家賃収入がある収益不動産を相続した場合の確定申告の流れについて

Q:家賃収入がある収益不動産を相続した場合の確定申告の流れについて

先日私の父が亡くなりました。私の父の相続人は、私の母と、私と、私の弟の3人です。私の父の遺産は、預貯金1000万円、自宅の不動産、賃貸に出しているマンション1棟があり、賃貸に出しているマンションから、毎月120万円の家賃収入がある状況です。父が遺言書を作成していなかったため、現在、相続人3名で遺産分割協議を行っています。

今回、父が亡くなったことで、確定申告を行う必要があるのかを教えてほしいです。もし、確定申告を行う必要がある場合に、注意しなければならないことがあれば、教えてください。

 

A:基礎控除額(3000万円+600万円×相続人の数)を超える遺産を相続すると、相続税の申告と納税が必要ですが、相続をしたことだけで確定申告をする必要は原則としてありません。

確定申告は、11日から1231日までの1年間の所得と、その所得に対する所得税を計算し、翌年の216日から315日までの間に、税務署に申告・納税する手続きになります。

しかし、遺産の中に家賃収入がある収益不動産が含まれている場合には、確定申告や準確定申告を行う必要があります。

 

今回は、家賃収入がある収益不動産が遺産に含まれている場合に必要となる準確定申告や確定申告の手続きの流れについて、解説します。

 

 

1.準確定申告について

 (1) 準確定申告は、11日から1231日までの1年間の途中で死亡した場合

相続人(包括受遺者を含みます。)が、11日から被相続人の死亡した日までの所得の金額および税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税を行う手続きをいいます。なお、相続税の申告(10か月以内)よりもかなり早い時期に申告期限が到来しますので気を付けて下さい。

 

 (2) 準確定申告の期限

準確定申告は、相続人が、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税を行う必要があります。例えば、被相続人が、令和7年4月1日に亡くなった場合、準確定申告の申告期限はその年の8月1日になります。

しかし、被相続人が、1月1日から確定申告期限(原則として3月15日)までの間に確定申告書を提出しないで亡くなった場合、前年分と本年分を相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内に行う必要があります。

例えば、被相続人が、令和7年215日に亡くなった場合、相続人は令和6年分の所得税と令和7年11日から215日までの2カ年分の所得税の申告を令和7年615日までに行う必要があります。

 

 (3) 準確定申告の方法

相続人が複数いる場合の準確定申告は、各相続人が連署により準確定申告書を提出することになります。各相続人が、別々に申告をすることも認められていますが、その場合、相続人同士で申告内容をお互いに通知する必要があります。

準確定申告は、確定申告書とともに、各相続人の氏名、住所、被相続人との続柄などを記入した準確定申告書の付表を添付し、被相続人の死亡当時の納税地の税務署長に対して行います。

 

2.確定申告について

 (1) 相続開始後に、遺産の中の収益不動産から家賃を取得した場合

相続人自身の所得として、申告すべき所得が発生した翌年の216日から315日の間に確定申告を行う必要があります。

 

 (2) 遺産分割協議が未了の場合

遺産分割協議が未了の場合、遺産は相続人全員の共有になります。相続開始後から遺産分割協議が成立まで間に、遺産の中の収益不動産から賃料が生じた場合、法定相続分に従って、各相続人に帰属することになります。その結果、収益不動産から生じた賃料を取得した相続人は、確定申告を行う必要があります。

問題は、確定申告書を提出した後に遺産分割協議が成立し、特定の相続人が賃貸不動産を相続することになった場合、過去に納付した所得税はどのようになるのでしょう。遺産分割協議の効力の発生は相続の開始時点に遡るという原則に従うと、収益不動産を取得しなかった相続人は納付する必要のない所得税を負担したので還付してもらえるようにも思えます。

家賃等の賃料債権は「遺産とは別個の財産」であり、「分割単独債権として確定的に取得する」とされ、「後の遺産分割の影響を受けない」とされています(平成1798日最高裁判決)。すなわち、所得税申告後の遺産分割において法定相続分と異なる分割割合で賃貸不動産を分割することになっても、過去の所得税申告を修正する必要はないということになります。

 

 (3) 遺産分割協議により収益不動産を取得した場合

遺産分割協議により、収益不動産を取得した相続人は、収益不動産から生じる賃料を取得することができます。そして、相続人が、収益不動産から生じた賃料を取得した場合には、確定申告を行う必要があります。

 

 

3.まとめ

遺産の中に家賃収入がある収益不動産が含まれている場合には、確定申告や準確定申告を行う必要があります。

準確定申告は、相続人が、被相続人のために、11日から死亡した日までの所得の金額および税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税を行う必要があります。

また、相続人が、遺産の中の収益不動産から生じた家賃を取得した場合には、相続人自身のために確定申告を行う必要があります。

そして、被相続人が遺言書を作成していない場合、収益不動産は相続人全員の共有になりますので、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。遺産分割協議の中で、収益不動産の取得をめぐって相続人間で争いになる可能性があります。その際、弁護士に相談することで、遺産分割協議において、相談者の希望する遺産分割を実現することにつながることが考えられます。

 

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この記事の監修者

監修者:弁護士・税理士 岡本成史

【専門分野】

相続、不動産、企業法務

 

【経歴】

平成6年に、京都大学法学部在学中に司法試験合格。平成9年に弁護士登録後、大阪の法律事務所勤務を経て、平成18年10月に司法修習の配属地でもあった福岡で岡本綜合法律事務所を設立。

 

平成27年に相続診断士を取得し、相続の生前対策に積極的に取り組む。また、平成29年には宅地建物取引士(宅建)、平成30年には家族信託専門士、税理士の資格を取得・登録。不動産や資産税・相続税にも強い福岡の弁護士として活動している。

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