不動産を相続した・売却した場合確定申告は必要ですか?

Q:私は、4月頃に父の遺産分割協議が終了し、遺産分割協議書を作成しました。

 遺産分割協議の結果、父名義の土地を私が取得することになり、相続登記も完了しました。

 父の財産を相続する際の相続税は、基礎控除額の範囲内だったので、相続税を納めることはありませんでしたが、友人から不動産を取得したのなら税金がかかるのではないかと言われました。

 

 相続で不動産を取得した際は、相続税の申告の他に所得税の確定申告が必要なのでしょうか。

 相続した土地は、遠方であり手入れも大変なので、今後売却を考えています。

 相続した土地を売却した際は、確定申告が必要になるのでしょうか。

A.不動産を相続したとしても、確定申告は原則必要ありませんが、不動産の分割方法や不動産の性質よっては確定申告が必要な場合があります。

 また、相続した不動産を売却した場合には、譲渡所得が発生するので確定申告が必要となります。

 

相続した財産に関する確定申告は不要

 

 相続財産である不動産や預貯金を取得したからといって確定申告をする必要は、原則ありません。

 確定申告とは、1年間(1月1日から12月31日まで)の所得や支出をもとに納める税額を自分で計算し、税務署に申告する手続きです。

 

 自営業を営まれている方や副業をされている方は馴染みのある手続ですが、会社勤めの方にはあまり馴染みのない手続かもしれません。

 相続した遺産は、相続人の所得にはあたりませんので、所得税は課税されません。

 そのため、所得税に関する手続である確定申告は原則として必要ないのです。

 

相続財産について確定申告が必要な場合

 

 相続財産について確定申告をする必要は、原則ありませんが、2つのケースに注意する必要があります。

 

不動産を分割する際にその不動産を売却し、売却した金額を分割する換価分割をおこなった場合

 

 換価分割は、遺産分割の方法の1つとして大変有用な分割方法ですが、通常の遺産分割と異なり、「相続人全員で土地を売却して譲渡所得を得た」とされ、売却代金に対して譲渡所得税が発生します。

 売却代金が所得として扱われる以上、確定申告が必要となります。

 

収益不動産の相続した場合

 

 不動産の相続自体は、所得に当たりませんので確定申告は不要ですが、相続後の収益は、相続ではなく相続人の所得になります。

 そのため、家賃収入については、確定申告が必要となります。

 

相続した不動産を売却した場合は確定申告が必要

 

 相続した不動産を売却した場合は、売却代金から取得費等の経費等を控除した譲渡所得が発生するため確定申告が必要となります。

 なお、譲渡所得税については、分離課税とされており、事業所得や給与所得とは別に計算するので、事業所得の赤字を譲渡所得の利益で相殺する損益通算をすることができないことに注意が必要です。

 

譲渡所得税の計算方法

 

 譲渡所得の金額は、土地や建物の売却金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。

 

譲渡所得
=土地や建物の売却金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除

 

 取得費とは、相続した不動産の購入代金や購入手数料などの取得に要した金額に、その後の改良費、設備費、相続人が支払った登記費用等を加えた合計額をいいます。

 建物の取得費については、減価償却費相当額を差し引いて計算します。

 

 もっとも、相続で不動産を取得した際、その不動産の購入価格が分からなかったり、当時の価格で数十円だったりする場合、譲渡価額の5%を取得費として計算することになるため、譲渡所得が高額になります。

 そのため、不動産購入時の売買契約書や領収書を大切に保管しておくことで、「取得費」として控除できる金額を明らかにできるようにしておくことが重要です。

 

 譲渡費用とは、不動産を売却するために支出した費用をいい、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、借家人等に支払った立退料、建物の解体費用などです。

 

 「特別控除」としては、マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例や被相続人の居住用財産(空き家)を売った場合の特別控除の特例などがあります。

 

 不動産を売却した際の譲渡所得は、次のとおり長期譲渡所得短期譲渡所得の2つに区分し、不動産を被相続人等が取得した日から譲渡した年の1月1日までの所有期間によって計算を行います。

 

 

長期譲渡所得(所有期間5年以上)
長期譲渡所得金額×15%(住民税5%)+復興特別所得税

 

 

短期譲渡所得(所有期間5年以下)
短期譲渡所得金額×30%(住民税9%)+復興特別所得税

 

 

 なお、平成25年から令和19年までは、復興特別所得税を所得税と併せて申告・納付することになります。

 したがって、長期譲渡所得で20.315%短期譲渡所得で39.63%の税金(所得税、住民税、復興特別所得税の合計)が発生します。

 

まとめ 

 

 不動産を相続しても、確定申告は原則必要ありませんが、不動産の分割方法や不動産の性質よっては確定申告が必要な場合があります。

 また、相続した不動産を売却した場合には、譲渡所得が発生するので確定申告が必要となります。

 

 不動産を換価して分割する場合遺産分割で取得する財産が収益不動産である場合は、確定申告が必要となりますので注意してください。

 さらに、相続した不動産を安易に売却すると高額な譲渡所得税を支払うことになる場合があることにも注意が必要です。

 遺産分割の方法や内容について少しでも不安がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。

 

 当事務所は、弁護士歴28年以上の弁護士が在籍しており、多くの相続に関するご相談を受けてきました。机上の法律知識だけでは得られない、多数の相談や解決実績に裏付けられた実践的なノウハウを蓄積しております。こういったノウハウに基づき、各弁護士が遺言書の作成や遺産分割協議など相続全般について、皆様に最適なサポートを提供いたします。

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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