遺言書があっても遺留分を請求できますか?
目次
Q 私(Aさん)の両親は、私が中学生の頃に離婚しました。私(Aさん)は母に引き取られ、父とは長
年連絡を取っていませんでした。なお、離婚後、父は別の女性と再婚したようです。
先日、父の再婚相手の女性から、父が亡くなったことと、「すべての財産を再婚相手に相続させる」
という内容の遺言書を作成していたことを聞かされました。
私(Aさん)は、父の遺産を取得することはできないのでしょうか?父の遺産を取得する方法があれ
ば教えてください。
A 被相続人(亡くなられた方)の兄弟姉妹以外の相続人に最低限保障される『遺留分』という権利によ
って、法定相続分の2分の1=遺産の4分の1を取得することができます。
被相続人(亡くなった方)の子であるAさんには、『遺留分』という権利があります。『遺留分』と
は、被相続人(亡くなった方)の兄弟姉妹以外の相続人に最低限保障される遺産取得分のことで、被相
続人の意思によっても奪うことができません。したがって、遺言書が作成されていても、遺留分を請求
することができます。
以下で、遺留分について詳しく解説します。
遺留分について
遺留分とは?
『遺留分』とは、被相続人(亡くなった方)の兄弟姉妹以外の相続人に、最低限保障される遺産取得分のことです。
遺留分は、被相続人(亡くなった方)の意思によっても奪うことはできません。
そのため、被相続人(亡くなった方)が、「○○にすべての財産を与える」という内容の遺言書を作成していても、遺留分の権利を有する相続人は、財産を取得した方(本件のQ&Aでは後妻)に対して、侵害された遺留分の金額を請求することができます。
遺留分の割合はどれくらいになる?
★直系尊属(亡くなった方の両親など)のみが相続人である場合
=法定相続分の3分の1
★直系尊属(亡くなった方の両親など)以外が相続人のひとりである場合
=法定相続分の2分の1
となります。
遺留分の計算方法とは?
遺留分を算定するためには、まず初めに『基礎財産』を計算する必要があります。遺留分は、その基礎財産に遺留分割合をかけて計算します。
※「積極財産の額」とは、不動産や預金などのプラスの財産をいい、借金やローンなどのマイナスの財産は含まれません。
「生前贈与の額」は、相続開始(被相続人が亡くなった日)前の1年間に行われた贈与のすべてが含まれます。
「被相続人の債務の額」は、被相続人が亡くなる前に生じた債務をいいます。そのため、葬儀代などは、原則として相続債務に含まれません。
相続人のひとりに対して行われた贈与のうち、「婚姻若しくは養子縁組のため、若しくは生計の資本」としてなされたものについては、相続開始(被相続人が亡くなった日)前の10年間にされたものが対象になりますので、注意が必要です。
~関連記事(遺留分の計算方法について)~
★父が作成した遺言書で、姉8割・私2割の遺産分配となっていました。遺留分は請求できますか?
相続財産調査をしっかりと行いましょう!
遺留分を計算するためには、被相続人(亡くなった方)が、相続開始時点で有していた財産を把握する必要がありますので、『相続財産調査』を行いましょう。
【相続財産調査の方法】
① 不動産
不動産の場所が判明している場合には、法務局において、「全部事項証明書(登記簿謄本)」を取得
することで、不動産の名義を確認することができます。
② 預貯金・有価証券・投資信託
金融機関、支店、口座番号が判明している場合、各金融機関に対して、被相続人(亡くなった方)の
残高証明書や取引履歴を取り寄せることで、確認することができます。
なお、被相続人(亡くなった方)が生前に贈与した財産も、遺留分の対象となるため、取引履歴などをしっかりと確認して、贈与の事実について把握することが必要です。
~幣事務所の相続調査~
★被相続人の財産がまったく分かりません。財産調査をお願いすることは可能でしょうか?
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遺留分が侵害された場合、どうすればいいの?
遺留分侵害額請求の意思表示
遺留分を侵害された方は、「遺留分侵害額請求」の意思表示を行うことで、金銭を請求することができます。
「遺留分侵害額請求」を行う場合、相手方に手紙やメールなどを送る方法が考えられます。手紙を送る際は、内容証明郵便に「配達証明書」を付する方法をおすすめします。
相続人同士の話し合いでは合意できない場合、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に「遺留分侵害額の請求調停」を申し立てます。
調停では、2名の調停委員が間に入って話し合いを進めます。もっとも、調停が成立するためには、当事者双方が合意することが必要になります。
当事者の一方が合意しない場合、調停ではなく、管轄の地方裁判所に『遺留分侵害請求訴訟』を提起することとなります。
訴訟では、裁判所が当事者の主張を聞いた上で、判決を下します。
そのため、ご自身の主張を裁判所に認めてもらうには、法的に正しい主張を行い、それを根拠づける資料の提出が必要となります。
~遺留分侵害額請求についてのまとめ記事~
遺留分侵害額請求の時効
遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者(遺留分を請求できる方)が、「相続開始と遺留分侵害の事実を知ってから1年以内」に遺留分を請求する必要があります。請求の方法は特に決まりはありませんが、証拠を残すために、内容証明郵便に「配達証明書」を付する方法で行うようにしましょう。
遺留分権利者(遺留分を請求できる方)が、相続開始や遺留分侵害の事実を知らなくても、「相続開始から10年」を経過すると、遺留分侵害請求権を行使することができなくなりますので、ご注意ください。
【ちなみに・・・】
遺留分侵害額請求の意思表示を行い、時効を中断すると、ひとまず安心ですが、いつまでも放置していてはいけません。
遺留分侵害額請求の意思表示をすると、相手方に対して「遺留分侵害額請求権」(=お金を払いなさいという権利(金銭債権といいます。))が具体化します。
「金銭債権」について、民法は時効の定めを設けており、5年間行使しなければ、時効によって消滅してしまいます。(民法166条)
そのため、遺留分侵害額請求の意思表示をしても、「5年以内」に交渉が成立せず、時効によって権利が消滅してしまいそうな場合には、金銭の支払いを求める訴訟を提起することによって、時効の完成を先延ばしにすることが必要になります。
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まとめ
被相続人(亡くなった方)の兄弟姉妹以外の相続人には、『遺留分』という権利があります。遺留分は、被相続人の意思によっても奪うことができない権利ですので、しっかりと財産調査を行った上で、証拠を残す方法で請求するようにしましょう。
なお、専門家である弁護士に依頼することで、相続財産の調査にかかる手間を省くことができ、正確な方法で請求することができます。
遺留分侵害額の請求を行ったあと、当事者間で話し合いがまとまらない場合には、『遺留分侵害額請求訴訟』を行うことになります。訴訟では、裁判所に対して、自身の主張を説得的に行う必要がありますので、専門家である弁護士に依頼することをおすすめします。
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