自筆証書遺言と公正証書遺言で法的な効果の違いはありますか?
Q.遺言を作成しようと思うのですが,自筆証書遺言と公正証書遺言で法的な効果の違いはありますか?公証役場で作成するので,公正証書遺言の方が,強力な効果があるのでしょうか?
A.「自筆証書遺言」は,遺言者が,その全文,日付及び氏名を自書し,これに押印するという方法により作成します(民法968条)。「自筆証書遺言」の場合,遺言書の作成自体に費用が掛からず,内容も秘密にできるため,手軽に作成することができるというメリットはあります。
しかし,その裏返しとして,遺言者の死後に遺言書が発見されないおそれがある上,偽造,変造,隠匿されるリスク(偽造,変造されたのではないかと相続人等の間で疑われるリスクを含みます。)があるというデメリットもあります。
また,内容を秘密にできるため,他人に相談せずに作成した結果,方式に不備があり遺言書が無効とされてしまう,ということもあります。
なお,「自筆証書遺言」は,家庭裁判所の検認の手続(民法1004条1項)を経る必要があります。この「検認」の手続を,家庭裁判所が遺言書の有効・無効を判断してくれる手続と誤解されてある方がいらっしゃいますが,そもそも家庭裁判所の「検認」の手続は相続が開始した後の手続である上(同項),遺言書の状態を確定しその現状を明確にする手続であって,遺言書の有効・無効を判断する手続ではありません(大決大正4年1月16日民録21・8)。ご注意ください。
一方,「公正証書遺言」は,証人が2人以上立ち会った上で,遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し,公証人がこの口授を筆記し,これを遺言者及び証人に読み聞かせ,又は閲覧させ,遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認後,各自これに署名押印し,公証人がその証書は民法に定める方式に従って作ったものである旨を付記して,これに署名押印するという方法により作成します(民法969条)。
このように公証人が関与して作成され,遺言書の原本も公証人役場で保管するため変造のおそれがなく,無効とされることはほとんどない,というメリットがあります。また、家庭裁判所での検認の手続を経る必要がない,というメリットもあります。デメリットとしては,公正証書作成のための費用が掛かることと,証人の立会いを要するため遺言の内容を秘密にできない,ということが挙げられます。
このように,「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」は作成方法も,メリット・デメリットも異なります。公正証書遺言は作成のために手数料が必要になりますし,証人2名以上の立ち会いが必要などが,作成までの工数も多くなりますので,効力が強いと思われるかもしれませんが,「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」とでは,遺言の法的な効力としては,特に違いはありません。要件を充足している「自筆証書遺言」であれば,「公正証書遺言」と同じ効力がありますので,ご安心ください。
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