遺留分侵害請求の手続きについて

Q.亡くなった母親が遺言書を残しており、姉に全ての財産を相続させると記載されていた場合、私は母親の財産を取得できないのでしょうか?

先日、母親が亡くなりました。相続人は私と姉の2名です。母親は遺言書を残しており、姉に全ての財産を相続させると記載されていました。姉は、母親が亡くなるまで毎日病院に通って生活のサポートをしていたようです。私は、遠方に住んでいたためなかなか病院を訪れて生活のサポートをすることができませんでした。確かに姉は、母親が亡くなるまでしっかりサポートしていたので相続分が多くなることは理解していますが、私の相続分が全くないとなると母親から娘であったことを否定された気持ちになります。本当に私は母親の財産を取得することはできないのでしょうか。

A.兄弟姉妹の一方に財産を全て相続させる遺言書が有効である以上、兄弟姉妹の他方は遺産を相続することができません。しかし、遺産を全て相続した兄弟姉妹に対して遺留分侵害額請求をすることができます。遺留分侵害額請求とは、一定の相続人が最低限度取得する遺産の割合である遺留分の相当額を金銭で請求する制度です。

 

1.遺留分とは

遺留分とは、被相続人の遺産のうち、法律上のその取得が一定の法定相続人に留保された部分をいいます。本来自分の財産は、自分の意思で自由に贈与したり、遺言書にもとづいて遺贈したりして処分することができます。しかし、相続の場面において法律は、相続人保護の観点から自由な財産の処分に制限を加えて、一定の法定相続人に最低限取得する遺産の割合を遺留分として保証しているのです。

ここでいう一定の法定相続人とは、被相続人の兄弟姉妹を除く法定相続人をいい、被相続人の配偶者、父母、子どもなどに認められています。

遺留分の割合は、父母などの直系尊属のみが相続人の場合は父母等の法定相続分の3分の1、それ以外の場合は法定相続分の2分の1となります。

被相続人が亡くなった際に、遺贈や贈与によって一定の法定相続人に最低限度保障されている遺留分に満たない財産しか取得できなかった場合、本来法律上保障されているはずの遺留分が侵害されていることになります。この場合、遺留分を侵害されている法定相続人は、受遺者(遺贈により財産を取得する人)や受贈者(贈与により財産を取得する人)に対して、遺留分侵害額請求権を行使することにより侵害してる遺留分を金銭で支払うように求めることができます。

遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者である法定相続人が、相続開始や遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年、または相続開始から10年以内に遺留分侵害額請求権を行使しなければ時効により消滅します。

 

また、遺留分侵害額の算定については、相続人については10年、その他の者については1年以内の贈与も考慮されます。もっとも、全ての贈与が遺留分侵害額の算定時に考慮されるのではなく、「婚姻もしくは養子縁組のため、または生計の資本として受けた贈与」に限定されています。

 

 

2.遺留分侵害請求の手続き方法とは?

自己の遺留分を侵害するような遺言書や贈与を発見した場合、どのような手順で遺留分侵害額を請求していくのでしょうか。

 

(1) 受遺者や受贈者に対して交渉

まずは、遺留分を侵害している受遺者や受贈者に対して、話合いを行い、遺留分侵害額について支払いをしてもらえないか交渉します。

この際、確実に遺留分権利者である法定相続人が、相続開始や遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年に遺留分侵害額請求権を行使したことを証拠として残すために確定日付内容証明郵便で遺留分侵害額請求を行うことが一般的です。

交渉により合意することができた場合は、相手方と合意書を作成します。

 

(2) 遺留分侵害額請求調停の申立て

交渉でも解決の見込みがない時は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に遺留分侵害額請求調停を申立てることが考えられます。遺留分侵害額調停は、第三者である裁判所に任命された調停委員が仲介して話合いを行う手続きです。

調停の中で合意ができた場合は、調停調書を作成します。

 

(3) 遺留分侵害額請求訴訟

調停を申立てた場合やそもそも調停での解決が見込めない場合は、被相続人の最後の住所地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所に遺留分侵害額請求訴訟を提起することが考えられます。

訴訟を提起した場合は、判決もしくは和解により解決することとなります。

 

 

3.遺留分侵害請求を弁護士に依頼するメリット

遺留分侵害額請求を弁護士に依頼するメリットは、2つあります。

 

(1) 遺留分侵害額の算定を任せることができること

遺留分侵害額を算定するには、しっかりとした財産調査が必要となります。被相続人の遺産の調査から贈与額の調査、債務額の調査と調査事項が多岐にわたる上、調査した内容をもとに正確に遺留分侵害額を計算する必要があります。弁護士に依頼することで、調査から計算までを弁護士に任せることができます。

 

(2) 交渉から調停・訴訟まで任せることができること

交渉は、しっかりとした知識にもとづいて行わないと損をする場合があります。また、調停や訴訟については、申立てや訴訟提起の準備や手続きの進め方に慣れていないばかりか、交渉の時以上に専門的知識を要求される場面が多々あります。そこで、弁護士に依頼することで、交渉から調停、訴訟に至るまで円滑に手続きを進めることができます。

遺留分侵害額請求は、専門的な知識が求められる場面が非常に多いため、弁護士に依頼することをおすすめします。

 

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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