子どもがいない夫婦の相続|義理の兄弟に財産を渡さない2つの方法と遺言書の書き方を弁護士が解説

Q. 子どもがいない夫婦が、遺産を兄弟姉妹に渡したくない場合どうすればよいでしょうか?

A.「すべての財産を配偶者に相続させる」という内容の遺言書を作成すれば、兄弟姉妹に財産を一切渡さずに済みます。

 

💡 1分でわかる!本記事の結論・解説ポイント

  • 兄弟姉妹には「遺留分」がないため、遺言書があれば財産を一切渡さずに済みます。
  • 遺言書を残すことで、残された配偶者が疎遠な義理の兄弟姉妹と接触・交渉する負担を大幅に軽減できます。
  • 夫婦が選ぶべき遺言書には「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があり、各特徴やリスクを理解することが重要です。
  • 遺言書以外に「生前贈与」という選択肢もありますが、税金面で慎重な検討が必要です。

 

1.なぜ遺言書があれば兄弟に財産を渡さなくてよいのか?

(1)兄弟姉妹には遺留分がない

 

子どもがいない夫婦において、どちらか一方が亡くなった場合の法定相続人は、祖父母と両親が他界している場合、「配偶者」と「亡くなった方の兄弟姉妹(義理の兄弟姉妹)」になります(民法8891項、890条)。 この場合の法定相続分は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1(兄弟姉妹が複数いる場合はその中で等分)となります。
しかし、「すべての財産を妻(夫)に相続させる」という遺言書を作成しておくことで、兄弟に財産を一切渡さないようにすることができます。

 

なぜ遺言書があれば、法定相続人であるはずの兄弟姉妹に財産を渡さなくてよいのでしょうか。その理由は、兄弟姉妹には「遺留分」が認められていないためです。

 

遺留分(いりゅうぶん)とは、兄弟姉妹以外の相続人(配偶者や子ども、親など)に最低限保障されている「遺産の取り分」のことで、亡くなった本人の意思(遺言書の内容など)によっても奪うことはできません。 しかし、相続人が「兄弟姉妹」である場合にはこの遺留分という権利が認められていないため、遺言書で「配偶者に全ての財産を相続させる」と定めておけばその内容が完全に優先され、兄弟姉妹から遺産分割協議の申出や遺留分侵害額請求をされる心配はありません。

 

~遺留分について詳しくはこちら~ 

【詳しくはこちら】  [★遺留分・遺留分侵害額請求(※内部リンク)]

【詳しくはこちら】  [★遺留分侵害額請求についての記事(※内部リンク)]

 

 

(2)残された配偶者の負担・トラブルを大幅に軽減できる

 

遺言書がない場合、遺産をどのように分けるかを決めるために、相続人全員で「遺産分割協議」を行わなければなりません。
普段から疎遠な義理の兄弟姉妹と、遺産をめぐって直接連絡を取り合い、話し合いの場を持つことは、大切な家族を亡くしたばかりの配偶者にとって、精神的な負担が極めて大きいものとなります。また、意見がまとまらず、思わぬ相続トラブルに発展するケースも少なくありません。

 

遺言書を作成して「すべての財産を配偶者に相続させる」と明記しておけば、この遺産分割協議をすること自体が不要になります。 残された配偶者が他の相続人と接触したり、揉めたりするリスクを大幅に減らすことができるのは、遺言書を作成することによる非常に大きなメリットです。

 

項目 自筆証書遺言
(自宅等保管)
自筆証書遺言
(法務局保管)
公正証書遺言
作成方法 全文・作成日・署名を本人が手書き 全文・作成日・署名を本人が手書き 公証人が作成(本人の手書き不要)
無効リスク 中(形式の不備によるリスクは低)
作成費用 無料 手数料 3,900円 財産に応じて数万円〜
証人の要否 不要 不要 2名必要
家庭裁判所の検認 必要 不要 不要
紛失・改ざんリスク 〇(あり) ×(なし) ×(なし)

 

2.子どもがいない夫婦が選ぶべき「遺言書」の種類と特徴

遺言書には、主に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2つの種類があります。子どもがいない夫婦が安心して財産を残すために、それぞれのメリット・デメリットを比較して選ぶことが重要です。

 

(1)証書遺言(自宅等保管)の場合

最も手軽に費用をかけずに作成できる点がメリットです。

他方で、専門家に相談せずに作成すると、作成日の記載漏れや、誰に何を相続させるかの表現が曖昧であるといった「内容の不備」、日付や印鑑がない等の「形式的不備」が原因で、せっかく書いた遺言書が無効になってしまう危険性があります。

また、手が震えるなど、自分で文字を書くことが難しい状態になると作成できない(財産目録以外についてはパソコンによる作成は認められない)というデメリットもあります。

加えて、紛失や改ざんのおそれがあるほか、相続人が遺言書を発見できなかったために遺言書の内容が実現されないリスクもあります。さらに、相続開始後に家庭裁判所の検認手続きを行う必要があります。

 

 【検認について詳しくはこちら】[遺言書が見つかったらどうすればいい?]

 

(2)自筆証書遺言(法務局保管)の場合

法務局の担当者に遺言書の形式面について確認してもらえますので、形式的な不備による無効のリスクは抑えられます。

一方で、内容面については審査してもらえませんので、専門家に相談せずに作成すると、内容が不明確であるために無効となる場合があることに注意が必要です。

なお、法務局保管の制度を利用することで、紛失・改ざんや遺言書が見つからないといったリスクはなくなりますし、家庭裁判所の検認手続きも不要となります。

 

【詳しくはこちら】  [自筆証書遺言が有効と認められるためには:作成時の注意点と法務局保管制度のメリット]

 

(3)公正証書遺言の場合

公遺言書を自書する必要がないため、手書きができない人でも作成可能です。

また、公証人は法律のプロ(元裁判官や元検察官など)であるため、後日形式や内容で無効となる可能性が極めて低いです。

他方で、遺産の内容に応じた手数料がかかるほか、証人を2名準備する必要があります。証人には日当が必要ですが、公証役場で手配可能なほか、依頼する弁護士事務所で手配できる場合もあります。

 

【詳しくはこちら】  [遺言書を作成する場合,公正証書遺言にする必要はありますか?]

 

 

3.遺言書以外に「兄弟に財産を渡さない」方法はある?

「兄弟に財産を渡したくない」と考えたとき、遺言書を作成する以外にも生前贈与というアプローチが考えられます。ただし、メリットだけでなく注意点があります。

生前贈与は、亡くなった後に財産を渡す遺言書とは異なり、生きているうちに財産を配偶者に移転させる方法です。

生前に自分の意思で、確実に配偶者へ財産を移すことができる点がメリットです。

ただし、贈与を受ける側(受贈者)が1年間(11日〜1231日)に受けた贈与額が110万円(基礎控除額)を超えた場合、贈与税が課税されます。

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその取得資金を贈与する場合、最大2,000万円までが非課税になる「配偶者控除」(通称:おしどり贈与)という特例や相続時精算課税制度といった特例・制度も用意されています。

しかし、一般的に、贈与税は相続税に比べて税率が高く設定されていることが多いため、安易な生前贈与は税金面での不利益となる可能性があります。生前贈与を行うべきか、遺言書による相続にすべきかは、慎重に比較検討しなければなりません。

 

【詳しくはこちら】  [生存贈与をお考えの方へ]

 

~あわせて読みたい~ 

「贈与税」とは?「相続税」と「贈与税」はどちらが高いの?

 

 

4.相続のよくある質問(FAQ)

Q1.「配偶者に全財産を相続させる」と書いた遺言書があれば、銀行の預金解約や不動産の名義変更は配偶者だけでできますか?

A1.作成した「遺言書の種類」によって、手続きのスムーズさが大きく異なります。

 

 

「公正証書遺言」または「法務局に保管された自筆証書遺言」で作成された場合は、家庭裁判所での「検認」手続きが不要であるため、配偶者が単独で銀行での預金解約や、不動産の名義変更(相続登記)の手続きを進めることができます。

一方、「自筆証書遺言(自宅保管等)」の場合は、相続開始後に、すべての相続人を確認できる戸籍謄本等を揃え、家庭裁判所に「遺言検認の申立」を行わなければなりません。この「検認」が終わるまでは、銀行や法務局での手続きを配偶者だけで行うことはできません。

残された配偶者の手間や負担を最小限に抑え、速やかに財産を使えるようにするためには、「検認不要」となる公正証書遺言、または法務局に保管された自筆証書遺言を準備しておくのが最も賢明な選択と言えます。

※2024年(令和6年)4月1日より相続登記が義務化され、不動産の取得を知った日から3年以内に手続きを行わないと過料の対象となる可能性があります。手続きをスムーズに進めるためにも、遺言書の事前準備が非常に重要です。

 

 

Q2.遺言書を作る際、「遺言執行者」というものを指定したほうがよいと聞きましたが本当ですか?

A2.はい、指定しておくことを強くおすすめします。 特に弁護士などの専門家に依頼すると良いでしょう。

 

遺言執行者とは、亡くなった方に代わって遺言の内容を実現する(預金の解約や不動産の名義変更を行う)権限を持つ人のことです。配偶者自身を指定することもできますが、遺言書の作成に関与した弁護士を遺言執行者に指定しておけば、手続きの全てを弁護士に任せることができますし、遺言執行者が行う財産目録の作成や相続人である兄弟姉妹とのやり取りも任せることができます。

 

Q3.婚姻届を出していない事実婚(内縁関係)の場合も、遺言書を書けば財産を渡せますか?

A3.はい。むしろ事実婚のパートナーには法定の相続権が一切ないため、遺言書の作成が「必須」と言えます。

 

法律上の婚姻関係がない事実婚の場合、どれだけ長く連れ添っていてもパートナーは法定相続人になれません。もしあなたに子どもがおらず両親も他界している場合、遺言書がなければ財産は「すべて兄弟姉妹(または甥・姪)」に渡ってしまいます。残されたパートナーが住む家を失うような事態を防ぐためには、遺言書が欠かせません。

 

5.相続対策を弁護士に相談するメリット

子どもがいない夫婦が、配偶者に確実に全ての財産を残すためには、専門家である弁護士への相談をお勧めします。 弁護士が遺言書の作成に関与することで、形式面でも実質でも不備のない、確実に機能する遺言書を作成できるだけでなく、法務局保管に向けた手続きや公証役場とのやり取りもサポートいたします。

 

当事務所は、弁護士歴28年以上の弁護士が在籍しており、多くの相続に関するご相談を受けてきました。机上の法律知識だけでは得られない、多数の相談や解決実績に裏付けられた実践的なノウハウを蓄積しております。こういった経験から、遺言書の作成など相続全般について、皆様に最適なサポートを提供いたします。

 

お悩みの方は是非一度、当事務所にご相談ください。

 

 

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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