印の要件を満たさないとして無効と判断されています(最高裁平成2863日判決)。
緊急の場合を除き、印鑑できちんと押印するようにしましょう。

 

遺言書が複数枚にわたる場合は、ホチキスなどで綴じて、ページのつなぎ目に契印(割印)をするのが一般的です。契印がなくても、全体が1通の遺言書であると確認できれば有効とされていますが、一部のページが差し替えられたのではないかという疑いを避けるためにも、契印をしておくと安心です。

 

2026年民法改正】今後の押印の要件について(2026年9月14日時点で、具体的な施行日は未定。)

2026年(令和8年)617日に成立した「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)により、自筆証書遺言の押印要件は廃止され、押印は任意とされることになりました。訂正の際の押印も同様に任意となります。

ただし、この改正は公布の日から1年を超えない範囲内で政令で定める日に施行されるもので、本記事執筆時点(20269月)ではまだ施行されていません。現時点で作成する自筆証書遺言には、必ず押印してください。

また、改正後も「全文・日付・氏名の自書」という要件は維持されます。押印が不要になっても、自筆証書遺言をパソコンで作成できるようになるわけではない点にご注意ください。

 

5.加除・訂正のルールを守ること

遺言書の文字を削除・追加・変更する場合は、民法で定められた方法に従う必要があります(民法9683項)。
具体的には、次の手順をすべて満たさなければなりません。

 

(1) 誤った箇所に二重線を引き、元の文字が読める状態のまま、その上に正しい文言を書き入れる
(2) 二重線を引いた箇所に、遺言書に押したものと同じ印鑑を押す
(3) 遺言書の余白や末尾に、どこをどう変更したかを書き、その横に署名する

 

※記載例:本遺言書3行目中、「○○」とあるのを「××」と訂正した。
     岡本太郎

 

また、文字を書き加える場合は「〇行目に『〇〇』の〇字を加入した」、削除する場合は「〇行目中『〇〇』の〇字を削除した」というように、同じ要領で付記と署名をします。

この方式に従っていない訂正は効力が認められず、訂正前の文言のまま遺言の内容が判断されます(遺言全体が直ちに無効になるわけではありません)。

訂正方法は複雑で間違えやすいため、書き損じた場合は、訂正せずに最初から書き直すことを強くおすすめします。

 

6.作成時に「遺言能力」があること

形式面の要件をすべて満たしていても、作成時に遺言者に「遺言能力」がなければ遺言は無効です(民法963条)。

 

遺言能力とは、自分がする遺言の内容とその結果を理解し、判断できる能力のことです。なお、15歳以上であれば遺言をすることができます(民法961条)。
実務上、遺言能力が問題になりやすいのは、遺言者が認知症を患っていたケースです。裁判では、認知症の診断があるかどうかだけでなく、病状、遺言内容の複雑さ、遺言者と相続人・受遺者との関係、作成の動機や経緯などを総合して判断されます。

 

高齢の方や、すでに物忘れなどの症状がある方が遺言を作成する場合は、作成時期に近いタイミングで医師の診断書を取得しておく、公正証書遺言を利用するなど、後日の紛争に備えた対策を講じておくことが大切です。

 

7.1人で作成すること(共同遺言の禁止

「夫婦で一緒に遺言を作りたい」というご相談をいただくことがありますが、民法975条は、2人以上の者が同一の証書で遺言をすることを禁止しています。
そのため、1枚の用紙に夫婦連名で書いた遺言は無効となります。

 

夫婦それぞれが遺言を残したい場合は、必ず別々の用紙に、各自が作成してください。

 

3. 自筆証書遺言に関するよくある質問(FAQ)

Q1.パソコンで作成した自筆証書遺言は無効になりますか?

A2.本文をパソコンで作成した場合は無効です。

現行法では、自筆証書遺言のうち手書きでなくてもよいのは財産目録だけで、本文は全文を自書する必要があります。

なお、2026617日に成立した改正民法により、パソコンやスマートフォンで作成した遺言を法務局に保管してもらう新しい方式「保管証書遺言」(いわゆるデジタル遺言)が創設されました。

手書きが難しい方は、現時点では公正証書遺言の利用をご検討ください。

 

Q2.自筆証書遺言に書いてある内容が間違っていた場合、訂正できますか?

A2.訂正は可能ですが、書き直す方が安全です。

誤字などを訂正する場合は、前述の「5. 加除・訂正のルール」に従う必要があります。方式を守らない訂正は効力が認められません。

また、財産の分け方そのものを変えたい場合は、遺言はいつでも撤回・変更することができます(1022条)。新しい日付で遺言を書き直せば、前の遺言と矛盾する部分は新しい遺言によって撤回したものとみなされます(1023条)。後の相続人らの混乱を防ぐため、古い遺言書は破棄するか、「令和〇年〇月〇日付け遺言をすべて撤回する」と明記しておくとよいでしょう。

 

Q3.自筆証書遺言のチェックだけを弁護士に頼むことはできますか?

A3.可能です。

ご自身で作成した遺言書(または下書き)を弁護士が確認し、形式の不備がないかをチェックすることができます。弁護士は形式面だけでなく、次のような内容面についてもアドバイスできます。

 

・財産が正確に特定されているか
・遺留分を侵害して、相続人間のトラブルにならないか
・相続させる人が先に亡くなった場合の定め(予備的遺言)があるか
・遺言執行者を指定しておくべきか

 

弊事務所でもすでに作成された自筆証書遺言が適した内容になっているか、無料で診断しております。お気軽にお問い合わせください。

 

【関連記事】遺言執行者は専門家に頼んだ方が良いのは何故ですか?

 

4.自筆証書遺言でよくある「不備・トラブル」の具体例3選

(1)不動産や財産の特定が曖昧

「自宅を長男に相続させる」「預金は長女に」といった、財産の特定が不十分な遺言です。

「自宅」とだけ書かれていると、どの土地・建物を指すのかが登記上明らかにならず、名義変更の手続きがスムーズに進まないおそれがあります。自宅の敷地が複数の筆に分かれている場合や、私道の持分がある場合などは、一部の不動産が遺言の対象から漏れてしまうこともあります。

不動産は登記事項証明書(登記簿謄本)の記載どおり、土地であれば「所在・地番・地目・地積」、建物であれば「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」を記載しましょう。預貯金も「〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇」のように特定して書くのが基本です。

記載漏れに備えて、「その他一切の財産は〇〇に相続させる」という条項を入れておくことも有効です。

 

(2)保管中の紛失・変造・破棄、または死後に見つけてもらえない

自宅で保管している自筆証書遺言には、紛失したり、火災などで失われたりするリスクがあります。また、遺言の内容に不満を持つ相続人によって、隠されたり、書き換えられたり、破棄されたりする危険もあります(なお、遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した相続人は、相続人となる資格を失います〔民法8915号〕)。

さらに、大切にしまい込みすぎた結果、遺言者の死後に誰にも発見されず、遺産分割協議が終わった後で見つかるというケースも少なくありません。

こうしたリスクを減らすには、法務局の自筆証書遺言書保管制度の利用がおすすめです。この制度を利用すると、紛失・改ざん・破棄の心配がないほか、以下のようなメリットがあります。

 

・家庭裁判所での検認手続が不要になる
・保管申請時に、日付や署名・押印の有無といった外形的な方式のチェックを受けられる
・遺言者の死亡後、指定した人に遺言書が保管されている旨の通知を届けてもらえる

 

ただし、法務局は遺言の内容が有効かどうか、内容が適切かどうかまでは確認してくれません。内容面の不安がある場合は、保管前に弁護士にご相談ください。

 

【関連記事】【相続法改正】自筆証書遺言の保管制度の創設

 

(3)内容の解釈を巡って相続人同士で訴訟に発展する

遺言が形式的に有効でも、書かれた内容が曖昧だと、その解釈をめぐって相続人同士が争うことになります。

また、遺言能力や自書であることに疑いがあるとして、相続人の一人が遺言無効確認訴訟を起こすケースもあります。さらに、特定の相続人に財産を集中させた結果、他の相続人の遺留分を侵害し、遺留分侵害額請求をめぐる紛争に発展することも少なくありません。

 

【関連記事】遺留分・遺留分侵害額請求について

 

相続トラブルを防ぐために書いたはずの遺言が、かえって家族の対立を招いてしまっては本末転倒です。しっかりと誰に何を「相続させる」「遺贈する」のか記載するとともに、遺言を書いた理由や家族への想いを「付言事項」として添えておくと、相続人の納得を得やすくなります。

 

5.弁護士へ相談するメリット

自筆証書遺言は一人で作成できますが、弁護士に相談することで次のようなメリットがあります。

 

・形式不備による無効を防げる

7つの要件を満たしているか、財産目録の署名・押印が漏れていないかなど、専門家の目で確認できます。

 

・トラブルになりにくい内容を設計できる

遺留分への配慮、予備的遺言、遺言執行者の指定、付言事項の書き方など、相続人間の紛争を未然に防ぐための内容をご提案できます。

 

・中立な立場で遺言の内容を実現してもらえる

弁護士を遺言執行者に指定すれば、預貯金の解約や不動産の名義変更などの手続きを任せられます。どの相続人にも肩入れしない中立な立場だからこそ、「勝手に進められた」という不満が生まれにくく、手続きが円滑に進みます。

 

6.まずは一度岡本綜合法律事務所へご相談ください

遺言書は、遺言者の思いを大切なご家族に伝えることのできる方法の一つです。だからこそ、せっかく書いた遺言書が形式の不備で無効になってしまったり、その内容が原因で相続人同士が揉めてしまったりすることは、何としても防ぎたいものです。
また、「遺言書を書いてみたいけれど、何から始めればよいか分からない」「自分の場合は自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらがよいのだろう」と迷われている方も多いのではないでしょうか。すでにご自身で書かれた遺言書が有効かどうか、心配な方もいらっしゃるかと思います。

 

弊事務所では、遺言者ご本人のお気持ちやご家族の状況を丁寧にお伺いしたうえで、専門家の視点から遺言書づくりをお手伝いします。どんな小さなことでも構いませんので、まずは岡本綜合法律事務所へご相談ください。

 

また、弊所では、弁護士歴29年以上の豊富な実績と、税理士及び家族信託専門士の資格を保有している弁護士が在籍しておりますので、豊富な経験に裏打ちされたアドバイスを行うことができます。弊所では、相続や遺産分割が泥沼の紛争に発展する前に、早い段階でご相談にお越しいただきたいという思いから、お気軽にご相談いただけるように、相続相談の初回相談料を60分無料としております。
お早めに弁護士にご相談いただくことで、相続や遺産分割問題の早期の解決に繋がります。

 

無料相談のお申し込みは、お電話・メール・LINEで受け付けております。お気軽にお申込みください。

 

弁護士による相続・生前対策の相談実施中!

岡本綜合法律事務所では、初回相談は無料となっております。

「遺産分割でトラブルになってしまった」

「不安なので相続手続きをおまかせしたい」

「子どもを困らせないために相続対策をしたい」

「相続税対策として、生前贈与を考えている」

「認知症対策に家族信託を組みたい」

などのニーズに、弁護士歴25年の豊富な実績と、税理士及び家族信託専門士を保有している弁護士がお応えいたします。

お気軽にご相談ください。

ご相談は無料です。お問い合わせ・ご予約はお気軽にどうぞ 当日面談予約受付中! 092-718-1580 相談受付時間 平日9:00~18:00(土日祝応相談)

ホームページからの相談予約はこちら

LINEでも相談予約いただけます!

LINEで無料相談

 

当事務所の特徴

1、天神地下街「西1」出口徒歩1分の好アクセス

2、税理士・相続診断士・宅地建物取引士(宅建士)の資格所持でワンストップサービス

3、相続相談実績300件以上

4、弁護士歴25年の確かな実績

5、初回相談は無料

詳しくはこちらから>>>

遺産相続のメニュー

 

相続対策のメニュー

各種Q&A

 

この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

ご相談は無料です。お問い合わせ・ご予約はお気軽にどうぞ 当日面談予約受付中! 092-718-1580 相談受付時間 平日9:00~18:00(土日祝応相談)

ホームページからの相談予約はこちら