亡くなった夫には前妻との子どもがいます。その子どもと一緒に遺産分割協議をする必要がありますか?
目次
Q 先日、夫が亡くなりました。私と夫との間には子どもはいませんが、夫には離婚した前妻がおり、前
妻との間には子どもがいるようです。
夫と私が結婚してからは、現在に至るまで、前妻やその子どもと全く交流がありません。
このような場合でも、夫の相続財産について、遺産分割協議をする必要はありますか?
A 前妻の子どもとは、遺産分割協議をする必要があります。なお、前妻は、離婚したことによって相
続人にはなりません。
以下で詳しく説明します。
まずは相続人の範囲をしらべましょう!
本件のQ&Aのように、被相続人(亡くなった方)が離婚した元配偶者や、その元配偶者との子どもと交流がない場合には、「離婚すればもう家族じゃないのだから、相続する権利もないのではないか。」と考えてしまうかもしれません。
しかし、民法では、被相続人(亡くなった方)の子どもであれば、両親が離婚をしても、子どもとの親子関係は消滅しませんので、相続人となります(民法第887条第1項)(民法第897条第1項)。
なお、相続分については、現在の配偶者との間に子どもがいた場合と同じ割合で相続します。
もちろん、元配偶者については、離婚したことにより相続権はないものとみなされます。
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遺産分割協議書の作成に注意しましょう!
「元配偶者の子どもとは会ったことがないから関係ない」「元配偶者の子どもと連絡が付かない」といった理由で、元配偶者の子どもに連絡しないまま遺産分割協議を行ったり、そもそも元配偶者やその子どもがいると知らずに、相続人の範囲を調査しないまま遺産分割協議を行ったとしても、そのように作成された「遺産分割協議書」は無効となります。
「遺産分割協議書」が無効となった場合は、相続財産(預貯金や不動産)の名義変更・解約ができません。また、相続税についても、修正申告・更生申告の手続きが必要となります。
その後、改めて遺産分割協議をしようとしても、元配偶者の子どもからすると、はじめは自分に何の連絡もなく、勝手に被相続人の遺産を分割しようとしたことについて、不信感や不満が生じ、感情的対立に発展するおそれがあります。そうなると、遺産分割協議の成立が困難になるかもしれません。
このようなことにならないよう、遺産分割協議をする前に、被相続人(亡くなった方)に離婚歴がないか、他に子どもがいないかなど、相続人の調査を十分に行ったうえで、相続人全員に対してきちんと連絡する必要があります。
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前妻の子への連絡方法は?
本件Q&Aのように、元配偶者やその子どもとの交流が一切なかった場合、元配偶者の子どもへの連絡方法が分からないことが多いです。その際は、以下のような方法が考えられます。
① 被相続人(亡くなった方)が生まれてから亡くなるまでの、一生分の戸籍謄本等の取り寄せを行い
② 以前の戸籍に、元配偶者・元配偶者との子ども について記載されるので、元配偶者の子どもの戸籍の附票を取得することで、現在の住所が分かるようになっています。
戸籍の附票に記載されている住所は、住民票の住所と同じですので、記載された住所に手紙等を送ることで連絡を取ることができます。
遺言書がある場合について
被相続人(亡くなった方)が生前に作成した遺言書が存在する場合は、相続人で遺産分割協議を行う必要はありません。しかし、例えば遺言書に『全財産を○○(あなた)に相続させる』と書かれていて、元配偶者の子どもには、何も相続させない内容になっていたとしても、元配偶者の子どもには、【遺留分】を請求する権利があります。そのため、たとえ遺言書が作成されていたとしても、遺留分を請求された際に備えて、元配偶者の子どもがいるのか、何人いるのか等をしっかりと把握しておく必要があります。
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当事者同士の話し合いが難しい場合はどうすればいい?
遺産分割協議は、相続人同士の話し合いのことをいいます。遺産の分割方法を確定させるには、話し合いは必須となります。しかし、自分以外の相続人に対して、遺産分割協議の申し入れをしたとしても、必ず応じてくれるとは限りません。あなたが元配偶者の子どもの存在や、連絡先を知らないのと同様に、元配偶者の子どももあなたのことを知らず、突然の連絡に驚いて、返事をくれないこともあります。そのような場合には、遺産分割調停の申立を行う必要があります。
もっとも、遺産分割調停は、裁判所が関与しますが、基本的には話し合いになりますので、当事者の一方でも欠席した場合は、調停が「不成立」となり審判手続きに移行します。審判手続きは、遺産分割調停とは異なり、裁判所が判断する手続きになりますので、当事者の一方が欠席しても結論が出されることとなり、判決と同様の効力を有します。
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まとめ
これまでにお話したとおり、元配偶者の子どもであり交流がなかった場合でも、相続人にあたるときは、遺産分割協議をする必要があります。なお、相続人全員で協議することなく作成した「遺産分割協議書」は無効となります。また、相続人の1人でも、遺産分割協議に応じない場合には、調停・審判などと、裁判所の手続きを介して遺産分割をしていくことになります。
このように、相続人の調査に漏れがないかどうかや、今まで交流がなかった相続人との連絡、また、裁判所が関わる手続きに不安を感じることがあるかと思います。不安な点がある場合には、ご自身で対応する前に、まずは、専門家に依頼することをおすすめします。
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