遺産分割協議書の偽造について

Q.私の母は数年前に亡くなっており,母の相続人としては高齢の父,私,弟がいます。
 父について成年後見が開始されたことをきっかけに,母名義になっていた不動産の登記を確認したところ,所有者が弟になっていました。
 おかしいと思って,登記の際に用いられた遺産分割協議書を確認したところ,私の署名欄が,私の筆跡ではない文字で記載されていました。弟が偽造したのだと思います。弟のやったことは犯罪ではないのですか?私はどうしたらいいのでしょうか?


A.弟さんが遺産分割協議書の偽造をしたのなら,犯罪となる可能性があります。また,あなたは,弟さんに対し,損害賠償請求や登記を原状に回復させる請求ができる可能性があります。

 

遺産分割協議書の偽造は犯罪なの?

 遺産分割協議書を偽造する行為は,私文書偽造罪(刑法159条1項)に該当する可能性があります。

 

 また,偽造した遺産分割協議書を用いて,不動産の登記申請手続きをした場合には,公正証書原本不実記載罪(刑法157条1項)に該当する可能性があります。

 

 さらに,そもそも偽造した遺産分割協議書があったとしても,相続人の全員が関与していない遺産分割協議は無効です。

 そうだとすると,遺産は,相続人の共有状態のままになります。そのような状態で,仮に遺産分割協議書を偽造した者が自己の名義であることを利用して,第三者に遺産の売却などをした場合には,横領罪(刑法252条1項)が成立する可能性があります(なお,親族間の特例がある点に注意が必要です。)。
 以上のように,遺産分割協議書を偽造すること,偽造した遺産分割協議書を利用することは,犯罪に該当する可能性が高いため,決してこのようなことを行ってはいけません。
 なお,相続開始後長期間経過しているとしたら,これらの犯罪については公訴時効が完成している可能性があります。

 

遺産分割協議書を偽造すると民事上の責任を負う?

 遺産分割協議書の偽造とそれを利用する行為は,犯罪であるというだけではなく,民事上の責任も別途発生する可能性があります。

 

 例えば,相続人の一人が遺産分割協議書を偽造して,唯一の相続財産である不動産を自分の名義にして売却してしまった場合,他の相続人は当該相続人に対して,被った損害について,損害賠償請求をすることができます。

 

 また,遺産分割協議書の偽造をしても法的には無効ですので,そのような無効な遺産分割協議書に基づく登記などは原状に復させる義務があります。

 

 このように,遺産分割協議書を偽造した者には,刑事上の責任だけではなく,民事上の責任も負うことになります。

 

遺言書を偽造したらどうなるの?

 遺言は,被相続人の意思を表明するものですので,被相続人以外の者が偽造した場合には,法的には効果がありません。

 

 また,遺言書を偽造した場合には,相続の欠格事由に該当し,相続人たる資格を失う可能性もあります(民法第891条5号)。

 

遺産分割協議書が偽造されている可能性があると思ったときはどうしたらいいの?

 先に述べましたとおり,遺産分割協議は相続人全員が合意しなければ無効です。

 

 したがって,あなたが相続人であり,あなたが署名押印していない遺産分割協議書が作成されている場合,改めて遺産分割協議をする必要があります。

 

 その際には,他の相続人に対して,改めて遺産分割を行うよう請求する方法が考えられます。

 

 もっとも,遺産分割協議書を偽造するような者が相続人にいる場合には,相続人間のやり取りでは,解決が困難な可能性が高いです。

 

 そのような場合には,家庭裁判所において,第三者である調停委員会が入っておこなう遺産分割調停が考えられます。もっとも,遺産分割調停はあくまでも話し合いなので,相続人間に歩み寄りがないと,紛争の解決ができません。

 

 遺産分割調停でも解決できないとすると,遺産分割協議が無効であることの確認を求める訴訟を提起することが考えられます。

 

 この点,遺産分割協議無効確認訴訟で,「遺産分割協議書が偽造であり,遺産分割協議が無効である。」と確認されたとしても,それだけで,財産を取得することはできず,別途遺産分割協議をする必要があります。

 

 そのような理由から,紛争を抜本的に解決するために,遺産分割協議無効確認訴訟の手続の中で,和解が行われることもあります。

 

まとめ

 それでは今回の内容を復習してみましょう。

⑴ 遺産分割協議書の偽造は犯罪になる可能性があるので,絶対にやめましょう。

 

⑵ 遺産分割協議書の偽造をした場合には,別途損害賠償義務や,原状回復措置をとる義務を負うことがあります。

 

(3) 遺言を偽造すると,相続人の資格を失うことがあります。

 

(4) 遺産分割協議書の偽造が考えられる場合には,別途相続人間で遺産分割協議を行う方法,遺産分割調停を行う方法,遺産分割協議無効確認訴訟を提起する方法が考えられます。

 

 遺産分割協議書の偽造がされたような場合には,一般的に相続人間で対立が根深い状態であり相続人同士の話し合いによる解決は困難と思われます。また,裁判で遺産分割協議書が偽造であると認定されるためには,法的手続きに則り,事実関係を丁寧に分析・主張していかなければなりません。

 

 従いまして,遺産分割協議書が偽造されてしまった場合には,相続に関して専門性を有する弁護士が関与することが,適切な事件解決に不可欠であるといえるでしょう。

 

 当事務所の弁護士は、弁護士歴25年以上の経験がある弁護士のノウハウ等をもとに、相続手続全般について、適切なサポートを提供いたしますので,お悩みの方は,是非一度,当事務所にご相談ください。

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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