前妻と後妻、それぞれに子どもがいる場合の相続のポイント

Q 私(Aさん)には、離婚歴があります。前妻との間に子どもが2人、後妻との間に1人、また、後妻

 の連れ子が1人います。


  前妻の子2人とは、離婚後は面会交流を行っていましたが、子どもたちが成人してからは会っていま

 せん。

  一方で、後妻の連れ子は、養子縁組こそしていないものの、幼い頃から我が子のように育ててきまし 

 た。


  後妻は、先日亡くなったので、私(Aさん)が死亡したときの相続人は子どもたちだけになると思い

 ますが、その場合、子どもたちにどのように相続されるのでしょうか?

 

  離婚して疎遠になっている子どもたちにも相続権はありますか?

A 離婚していても、疎遠であっても、子どもには相続権があります。

 

  しかし、養子縁組をしていない後妻の連れ子には、相続権はありません。

 

  そのため、Aさんがお亡くなりになったときは、前妻の子ども2人・後妻の子ども1人で、それぞれ

 1/3ずつ相続します。

 

  しかし、前妻の子どもと後妻の子どもは疎遠であるパターンが多く、信頼関係が形成されていない可

 能性があります。相続の場面になると揉めることが多いため、生前対策が必要です。

 

  以下で詳しく説明します。

 

子どもの相続権と相続分

 

 子どもは、常に相続人となります(民法第887条第1項)。子どもが複数いる場合の相続分は、前妻の子であっても、後妻の子であっても、それぞれ等しいものとされています(民法第900条第4項)。

 

 被相続人(亡くなった方)の子どもである限り、離婚や疎遠であることを全く考慮しませんので、子ども全員、いつでも等しく相続することになります。

 

 

 配偶者の連れ子など、事実上自分の子どもとして育ててきたとしても、養子縁組をしていない場合は、法律上は「子」ではありません。

 

 そのため、相続権がないことに注意が必要です。

 

 この場合、生前に連れ子と養子縁組をしておくか、遺言書を作成して、連れ子に財産を残しておく(遺贈する)対策をしない限り、連れ子が相続財産を取得することはできません。

 

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前妻の子・後妻の子のトラブル

 

 離婚に際して、子どもが前妻に引き取られ、一緒に過ごす時間が少なくなった場合は、前妻の子との関係が疎遠になることが多いです。そのため、前妻の子と後妻の子の交流が全くないというケースがほとんどです。

 

 前妻の子と後妻の子の交流が全くなかった場合、子同士の信頼関係は形成されませんので、相続の際に、相手方に対する不信感からトラブルになることがあります。

 

 例えば、一方的に、遺産分割協議書の提示や相続放棄を迫るなどして、感情的な対立に発展することがあります。この場合、一方の子どもが、他方の子どもに対して、「自分たちだけ得をしようとしている」、「財産を隠しているんじゃないか」と疑うことで、遺産分割協議が成立しなくなり、費用や時間をかけてまで、調停・審判を行わなければならない可能性があります。

 

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子ども同士でトラブルが生じないようにする方法は?

  

 トラブルを回避するためには、『生前対策』が不可欠です。

 

 具体的には、遺言書を作成することをおすすめしています。遺言書を作成していれば、遺言書に書いたとおりに財産が相続されますので、遺産の分け方を話し合うことによるトラブルを回避することができます。また、遺言書に財産目録を付けておくことで、一方の子どもが、財産隠しを疑われる可能性も低くなります。

 

 さらに、遺言書を作成しておくと、トラブルを回避できるだけでなく、法定相続分に捉われずに財産を相続させることができます。

 

 養子縁組をしていない後妻の連れ子に対しては、「遺贈」という形で財産を承継させることができます。

 なお、遺言書を作成する場合には、遺留分への配慮が必要となりますのでご注意ください。

 

 また、遺言書の「付言事項」の欄に、なぜ遺言書を作成したのかという経緯や、分割方法についての理由を記載しておくことで、被相続人(亡くなった方)の想いなどを理解することができ、トラブルを未然に防止する一助になることもあります。

 

 ~遺言書作成について詳しくはこちら~ 

 ★遺言書作成について

 ★遺言書で兄弟間のトラブルを避けるため何を注意すべきか?

 ★遺言書を作成する場合,公正証書遺言にする必要はありますか?

 

【ちなみに・・・】

 

 遺言書の作成だけでなく、生前贈与を行うことで、財産を事前に特定の子どもに承継させておく方法や、生命保険の受取人を特定の子どもに指定しておくことで、多めに財産を承継させる方法もあります。

 

 生前贈与や、生命保険を活用するか否かについては、財産状況や税金面を考慮して検討する必要があります。

 

まとめ

    

 離婚していても、子どもには相続権があります。そのため、前妻の子どもや、後妻の子どもであることを問わず、子どもの人数に応じて均等に相続することになります(※遺言書を作成していない場合)。

 

 なお、連れ子については、そのままの状態では、法律上の「子」ではありませんので、養子縁組をしない限り、相続人とはならないことに注意が必要です。

 

 一般的には、前妻の子どもと後妻の子どもは疎遠であることが多く、信頼関係が形成されていない可能性があります。そのため、相続の場面では、相手に対する不信感から揉めることが多いので、生前に対策をしておきましょう。

 

 生前対策は、家族構成や関係性、財産状況、年齢等々によって様々です。また、その方法も、遺言書作成・生前贈与・生命保険の活用と、多様にわたります。生前の対策に少しでも不安がある場合は、まずは専門家に相談することをおすすめします。

 

 当事務所は、弁護士歴27年以上の弁護士が在籍しており、多くの相続に関するご相談を受けてきました。机上の法律知識だけでは得られない、多数の相談や解決実績に裏付けられた実践的なノウハウを蓄積しております。

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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