遺言を書く時に注意すべき”遺留分”とは何ですか?

Q.遺言書を作成する際に,遺留分に気を付けなさいとアドバイスを受けたのですが,遺留分って何ですか?また,具体的に遺留分のことをどのように気を付けておいた方がよいのでしょうか?

A.遺留分とは,被相続人の相続財産について,相続人のために,一定割合の財産を確保することができるように保障する制度です。

ただし,全ての相続人に認められているわけではなく,兄弟姉妹には遺留分は認められていません(民法1028条)。

遺留分の割合は,直系卑属(子ども)と配偶者が各相続分の2分の1直系尊属(父母)のみが相続人である場合には相続分の3分の1とされています(民法1028条)。

遺留分の算定の基礎となるのは,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して算定されます(1029条)。

また,贈与した財産については,相続開始前の1年間に贈与した財産や,1年前の日より前に贈与した財産であっても,当事者双方が,遺留分が認められる相続人に損害を加えることを知って贈与をしたときは,遺留分の算定の基礎となります(1030条)。

遺留分を侵害するとどうなるのか?

遺留分を侵害する内容の遺言書が作成され,その内容のとおりに遺言が執行された場合,遺留分を有する相続人は,遺言の執行により財産を相続するなどした者に対して遺留分侵害額請求権という権利を行使し,侵害された遺留分に対応する財産を取り戻すことができます。

この権利は,必ずしも裁判上で行使する必要はありません(最判昭和41年7月14日)が,財産に不動産や株式が含まれる場合には遺留分侵害額請求を行った者と遺留分侵害額請求を受けた者との共有となり(最判平成8年1月26日・民集50巻1号132頁),権利関係が複雑になるため,裁判手続で解決されることも多いです。

※改正民法(相続法)によって,改正法施行日である2019年7月1日以降に生じた相続に関しては,遺留分侵害額請求権は,遺留分侵害額に相当する「金銭」の支払を請求する権利と改正され,遺留分侵害額請求の結果,不動産や自社株式が共有状態になるということは回避されることになりました。

遺言を書く時に注意したい遺留分

遺言書を作成するに際しては,この遺留分についてきちんと配慮した内容にしておく必要があります。

有効な遺言書を作成したとしても,遺留分を侵害するような内容であれば,相続人の1人または複数人から遺留分侵害額請求が行われる可能性が高まります。また,折角遺言書を作成したのに,遺留分侵害額請求権の行使によって,相続財産が共有状態になるという複雑な権利関係が生じることになり,遺言書を作成したばっかりにかえって「争族」を引き起こしかねません。

ご自身が作成された遺言書が遺留分も考慮したバランスの取れた内容になっているかどうか,一度,弁護士にご相談されることをお勧めします。

なお,遺留分という権利を相続開始前に放棄するためには,家庭裁判所の許可が必要になります(民法1043条)。相続人が,被相続人からの圧力を受けて,遺留分を放棄させられることを防ぐため,このように家庭裁判所の許可が必要であるとされています。

なお,相続開始後は,このようなおそれはないため,個々の相続人において自由に放棄することができます。

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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