親子間の金銭援助にも、贈与税はかかりますか?
目次
Q 私には、息子と娘がいます。
息子は就職し、結婚もしており、そろそろマイホームを購入するようです。娘は近いうちに結婚する
予定で、出産も控えています。
私は、息子に対して不動産購入費用を、娘の結婚・出産費用に対して資金援助をしたいと思っていま
す。
親子であっても、金額によっては贈与税がかかってしまうのでしょうか?
A 親子であっても、一定額を超える贈与に対しては、贈与税が発生します。
以下では、どのような場合に贈与税が発生するのか?贈与税を減らすことができる方法は?など、詳しく説明します。
贈与とは?
「贈与」とは、贈与者(財産をあげる方)が、無償で与えることの意思表示をし、受贈者(財産をもらう方)が、応じることによって成立する契約です。
贈与には、「負担付贈与」といい、「財産をあげる代わりに、老後の面倒をみてね。」と約束した場合のように、贈与を受ける側が、一定の義務を負う贈与の種類もあります。
このように、贈与は契約であり、あげる人ともらう人の意思の合致によって生じるものです。
正式に贈与の契約を締結していなくても、贈与と同じような経済的利益が生じた場合は、贈与税が発生する可能性があります。
贈与税について詳しく説明します!
贈与税における基礎控除
贈与税には「基礎控除」があります。年間110万円までの贈与であれば、贈与税はかかりません。
この「基礎控除」は、受贈者(財産をもらう方)を基準に考えます。つまり、誰からの贈与かは関係なく、受贈者(財産をもらう方)が、年間に受けた贈与額が110万円以下であれば、贈与額は非課税となり、110万円を超えると贈与額が発生するということです。
~詳しくはこちら~
【例】
父と母からそれぞれ100万円ずつ贈与を受け、年間合計200万円を受け取った場合
➡受贈者(財産をもらう方)が、受け取った金額は、基礎控除である110万円を超えているた
め、差額の90万円に対して贈与税が課されます。
贈与税がかからないもの
【生活費や教育費】
親は、子を扶養する義務を負っています。そのため、扶養義務を負っている方(親)が、生活費・
教育費に充てるために贈与した財産のうち、「通常必要と認められるもの」については、贈与税の課税
対象となりません。
ここでの「通常必要と認められるもの」は、子どもの需要・親の資力・その他一切の事情を勘案し
て、社会通念上適当と認められる範囲の財産です。
例えば、一人暮らしをしている大学生のために、親が毎月10万円程度を仕送りすることは、社会通
念上適当と言えます。その結果、年間の贈与合計額が110万円を超えたとしても、非課税となりま
す。
これに対して、毎月50万円~100万円を超えるような贈与がされると、高額であることから社会
通念上適当とは言えず、贈与税が課税される可能性があります。
注意点⚠
一見、「贈与」に見えない場合でも、贈与と同様の経済的状態が発生する場合は、贈与税が発生することがありますので、ご注意ください。
著しく安い金額で財産を譲り受ける場合
財産を、市場価格よりも著しく安い金額で買い受けると、その差額についての贈与があったと判断さ
れ、贈与税がかかる可能性があります。
金銭の貸付についての免除を受けた場合
親子間では、住宅購入のときや、生活が行き詰まっているときなどに、子どもに対してお金を貸し付
けることもあります。
このように、親が子どもに対して貸し付けた金銭について、「返さなくてもいいよ。」とすることは
珍しくないでしょう。これを法的に、「免除」といいます。
しかし、この「免除」は、贈与があったとみなされてしまうので、ご注意ください。金銭の免除を受
ければ、タダでもらったことと同じ利益状態になるからです。
生命保険金を受け取った場合
親が保険料を納付していた生命保険について、満期・解約などの原因で生命保険金が発生した場合、
それを子どもが受け取ってしまうと、贈与とみなされて、贈与税の対象となります。
ただし、ケガや病気などを理由に受け取った生命保険金は、対象にはなりません。
なお、親の死亡によって受け取った生命保険金は、「贈与税」ではなく、「相続税」の対象となりま
す。
親子間で利用できる贈与税の特例
基礎控除
まずは、前記でも説明した基礎控除です。年間110万円以下であれば、贈与税はかかりません。
~詳しくはこちら~
相続時精算課税制度
「相続時精算課税制度」とは、祖父母や親が、子などに贈与した財産について、一定の金額までであれば、非課税とすることができる制度です。しかし、このとき非課税となった額は、相続が発生した際に、相続税として精算されます。
「相続時精算課税制度」を選択すると、計2500万円までの財産については、贈与税を非課税とすることができます。
令和5年(2023年)の改正により、年間110万円の基礎控除が新たに設けられたので、令和6年(2024年)以降については、年間110万円以内であれば、相続税の申告・納付義務がありません。
したがって、「相続時精算課税制度」を選択して贈与した財産であり、かつ、年110万円の基礎控除の範囲を超える部分の金額については、相続時に相続税の対象財産に加算されることになります。
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なお、税務署は、受贈者(財産をもらう方)が、どの制度を選択したのか分かりません。したがって、自身が「相続時精算課税制度」を選択した場合は、きちんと税務署に届け出なければなりません。
贈与税の申告期限は、贈与を受けた年の翌年の2月1日~3月15日までです。「相続時精算課税制度」を選択し、贈与税を納める必要がない場合でも、贈与税の申告は行わなければなりませんので、ご注意ください。
住宅購入・教育・結婚・子育て
住宅購入・教育・結婚・子育てに関する贈与にも特例があり、非課税の範囲内で高額の贈与を行うことが可能になります。
★住宅取得等資金の贈与★
自宅の新築や増改築に充てた費用について、親から子どもへ資金援助を行う場合、最大1000万
円が非課税となる制度です。
なお、耐震・省エネ・バリアフリー住宅 など、新築や増改築をする住宅用の家屋の性質ごとに、
非課税の金額が変わります。
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★教育資金の贈与★
親や祖父母から、30歳未満の子や孫に対して、教育資金を贈与する場合、受贈者一人あたり最大
1500万円が非課税となる制度です。
なお、塾や習い事(例:スポーツ、ピアノ)など、学校以外の教育にかかる支払いについては、5
00万円が限度となります。
この特例を受けるためには、教育資金の贈与を受ける方が、贈与専用の口座を開設する必要があり
ます。そして、金融機関を介して、非課税の申告書を提出します。
親や祖父母は、その専用口座に一括で入金します。そして受贈者(受け取った方)は、教育資金の
領収書などを金融機関に提出することで、非課税の手続きができます。
教育資金の一括贈与の特例は、令和8年(2026年)3月31日までの適用となりますので、
ご注意ください。
★結婚・子育て資金の贈与★
親や祖父母から、結婚・出産・子育て資金のために贈与を受けた場合、最大1000万円(※結婚
関連については300万円)が非課税となる制度です。
この特例を受けるためには、資金の贈与を受ける方が、贈与専用の口座を開設する必要がありま
す。そして、資金を支払った際には、領収書の提出が必要となります。
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★ 生前贈与加算の加算の対象とならない贈与税の特例制度について
まとめ
今回の内容は、以下のとおりです。
① 正式に贈与の契約を締結していなくても、贈与と同じような経済的利益が生じた場合は、贈与税
が発生する可能性があります。
② 贈与税には「基礎控除」があり、年間110万円までの贈与であれば、贈与税はかかりません。
③ 「相続時精算課税制度」とは、祖父母や親が、子などに贈与した財産について、一定の金額ま
でであれば、非課税とすることができる制度です。しかし、このとき非課税となった額は、相続が
発生した際に、相続税として精算されます。
④ その他、住宅取得資金や教育資金など、贈与した資金の目的によって、贈与税が一部非課税とな
る制度があります。
これまでに説明したように、贈与税は、典型的な場面以外にも発生することがあり、安易に考えていると、無申告加算税が課される可能性があります。
また、適切な手続きを行うことで、節税することができ、資産を減らさないようにすることができます。
贈与税を多く払い過ぎないようにするためにも、税務・法務において、専門家の助力を得られることをおすすめします。
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