遺言代用信託を活用して節税対策

遺言代用信託とは?

遺言代用信託とは,「遺言」と同様に財産の承継先等を指定するという機能を持たせつつ,契約により信託を設定する仕組をいいます。委託者の生前中は自らを受益者として,委託者が信頼できる法人または個人(受託者)に対して財産(不動産や株式等)を移転して管理・運用等を委ね,委託者の死後は指定したもの(特定の親族や第三者など)に信託の受益権を承継させる契約をいいます。

 

遺言代用信託のメリット

遺言代用信託は,生前の契約であり,遺言とは違いますが,特定の財産について死後の承継者を決めておくことで,遺言と同様の効果があります。そのため,遺言代用信託の対象となる財産については,遺産分割協議の必要がなく,信託契約で指定された受益者が受益権という形で遺産を相続でき,配偶者税額軽減の特例や小規模宅地等の評価減の特例などの相続税節税の制度が利用できます。

この点で,遺産分割協議が成立しないばかりに,相続税申告にあたって,各種の特例を利用できないという事態を避けることができるのです。 

なお,遺言は,公正証書で作成したものであっても,いつでも撤回できますので,節税対策も考慮して家族で話し合って遺言書の内容を決めたとしても,遺言書作成者の一存で,これを撤回したり,後日,別の内容の遺言を作成することなども可能であり,これがトラブルに発展することもあります。

一方で,信託の場合は,委託者単独では,信託契約の内容を変更できない制度設計にすることもできますので,この点は遺言代用信託のメリットといえるでしょう。

このように残された家族(相続人)が各種の税額軽減のための特例を利用できる要件に該当する可能性がある場合や遺産分割協議でトラブルが生じる可能性が高い場合などには,遺言の作成とあわせて,遺言代用信託の活用も検討されてはいかがでしょうか。

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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