遺留分侵害額請求を行って相手方と交渉する際に、陳述書等を提出して、当初の金額よりも高い金額を獲得できた事例

相談内容

 

 依頼者の母が亡くなりました。父は既に亡くなっていたため、法定相続人は、依頼者を含む子ども3人でした。

 

 被相続人(亡くなった母)は、『長女に全財産を相続させる。』という内容の遺言書を作成していました。

 

 また、被相続人(亡くなった母)は、生前に長女と同居していたため、長女が被相続人(亡くなった母)の通帳の管理を行っていました。しかし、確認したところ、被相続人(亡くなった母)の通帳から、複数回にわたって高額の出金が行われていたとのことです。

 

 依頼者が、長女に話し合いを求めたところ、長女は弁護士に依頼されました。そのため、依頼者も同じように、弁護士へ依頼する必要があると考え、弊事務所へご相談いただきました。

弁護士の活動内容

 

本件の流れ

 

 被相続人が作成した遺言書の内容は、『長女に全財産を相続させる。』というものだったため、依頼者の遺留分が侵害されていることは明らかでした。そこで、長女に対して、遺留分侵害額請求を行いました。

 

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 次に、被相続人の相続財産の調査を行いました。

 

 被相続人名義の口座について、取引履歴(※全ての入出金履歴を見ることができる書類)を確認し、高額の出金がされた日や、その合計額を算出しました。

 

 さらに、被相続人の口座から出金された金銭を、長女が受け取っていた場合は、贈与や不当利得の可能性があります。

 

 そのため、高額出金の合計額を、遺留分算定の基礎財産に含めて計算し、遺留分侵害額を相手方(長女)へ請求しました。

 

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交渉の経緯

 

 ➡【当方からの遺留分侵害額請求】

 

 ➡【相手方(長女)】

  「被相続人の口座からの高額出金は、被相続人のためである。」と主張し、裏付ける資料を一部提出  

 しました。そのうえで、出金に問題はない旨の反論を行いました。

 

  加えて、「被相続人から当方の依頼者へ、200万円の送金がされている。」と主張し、その送金が 

 特別受益にあたると主張しました。

 

 ➡【当方】

  小職らは、相手方(長女)が提出した資料を検討しました。そして、どの項目が被相続人のための費

 用に使われたと認められ、どの項目が認められないのか、詳細に分類して反論しました。

 

  また、相手方(長女)からなされた「特別受益である。」との主張については、被相続人から依頼者

 (当方)に対する贈与ではなく、被相続人の孫(※依頼者の息子)に対する贈与であると主張しまし

 た。

 

結果

 

 最終的な小職らの反論について、相手方は、「裁判外の和解ができるのであれば、(当方の)主張に異論はない。」とのことでした。

 

 なお、相手方からなされた「特別受益である。」との主張については、実際に贈与を受けた依頼者の息子が『陳述書(※主張したいことや事実を伝えるための書面)』を作成して、相手方に提出しました。

 

 初めは相手方も、「依頼者の口座に送金されている以上、その息子に対する贈与とは認められない。」と判断していました。しかし、陳述書の内容に感じるところもあったのか、当初、相手方が支払提示してきた金額よりも多い額で、【相手方が依頼者に対し、300万円を支払う】として、裁判外の和解を成立させることができました。

 

弁護士の所感(コメント)

 

 本件は、裁判外の和解が成立したことから、遺留分侵害額請求の裁判を行うよりも早く解決することができました。また、依頼者の息子に対し、陳述書の作成をお願いし、相手方と粘り強く交渉した結果、当初、相手方が支払提示した和解金よりも、多くの金額を獲得することができた事例です。

 

 被相続人(亡くなった母)から依頼者へ送金されていた200万円については、

 ・依頼者本人の口座に送金されていたこと

 ・被相続人の通帳に手書きのメモがあったこと

 ・エンディングノートに「○○(依頼者)へ送金」と記載されていたこと

の理由から、裁判となった場合には、依頼者の息子ではなく、依頼者本人への贈与と認定される可能性が大きかったと考えられます。

 

 しかし、「息子のための費用であった」ことを示す陳述書を、息子本人に作成してもらうことで、相手方(長女)にも贈与の目的を理解してもらうことができ、和解金の増額に繋がったと考えられます。

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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