相続人が遠方にいる場合の相続の進め方について

Q:相続人が遠方にいる場合の相続の進め方について

先日、福岡で暮らしていた父親が亡くなりました。母親は、数年前に亡くなっています。私は、現在は東京の会社で働いています。私には弟がいますが、弟は現在大阪で暮らしています。

父親は、遺言書を作成していませんでした。父親の遺産は、実家(土地・家屋)と、預金1000万円です。今後父親の相続手続きをどのように進めればよいか教えて欲しいです。

 

A:今回は、相談者の父親が遺言書を作成しておられませんので、相続手続きを進めるには、相続人全員で遺産分割協議(誰がどの財産を取得するのかについての話し合い)を行う必要があります。

遺産分割協議の成立後、遺産分割協議書を作成し、戸籍謄本などの必要書類を揃えたうえで、預金であれば各金融機関で、不動産の名義変更であれば法務局で手続を行うことになります。

 

相続人が遠方に居住している場合の遺産分割協議と相続手続きの進め方には注意すべき点がありますので、今回は相続人が遠方に居住している場合の相続手続きの進め方について解説します。

 

 

1.相続人が遠方にいる際の相続の進め方

(1) 相続人が1人だけの場合

被相続人(亡くなられた人)の相続人が1人だけの場合、相続人が被相続人(亡くなられた人)の遺産を相続することになり、相続人は相続手続きを行うことができます。相続人が1人だけの場合には、遺産分割協議は不要になります。

相続手続きは、被相続人の戸籍謄本等の必要書類を揃えたうえで、預金であれば各金融機関で、不動産の名義変更であれば法務局で手続きを行うことになります。

 

例えば、預金口座は、被相続人(亡くなられた人)が居住していた地域の金融機関に開設していることが多くありますので、被相続人(亡くなられた人)の居住していた地域の金融機関において、預金の解約手続きを行うことになります。金融機関の多くは、郵送での手続きに対応しておりますので、その場合は、わざわざ金融機関に出向く必要はありません。しかし、金融機関によっては、郵送での手続きには対応しておらず、来店を求めてくる場合もありますので、事前に金融機関に確認することがおすすめです。

 

(2) 相続人が複数の場合

ア 遺産分割協議書の作成について

相続人が複数いる場合で、被相続人(亡くなられた人)が遺言書を作成していないときは、相続手続きを進めるには遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する必要があります。

遺産分割協議書には、相続人全員が署名と実印による押印を行う必要があります。遺産分割協議の方法は自由ですので、相続人全員が近くに居住している場合には、一堂に会して、遺産分割協議書に署名と実印による押印を行うことが考えられます。相続人が遠方にいる場合には、相続人全員が、遺産分割協議の内容に承諾していれば、相続人間で、遺産分割協議書を郵送で回し、署名と押印をすることが考えられます。

イ 相続手続きについて

相続人が複数の場合でも、遺産分割協議が成立し、遺産分割協議書が作成されていれば、相続人が1人の場合と同様に、金融機関によっては、郵送で手続きを行うことが可能になります。

 

 

2.郵送による相続手続きの注意点とは

(1) 遺産分割協議書を郵送する場合

相続人が複数の場合で、遺言書がないときは、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、相続人の全員の署名と実印による押印が必要になるため、不備が生じれば、最初からやり直すことになり、時間と手間がかかることになります。

 

(2) 被相続人の戸籍謄本の取得手続きの場合

郵送で相続手続きを進めることは可能ですが、時間と手間がかかる可能性があることには、注意が必要です。

例えば、被相続人の戸籍謄本を取得する場合、被相続人の本籍地を管轄する市区町村役場に対して、インターネットなどで本籍地のある市区町村役場のホームページから申請書を入手し、必要書類及び郵便局で購入する定額小為替、返信用封筒を同封のうえ郵送にて請求し、被相続人の本籍地を管轄する市区町村役場から、相続人に郵送することになりますので、時間と手間がかかります。また、戸籍謄本等の請求に不備がある場合には、役所から訂正を求められたり、改めて戸籍謄本等の請求を求められることなども想定されます。

 

原則として、被相続人(亡くなられた人)の出生時から死亡時までの戸籍をすべて収集する必要があります。出生時の本籍地から結婚や転籍などを経て本籍地を数回変更しているケースも多々あり、郵送で取り寄せる場合、取り寄せた戸籍謄本の記載を確認し、その戸籍の前の本籍地がどこかを確認いしたら、また別の旧本籍地がある市区町村役場に請求するという手順を出生時から死亡時のものがすべて揃うまで繰り返すことになります。

 

(3) 「広域交付制度」の開始

戸籍謄本の取得については、時間と手間の負担を緩和するために、令和6年3月1日から、「広域交付制度」が開始しています。「広域交付制度」は、最寄りの市区町村役場にて、ほかの市区町村役場の戸籍謄本であっても、一括して取得することができる制度になります。

「広域交付制度」では、郵送請求の方法を利用して戸籍の広域交付制度を利用することはできず、必ず請求者である相続人が最寄りの市区町村役場に直接出向く必要がある点は注意が必要です。

「広域交付制度」の導入によって、取り寄せた戸籍謄本の記載を確認し何度もさかのぼって請求していく作業を行う時間や労力がなくなり、原則的には相続人自身の住所地など最寄りの役所に1回出向くことで、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等が揃うことになります。ただし、戸籍謄本が即日交付されない場合には最寄りの役所には再度足を運ぶ必要があります。なお、あくまで「広域交付制度」を射ようして戸籍を取得できるのは、本人、配偶者と直系親族のみです。そのため、父親の相続において、相続人である子が、父親の出生から死亡までの戸籍謄本等を一括で取得できますが、相続人である子の戸籍謄本は別途取得する必要があります。また、兄弟姉妹が相続人の場合には、兄弟姉妹は、被相続人の直系親族ではありませんので、「広域交付制度」は利用できず、前記のように戸籍を順番にさかのぼって1つ1つ取得していく手手続きが必要になります。

 

 

3. 遠方に相続人がいる場合の相続を弁護士に依頼するメリット

遠方に相続人がいる場合の相続を弁護士に依頼することで、遠方にいる相続人との遺産分割協議の交渉を任せることができます。

また、弁護士は、職務上の権限に基づき戸籍謄本の取得を行うことができ、預貯金の解約手続き等の相続手続きを任せることもできますので、相続人の負担を軽減につながります。もちろん、弁護士に依頼する場合には、弁護士費用の負担が生じますが、戸籍謄本等の申請や、遺産分割協議書の作成、預金の解約手続きなどの、たくさんの慣れない手続きに時間と労力を費やすストレスから解放され、スムーズに手続きを進めていくことができます。

 

 

4.まとめ

相続人が遠方にいる場合の相続手続きについては、相続人が1人の場合と相続人が複数の場合とでは、遺産分割協議書の作成が必要かという点は異なりますが、その他の点は共通しています。

相続手続きを行うためには、被相続人の戸籍謄本等の必要書類を取得する必要があり、通常でも一定の時間と手間がかかります。そのうえ、相続人が遠方にいる場合には郵便を利用して手続きをしなければならないことから、さらに時間がかかることになります。

 

また、相続人が複数の場合、遺産分割協議が成立した後に、遺産分割協議書を作成することになりますが、相続人間で、遺産分割協議書を郵送で回し、署名と押印をする際に、不備が生じればやり直しをすることになります。

以上のように、相続人が遠方にいる場合の相続手続きを行うには手間と時間がかかります。遠方に相続人がいる場合の相続を弁護士に依頼することで、遠方にいる相続人との遺産分割協議の交渉、戸籍謄本の取得、預貯金の解約手続き等の相続手続きを任せることができ、相続人の負担を軽減することができます。

 

当事務所は、弁護士歴28年以上の弁護士が在籍しており、多くの相続に関するご相談を受けてきました。机上の法律知識だけでは得られない、多数の相談や解決実績に裏付けられた実践的なノウハウを蓄積しております。こういった経験から、相続手続の方法など相続全般について、皆様に最適なサポートを提供いたします。お悩みの方は是非一度、当事務所にご相談ください。

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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