遺産分割後に財産が見つかった場合、遺産分割のやり直しはできますか?

Q.遺産分割後に財産が見つかった場合、遺産分割のやり直しはできますか?

半年前に私と母、弟、妹と4人で父の遺産分割協議をして、遺産分割協議書に署名押印をしました。ところが、最近実家のタンスを整理していたら遺産分割協議書に書かれていない父名義の預金通帳が出てきました。今回出てきた預金通帳も含めて遺産分割をやり直すことはできますか。

 

A.相続人全員の同意があれば、遺産分割をやり直すことはできます。

しかし、遺産分割後に新たな財産が見つかったからといって遺産分割をやり直す必要は必ずしもありません。むしろ、遺産分割をやり直すにあたって注意するべき点があります。そのため、遺産分割のやり直しをするか否かは、慎重に判断する必要があります。

 

 

1.遺産分割のやり直し

遺産分割後に財産が見つかった場合、相続人全員の同意があれば遺産分割をやり直すことができます。相続人全員が同意して遺産分割をやり直す場合は、期間制限がありませんので、遺産分割後何年たってもやり直すことができます。

しかしながら、遺産分割のやり直しができるからといって、遺産分割後に財産が見つかった場合に遺産分割をやり直しが必ずしも必要であるとはいえません。

 

そもそも、相続人全員が納得して遺産分割を成立させている訳ですから、一旦成立した合意は有効とされるのが原則であり、遺産分割後に新たな財産が見つかったとしても、新たに見つかった財産について遺産分割協議を別途行うことで足りる場合がほとんどです。新たに見つかった財産について遺産分割協議を行い、遺産分割協議を作成することで以前の遺産分割をやり直すことなく分割することができます。その際、以前の遺産分割内容を踏まえて、新たに見つかった財産の相続分を調整することも考えられるでしょう。

また、そもそも、新たに財産が見つかるたびに、その都度遺産分割をやり直すことは現実的ではありません。

 

 

2.例外的に遺産分割のやり直しが必要な場合

 (1) 新たに見つかった財産の存在を、当初から知っていたら遺産分割協議で合意しなかったといえる場合

新たに見つかった財産が、非常に価値が高い財産である場合など、遺産分割の前提が大きく異なってしまうことがあり、当初からその財産の存在を知っていれば、このような遺産分割協議をしなかったといえ場合には、他の相続人の同意なく遺産分割錯誤を理由に取消しを請求することができる場合があります。

このように最初の遺産分割協議では不公平になる場合は、相続人間の公平のために、遺産分割協議をやり直した方がいい場合もあるでしょう(相続人全員が納得していればやり直す必要はありません。)。

 

 (2) 一部の相続人が財産を隠していた場合

特定の相続人が財産を多く取得しようとして財産を隠して遺産分割協議を成立させたような場合には、「詐欺」や「錯誤」を理由に取消しを請求できる場合があります。

なお、取消しは、5年間の期間制限があることに注意が必要です。

 

 

3.遺産分割をやり直す場合の注意点

  前記のとおり、「錯誤」や「詐欺」による取消しができる場合でなくても、相続人全員が同意すれば遺産分割をやり直すことができますが、この場合、注意するべき点が2つあります。

 

 (1) 完全なやり直しができない場合があること

遺産分割のやり直しをするとしても、以前の遺産分割にもとづいて財産を取得した相続人がその財産を第三者に売却していた場合には、原則としてその第三者から相続財産を取り戻して遺産分割をやり直すことはできません。

相続財産を買受けた第三者は、以前の遺産分割を前提として取引をしているので、その取引を相続人らの都合でひっくり返してしまうと、第三者は安心して取引ができなくなるからです。

遺産分割後に取得した不動産を相続人が売却してしまった場合は、買主に対して売却した不動産の返還を原則として求めることはできず、完全な遺産分割のやり直しができないことに注意が必要です。

 

 (2) 追加で税金を支払う必要が生じる場合があること

遺産分割をやり直す場合、やり直しによって取得した財産は、税務上、相続によって財産を取得したとは扱われず、当初の遺産分割によって取得した財産を相続人間の合意によって他の相続人に譲渡したしたという扱いになります。つまり、無償で取得した場合は贈与となり、対価等を支払って取得した場合は売買として扱われることになります。そのため、前者では贈与税及び不動産取得税、後者では譲渡所得税及び不動産取得税の課税対象となります。

以前の遺産分割の段階で相続税を支払っている場合、同じ財産に相続税だけでなく、贈与税、譲渡所得税やも課税されることになります。

なお、不動産の場合、これに加えて不動産取得税だけでなく登記費用や登録免許税が別途必要となることに留意する必要があります。

遺産分割をやり直す場合、完全なやり直しができない場合があることと、追加で税金を支払う必要が生じることに注意が必要です。

 

なお、当初の遺産分割協議が法的に無効等である場合には、やり直した遺産分割協議による相続によって取得したものとなり、贈与税等は課税されませんが、そもそも遺産分割協議が法的に無効と認めてもらえるのはハードルが高いです。

 

 

4.遺産分割後に財産が見つかった場合の税金について

遺産分割後に財産が見つかった場合、遺産分割をやり直すか否か、あるいは新たな財産についてどのように分割するかという点ばかり考えてしまうかもしれませんが、相続税についても注意しておく必要があります。

遺産分割後に財産が見つかった場合、申告期限内(死亡から10か月以内)であれば、相続税の訂正申告をして不足する税金を納付することで足りますが、申告期限を超えていた場合は、修正申告・期限後申告の手続が必要となります。そこで、相続税を追加して支払う場合は、延滞税の支払が必要となります。

修正申告・期限後申告をしないまま、税務調査で発覚した場合は、延滞税に加えて過少申告加算税・無申告加算税が課税されるため、必ず申告するようにしてください。

 

 

5.トラブル回避のための対策

遺産分割をする際には、後日、新たな財産が発見されることでトラブルが生じないように、次のような対策をしておくことが望ましいです。

 

 (1) 財産調査をしっかり行う

遺産分割協議をするにあたって、財産の漏れがないようにしっかりと財産調査をすることが必要です。

不動産、現金、預貯金、株式等の有価証券、生命保険、債権、動産類や負債など徹底的に調査が必要です。専門的な知識が必要なこともありますので、専門家の助力を得ることもご検討ください。

 

 (2) 分割協議書に新たに判明した財産の扱いについて記載しておく

新たに見つかった財産の分け方について、相続人間で事前に話し合っておき、その内容を遺産分割協議書に記載しておくことも有効な対策になります。

新たな財産が判明した場合、相続人の誰が取得するのか、どのような割合で取得するのか等を事前に決めておけば、再度遺産協議を行う手間を省くことができます。

 

 

6.まとめ

相続人全員の同意があれば、遺産分割をやり直すことはできます。

しかし、遺産分割後に新たな財産が見つかったからといって遺産分割をやり直す必要は必ずしもありません。むしろ、遺産分割をやり直すにあたって注意するべき点があります。そのため、遺産分割のやり直しは慎重に判断する必要があります。遺産分割のやり直しが必要なのか、新たに見つかった財産のみの分割方法を協議すれば足りるのかの判断については、専門的な知識が必要となるため、専門家に相談することをおすすめします。

 

また、新たに財産が見つかるといった事態が生じないように事前にしっかりと相続財産を調査することも大切です。もっとも、仕事や家事、育児、介護をしながら被相続人の財産をきっちり調査することは難しいかと思います。そこで、相続財産の調査からしっかりと専門家である弁護士に依頼することで調査漏れを防ぐことができます。

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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