不要な土地を相続放棄する際の注意点とは?

Q.不要な土地を相続放棄する際の注意点とは?

先日、農家をしていた父が亡くなりました。そこで母と兄弟で遺産分割をしようと思っています。父の財産を調べてみると農地だけではなく、先祖から受け継いだ山林があることが分かりました。私は、都市部の企業に就職しており、農地がある実家から離れて暮らしているため、農業をすることはできませんし、山林を相続しても固定資産税がかかるだけで困っています。どうしたらよいでしょうか。

A.農地や山林などは、用途が限定されているため維持管理費用がかかるだけで相続してもいわゆる「負動産」としてマイナスの資産となる可能性があります。令和5年4月27日から「相続土地国庫帰属制度」が始まりましたが、全ての土地を国が取得してくれるわけではありません。そこで、他の資産状況も考慮しつつ、相続放棄を検討してもよいでしょう。

 

相続不動産国庫帰属制度についてはこちら

 

1.相続放棄とは?

相続放棄とは、初めから相続人ではなかったとして扱い相続財産を相続する地位を放棄する手続きのことです。そのため、相続人が被相続人のプラス財産とマイナス財産の一切を相続する権利を放棄することになります。相続放棄は、資産より負債の方が大きい場合に利用するケースが多く見られますが、田畑や山林など用途が限られており、維持管理が難しい資産が含まれている場合にも、利用を検討する価値があります。

 

 

2.相続財産に土地が含まれていた場合の手続きとは?

相続財産に土地が含まれていた場合、その土地の登記名義人を被相続人の名義から相続人の名義に変更する必要があります。相続人の名義に変更するには、被相続人が遺言書を作成していた場合は遺言書をもとに手続きを行い、遺言書を作成していない場合は、遺産分割協議書を相続人全員で作成した上で手続きをする必要があります。

もっとも、農地の場合は、市町村の農業員会に対して、相続で農地を取得したことを知った日からおおむね10か月以内に届出を行う必要があります。また、山林であって都道府県が地域森林計画の対象としている森林の場合も、相続開始日から90日以内に市町村に対して、届出を行う必要があります。遺産分割が未了である場合は相続人全員で届出を行う必要があります。農地も山林も届出を行わなかった場合、10万円以下の過料に処される場合があります。

 

 

3.不要な土地を相続放棄する場合の注意点とは?

不要な土地を相続放棄する場合の注意点は以下の4つです。

 

(1) 相続開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きをする必要があること

相続が開始してから3か月以内に相続放棄の手続きをしなければ、相続放棄の手続きをすることができなくなることに注意してください。相続放棄の手続きができる期間が短いため、できる限り迅速に被相続人の財産を把握し、相続財産に含まれる土地が相続しても問題のない土地かどうかを把握する必要があります。3か月以内に相続財産を把握したり、相続するべきか判断したりすることができない場合には、家庭裁判所に対して、相続放棄の期間の伸長手続きを行うことをおすすめします。

 

(2) 相続財産を処分してしまった場合は、相続放棄ができなくなること

相続人の財産を処分してしまった場合は、相続放棄をする資格を失ってしまうことに注意が必要です。相続財産を処分してしまった場合、法定単純承認といって、無制限に遺産を相続する意思表示をしたと扱われてしまいますので、不要な不動産も含めて相続しなければならなくなります。相続放棄を検討している場合は、預金を解約したり、遺産を売却したりしないようにしましょう。

 

(3) 不要な土地だけでなく、現金や有価証券などプラスの財産も相続できなくなること

相続放棄は、被相続人からプラスの財産、マイナスの財産問わず相続することを放棄する手続きですので、決して必要のない財産のみを選んで放棄することができる手続きではないことに注意してください。また、一度相続放棄をすると撤回することができませんので、しっかりと遺産の状況を把握してから相続放棄をするか否かを検討しましょう。

 

(4) 被相続人の配偶者・子どもが全員相続放棄した場合、次順位の法定相続人が相続することになること

被相続人の配偶者・子ども全員が相続放棄をした場合、後順位の法定相続人が相続することに注意が必要です。そのため、子ども全員が相続放棄をすれば、後順位の被相続人の父母が相続人となります。被相続人の父母が相続放棄をしたり、既に亡くなったりしている場合には、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。

そのため、相続放棄をする場合は、親族間の人間関係にもよりますが、他の相続人や後順位の相続人に相続放棄の手続きを行う意思を伝えた上で手続きを進めると感情的な対立に発展することを防ぐことができます。

 

 

4.親族が全員相続放棄した場合の注意点とは?

仮に親族(第1~第3順位の法定相続人)全員が相続放棄をした場合、以下の2つについて注意する必要があります。

 

(1) 相続財産清算人の申立てを行うこと

相続放棄によって相続人が不存在となった場合、家庭裁判所に対して相続財産清算人の申立てを行う必要があります。相続財産清算人とは、相続財産を管理・整理して最終的に国庫に帰属させることをその職務としています。相続財産清算人を選任しなければ、後述するように相続人がいつまでも相続財産を維持管理しなければならなくなることに注意が必要です。

 

(2) 相続財産を管理する必要があること

相続財産は、相続放棄をしたとしても、相続人となったものが、他の相続人または相続財産清算人に引き継ぐまで自己の財産と同一の注意をもってその財産を管理する必要があります。親族全員が相続放棄をしても、相続財産清算人に財産を引き継ぐまで、管理しなければならないことに注意が必要です。

 

 

5.相続放棄を弁護士に依頼するメリット

相続放棄を弁護士に依頼するメリットは、2つあります。

 

(1) しっかりと相続財産の調査を行うことができること

弁護士に依頼することで、被相続人の財産をしっかりと調査することができます。銀行や市役所、証券会社は原則として平日しか対応してくれませんが、平日にこれらの機関を訪問するなどして、被相続人の財産を調査することは、仕事や育児、介護等で難しいかと思われます。また、相続放棄が3カ月の期間制限があるので、できる限り迅速に行う必要があります。弁護士に依頼することで相続放棄の判断材料となる相続財産の調査を迅速に行うことができます。

 

(2) 相続放棄の手続きを円滑に行うことができること

家庭裁判所での相続放棄の手続きや相続放棄の期間の伸長手続きは、一般の人にとっては、慣れない手続ですし、平日に裁判所で手続きをすることが難しい方もいるかと思います。弁護士に依頼することで弁護士に相続放棄に関する各種手続きを一任することができます。

 

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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